開眼少女は異世界でスローライフがしたい
結論から言うと、心美が受けたユミエラから依頼は無事達成された。
スカーが集めた分に加え、討伐によって本体からむしり取ったとれたてほやほやの鱗や牙も合わせて、求められていた数を遥かに超えた数を手に入れることができた。
ユミエラにはとれたての一番質の良いものを渡して、喜んでもらった。
依頼者の笑顔を見ることができて、心美もとても嬉しそうにしていた。
しかし、ユミエラの依頼を達成したことをきっかけに、流れていた心美の噂はさらに信じられるものになってしまった。
願いを叶える神出鬼没な少女。
その少女は森に住んでいる噂だったが、心美自身が一部行動で本当にしてしまった節はある。
そのため徐々に心美の元を訪れようとする人が増え、森で迷ってしまう人々も増加しているため、心美は手間が増えたことをほんのちょっと悩ましく思っている。
さらには自宅に訪れる者が増えただけでなく、冒険者ギルドに寄せられる心美を指名した依頼なども多くなってきた。
今回の一件でフロストドラゴンを倒したことが知れ渡り、心美が腕の立つ冒険者であるというのが広まってしまったからだ。
それ以来心美達は大忙しだ。
(今日も迷子の人いたのー?)
「ええ、先程町まで送り返してきたところです」
(あれ? お願い事は聞かなかったの?)
「内容は聞きましたよ。受けるかどうかはまだ保留ですし、他の方の依頼の進み具合にもよりますね」
ようやく一息つけるといったように、やや疲れ気味の顔で紅茶を啜る心美の膝に白い毛玉が飛び乗った。
心美の話を聞いても驚きはしないほど、この光景が当たり前のものになってきているということだ。
「とりあえず迷う人が多いと捜索の手間が面倒なので、何とかして道を整備しなければいけませんね」
(アオちゃんに薔薇を咲かせて道しるべにするのはどうかな?)
「そうですね。それなら迷う人も減るでしょうか?」
(うんうん、そうすればもっとたくさん依頼者がくるね!)
「まったく……私は便利屋じゃないんですよ」
人と関わることなく過ごすために森の奥に住居を構えたはずが、こんなにも人と関わることになっている。
舞い込んでくる仕事の山にてんてこ舞いになってしまうほど、充実した日々。
そんな日常だが、それも悪くないと少女は笑う。
「さて、そうと決まれば休憩は終わりです。手分けして今日の分のノルマを終わらせましょう。ユキ、スカー、アオバ。よろしくお願いしますね」
(頑張ろー)
(え、面倒だなー)
「まっかせてください!」
異世界に転生した開眼少女はスローライフがしたかった。
しかし、その道のりは思いのほか険しそうだ。
だが、少女は諦めない。
人里離れたこの森の奥で、仲間達と自由気ままな暮らしする。
ゆったりとしたスローライフを必ず手に入れてみせる。
そんな未来を夢見て――――なんでも見通す開眼少女は、今日もその瞳にたくさんの希望を映し出していたのだった。
開眼少女は異世界でスローライフがしたい~転生したら瞳が増えて色々なものが見えるようになりました。心も見通せるようになったのでモフモフなペット達の心を読んで人里離れた森の奥で自由気ままに暮らします!~ 桜ノ宮天音 @skrnmyamn11
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