第34話
膠着していた和の国の内乱。
そこに新しい風は吹いた。
行方不明となり、死亡したと思われていた御大護天皇の一人娘である罅隙が第3勢力として立ち上がったのだ。
彼女は中立。御大護天皇陣営と手宮愛鷹陣営に直ちに内戦を、戦闘を辞めるように訴えている。
突如現れた第三勢力。そんな彼女の味方する大名は意外にも多かった。
罅隙と懇意にしていた大名はもちろん。内戦を疎ましく思っている大名や、隣に自分よりも強い力を持っている大名がいて、いつ自分の領地に侵攻されるかわからずビクビクしていた大名なども彼女のもとに下った。
そして、何よりも大きかったのは和の国最大の商人、浅池家が罅隙の味方になったことだ。
浅池家は罅隙への支援を表明し、すでに罅隙のもとに集った大名たちに様々な物資を格安で売り渡している。更に利息0という破格の条件での金銭の貸出も行っている。
その金銭の貸出が何よりもありがたかった大名たちがいた。
義賊ノーネーム。
仮面をかぶっており、顔も名前もわからない凄腕の盗人で、盗んだお金を市民たちにばら撒く義賊。
その義賊に財産を奪われ破産寸前にまで追い込まれた大名たち。
彼らにとって浅池家の利息0という破格の金銭の貸出は渡りに船だった。義賊によって破産寸前にまで追い込まれていた殆どの大名たちが金銭の貸出を求めて罅隙の元に下った。
その大名の数はかなりのもので、罅隙陣営の大名の半分ほどを占めるほどだ。
陣営の大名の半分がまぁなんというか、マッチポンプによるものだが、罅隙の陣営は当人である罅隙が思っていたよりも遥かに膨れ上がっていた。
だがしかし、だからといって両陣営も大人しく罅隙の言うことを従い、内戦を辞めるわけじゃない。
「さぁて。どうなることか。お手並み拝見と行こうかな」
僕は一人空高く、天空で地上を見下ろし呟く。
化け物である吸血鬼の優れた視力は空からでも地上の様子がよく見える。
僕の視界。
僕の瞳に映るのは早速行動を起こした両陣営の戦力。
彼らの戦力は罅隙のもとに下った大名を叩き潰すため、行軍を行っている。
罅隙が第三勢力として立ち上がったからと言ってすぐに三竦みが出来るわけじゃない。
出来るはずがない。
彼らは一時的に争うのを辞め、罅隙の戦力を叩き潰すために行動を開始している。
親である御大護天皇も、だ。御大護天皇としてもこのまま何もせずに内戦を終結させ、反逆者である手宮家を野放しにすることは出来ないのだ。
反逆者にはそれ相応の罰を与えなくてはいけないのだ。天皇家として。天皇家が舐められるわけにはいかないのだ。
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