61、誰か来た
魔法王国アルフォートでの修行を終え、俺たちはプリングの街で『王様スライム』を討伐する日々を送っていた。
アルフォートからプリングの街への移動は、転移魔法で一瞬だった。
もちろんレイラも一緒。
溜めた魔力の中に入った物体は全て一緒に転移出来るようで、俺のMP量なら二人が入れる大きさに魔力を溜めるくらい余裕です。
転移魔法については、他にも色々と実験済み。
行った場所ならどこにでも大体行けるが、あまり印象に残ってない場所には行けない。
人の近くへの転移でも、あまり接してない人の場所へは行けなかった。
結局、俺がちゃんと覚えてるかどうかが大事なようなのだが、はっきり言って基準が曖昧。
バルカンさんの近くには転移出来たが、ファンシーな雑賀屋さんの可愛い店員さんの近くには転移出来なかった。
可愛い店員さんより、ヒゲのおじさんの方が、印象に残ってるとでも言いたいのか?
失礼な基準でる。
‥‥‥まあ、店員さんとは話した記憶すらあまりないのだけど。
あと、少し気になるのは『早く助けよ』とか、謎のメッセージを残して消えた女神様。
女神様の近くにも転移出来なかった。
かなり接していたので、バッチリ印象に残ってるはず。
あんなのでも一応神だから、何か俺の知らないルールでもあるのかもしれない。
プリングの街、宿屋。
「あんたらにお客さんだよ」
部屋に入って来たアリスさん。
「‥‥‥どうせまたバルカンさんでしょ?」
可愛い店員さんより、俺の頭に記憶されてしまってるヒゲのおじさん。
実際バルカンさんは、ちょこちょこ様子を見に訪ねて来ていた。
許さんぞ、頭に残りやがって。
「いや、それが今回は城の人じゃないんだけど‥‥‥」
前にも言ったが、俺たちがこの街に滞在してる事を知ってる者は少ない。
訪ねてくる人などほぼいない。
‥‥‥まさか、噂の女神様とか?
「可愛い幼女ですか?」
「‥‥‥違うね。あんたが前被ってたような仮面をしてて、かなり変な人」
まさか、鉄仮面が流行り出したのか?
‥‥‥流行るわけないか。
視界は悪いし、呼吸も困難。
無駄に高級な装備品。
あんな物被るのは、おかしな人しか居ないだろ。
「そんな人、追い返しといて下さい」
変な人には関わらない方がいい。
厄介ごとに巻き込まれるのは嫌だ。
「何か怖いから、あんたが直接追い返してよ」
「アリスさんでも怖い人とかいるんですね」
「怒るよ。‥‥‥ちょっと変な人だから気をつけなよ」
「そりゃ鉄仮面付けてるんだから、変な人でしょうね」
「それがね『俺は魔王だ』って言ってるのよ。‥‥‥かなりやばい人でしょ?」
鉄仮面を被り魔王と名乗る人物なんて、一人しか知らないな。
‥‥‥いや、それは流石にないでしょ。
「用件はなんと?」
「ニアと勇者を出せって言ってるね」
‥‥‥。
「レイラ、どう思う? 本物なんて事はないよな?」
「私は本人だと思います」
レイラさん、ハッキリ言わないで。
‥‥‥魔王が何で客で来るんだよ。
「よし、アリスさん!」
「何?」
「追い返しといて下さい!」
「‥‥‥だから嫌だって」
ですよね。
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