天眼解放
「懐かしいって程じゃないですが、思い出の場所ですね」
「はい、私達が初めて出会った場所です。あのときのルミナスさんはルチカちゃんを守ろうとしていてとてもかっこよかったですよ」
「それはっ! ココミさんが紛らわしい格好をしていたからじゃないですか! ですが、なぜこちらに……?」
心美はルミナスと初めて出会った場所、森の入り口付近までやってきていた。
それほど長い月日が経過している訳ではないが、ここは二人の出会いの場所。
当時の事を思い出して会話を弾ませる。
出会いはお互い最悪だった。
心美からすれば、迷子の子供を引き渡したのに敵視される。
ルミナスから見れば、血濡れでいかにも怪しげな格好の少女が目の前に現れた。
今のような友好的な雰囲気は欠片も存在しなかった。
それが今や頼り頼られ、友と呼べるほどの存在にまでなった。
それを含めて感慨深いと感じていたルミナスは、心美がここを訪れたいと言った理由を尋ねた。
「ルミナスさんはここで薬草採取をしていました。ということはこの近辺に探している何かが分布しているのではないですか?」
「ココミさんの方でも調べてくれてるんでしたね。その通りです。簡単に見つかるということは決してないですがあるにはあるはずです。ですが広範囲をくまなく調べるのは中々酷ですよ?」
「どこかにある……かもしれない。それだけで今は十分です。それに……こういうのは得意分野のはずです」
心を読む瞳では思うような成果は得られなかった。
記憶までさかのぼるならまだしも、表層の考えを読むだけでほしい情報が集まるという都合のいいことはなかった。
だが、現在開眼している瞳はもう一つ。
千里眼ならば、そう考えた心美は過去のルミナスの行動から推察をして行動に移した。
森を出る以前もこのような瞳の使い方で食料調達をしていた。
探し物の容貌、そしてそれが存在する可能性。
それさえ分かっていれば、心美にとっては十分だった。
「ではこちらを開く前に……ルミナスさん。こちらで見つけることができる可能性のあるものをすべて思い浮かべてもらえますか? 形などがより鮮明だと助かります」
「あ、はい。えっと、これとこれと……あとあれと、これもっ……!」
「ん?」
心美は額の心を読む瞳で、ルミナスのイメージを読む。
心美自身もキリエから借りていた本からある程度の情報と、探し物の絵なども目にしていたが、やはり実物を知る者のイメージの方が刷り込みには適している。
こうして思い浮かべられていくものを、自分の持つ情報と照らし合わせて、心美はあることに気付いた。
「あの……もしかしたらですけど、ここって全部見つかるかもしれないんですか?」
「はい、できるかどうかは別としてですが……」
ルミナスの心が見せる物は、心美が受け取って調べたすべての物が羅列していた。
念のため、心美の調べ間違いや記憶違いの可能性も想定して確認を取るが、どうやら間違いはないらしい。
「……それは嬉しい想定外です。どれかは絶対に見つけて持ち帰りましょう……!」
嬉しい誤算。
変に意気込まずどれかを見つけられれば御の字と考えていた。
だが、分布されているものが多ければ多いほど、どれかが目に留まる可能性も高まる。
準備は万端。
見通す右手の眼が、満を持して開かれた。
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