93、我が道を行く我儘オーラ



「出来心でやった。今は反省している」


 魔王とレイラに詰め寄られ、イレイザは小物感満載の犯罪者のような言葉を言い、不貞腐れていた。


「押しに弱いとは言っても、ニア様が簡単にそんな事するわけがないんです!」


 レイラがテーブルを叩いて声をあげた。

 押しに弱いとは失敬な。

 

「イレイザ、嘘をついてまで俺の旦那にちょっかいを出そうとした罪は重いぞ」


 魔王は腕組みをしながら、椅子に座っている。

 いつ旦那になったのだろうか?


「魔王様、嘘をついたのは謝りますけど、私はダーリンのことを本気で好きですからね!」


 プリングの宿屋。

 俺の部屋。

 女子3人に囲まれ、椅子にちょこんと座っている俺。

 宿は満室と言っていたが、俺がいつも使っていた部屋だけは、いつ帰って来てもいいように空けてくれていたようだ。

 一泊20万円なので、3ヶ月分で約1,800万円の売り上げの損失である。

 ‥‥‥とてもありがたいのだが、宿屋にとっては、かなりもったいなかったような気もする。


「2人共、イレイザにも悪気があった訳じゃないし‥‥‥ここは穏便に」

 

 テーブルを囲んで、4人で今後について話し合ってる最中である。

 まずレイラと魔王に、イレイザの事を話して理解を得ようと思ったのだが、どうも俺とイレイザが関係を持ったという事実に2人は疑問を抱いた様子。

 2人が問い詰めると、イレイザは実はあの日何もなかった事を、あっさりと白状したのだった。

 

 ──俺はイレイザとやってなかった!


「ダーリン、庇ってくれてありがと。嘘をついててごめんね‥‥‥」

 

 尻尾を垂らすイレイザ。


「‥‥‥まあ、いいんだけど。なんで嘘なんてついたの?」


「だってそうでもしないと、自信満々オーラのダーリンを堕とすなんて、私じゃ出来ないんだもん」

 

「‥‥‥色欲のくせに?」


「ダーリン、自信を持ってる男は我が道を行くタイプだから、簡単に誘惑できないの。でもね、その完全無欠なダーリンのオーラに私は一目惚れよ」


 ‥‥‥なんか凄い我儘人間って、言われてる気がするんだが。


「お前も簡単にイレイザを信じすぎだ。寝てる時にそんな事出来るなら、あの時俺にもやってるだろ」


 魔王の鋭いツッコミ。

 あの時とは『魔王の元気』の実験後、パンツも履かずに元気いっぱい状態で、魔王に抱きつかれて寝てた時の事。


「そもそもなんですけど‥‥‥ニア様、そういった事した事あるんですか?」


 レイラの心を抉るツッコミ。


「‥‥‥どう言う事だレイラ? 少なくともニアはレイラとはやってるんじゃないのか?!」


「‥‥‥魔王さん、ニア様は私とも抱き合うだけで‥‥‥その、まだしてくれてないんです‥‥‥」


「そうなのか?」


「え? もしかしてダーリンってまだ『さくらんぼ』だったの?!」


 3人の視線が此方を向いている。


「‥‥‥それ、今関係ある?」


 なんで俺が責められてるみたいになってんの?


「ダーリン、オーラが物凄くぐちゃぐちゃになってる‥‥‥図星なのね!」


「‥‥‥うるさいな」


 勝手に見ないでください。


「お前、嫁候補がこんなにいるのに、それは不味いだろ‥‥‥」


 別に不味くはないでしょ。


「魔王様、男性でも初めては緊張して、踏ん切りがつかない人が多いんですよ」


「そうなのか?」


「ダーリン、私が手取り足取り教えてあげるから安心して」


「待てイレイザ。そうなると、お前がニアの初めてになってしまうだろ」


「だって魔王様と勇者は経験あるんですか?」


「俺はない。ただ初めては、順番的にレイラだろ。レイラは経験はあるのか?」


「‥‥‥ないです」


 赤裸々な方々。


「レイラ、イレイザにちょっかいを出される前にやってしまえ」


「‥‥‥そんな‥‥‥私、ちゃんと出来るか、自信ないです」


 ‥‥‥。


「魔王様、2人共初めてだと失敗したりして、嫌な思い出になったりするんですよ。もしダーリンがその行為自体嫌いになったりしたら、魔王様まで順番が回って来ない事だってあり得るんですからね」


「そうなのか?」


「そうなんですか?!」


 ‥‥‥。


「最近、その行為が嫌いな男性が増えてるんですよ。ダーリンがそうならないためにも、ここは私が!」


「いや、それは駄目だ。ここはやはりレイラが───」


 ‥‥‥。

 


「‥‥‥あの、皆さん仲良くなったようなので、そろそろ次の議題に移って良いですか?」


 そっと挙手して話を変えようとする俺。


「ダーリン、まだ解決してないわ」


「ニア様、今大事な話し中です」


「お前は黙ってろ」


 ‥‥‥。


「‥‥‥はい」



 ──我が道を行く自信満々我儘オーラ。今の俺からもちゃんと出ているのだろうか‥‥‥。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る