第26話 弾幕攻略!
雪花の創っているゲームは、内容的にはルージュさんに勧められてプレイした和風の弾幕シューティングのボス戦だけを遊ぶような感じだった。ボスまでに至る道中はなく、いきなりボス戦で色々な弾幕に立ち向かう、そういうゲーム性だ。
弾幕は俺に挑戦するレベルのため、比較的マイルドではあった。
とはいえ、このゲームは途中開始がない。
「このゲームは八つの弾幕を通してクリアすることを想定しているから、途中開始はできない仕様にしているの」
ということだ。しかも、弾幕自体も通してクリアする想定のため、ミスをすると弾幕の最初からやり直しになるのである。いわゆる戻り復活だ。
よって、八つ目ともなると挑むまでにそれなりに時間がかかる。
尚、ボスキャラらしきグラッフィクはあるのだが、
「これは演出。撃っても倒せないから、弾幕を避けて」
ということで、一つの弾幕は一分間逃げ切ればクリアというシステムだった。『耐久弾幕』というやつだ。そんなシステムのため、最後の弾幕に挑むには、最短でも七分かけて七つの弾幕を避けきる必要があった。
「さすがに厳しいな」
ここまでの弾幕をすべてクリアできたといっても、余裕ではない。パターンは覚えたが、安定してその通りに動かしてクリアできるかは別問題なわけで、ミスもする。
最後の弾幕に初めてたどり着いたときには、その時点で残機は0。一ミスでもすればゲームオーバーの状態だった。
いよいよ、と気を引き締めて画面に向かう。
今度はどんな弾幕か……
「え?」
始まった瞬間。画面の下部が光ったかと思うと、画面の左下から右上に向かって、あの蜂もかくやの勢いの弾幕が高速で吐き出されたのだ。ご丁寧に、デザインも半透明の楔型のあの蜂の弾をモチーフにしている。ここまでも弾数は激しいところはあったが、これは段違いだ。
当然のように、為す術なく被弾してゲームオーバーになっていた。
「最後だから張り切ってみたんだけど、いかがかしら?」
言葉の上でもまったく悪びれた様子もなく、雪花が言う。
「これは流石に無茶じゃないか? いきなり難易度が上がりすぎだ」
少々見苦しいかと思うが、言わずにはいられなかった。
「ちゃんと鐘太でも避けられるように創ってあるわ。まだ時間があるでしょう? 死んで覚えればいい」
『死んで覚える』というのは、シューティングゲームに限らずゲームの攻略における一種の格言だ。死んでも死んでもそこから何かを学んで次に繋げていく、要するに『トライアル・アンド・エラー』を示す言葉と言えよう。
ということは、今、一瞬だけ見た中に、次に繋がるヒントがあるのだろう。
すぐに次を始めても、同じ轍を踏みかねない。弾道を思い返す。
画面を埋め尽くす勢いだったが、真下から真上ではなく、左下から右上に向かっていた。
そういう弾道なら、隙間ができるとすれば、右下か、左上、か? ここまでの弾幕も、そうやって弾の薄くなる場所を見つけて場所を取るようなことが多かった。
よし、やってみよう。
再びゲームを開始し、今度は最短で辿り着く。残機は二あるので三回挑戦できる。
画面の下が光る。
右下に行ってみるが。
「あ、これはダメか」
隙間があるかと思ったが、基本は画面の下から弾がでているため、思ったほどの隙間はなく、あえなくミス。
「なら、こっちか」
始まってすぐに、画面の左上に移動する。今度は正解だったようで、安全地帯になっていた。
だが、それは始まりに過ぎない。
画面上部中央より巨大な魔方陣が降りてくる。その上には、魔女をモチーフにしたボスが陣取っている。
激しい弾幕が止んだ瞬間。
魔方陣から超高速で全方位に氷の結晶をモチーフとした弾が発射された。
これも、数とスピードがこれまでと桁違い。もちろん、被弾。
「本当に、張り切ったんだな」
「そう言ったはずよ」
雪花は無表情に答える。
最後の一機。
左上に陣取り、超高速弾を躱そうとするが、
「もしかして」
弾が発射された瞬間は動かず。ホンの少し自機を下に移動させる。
すると、最初の弾が自機にかするような位置を通り過ぎていく。自機狙いの奇数弾か。
ちょっとずつ下に移動すれば躱せそうだが、時々違うパターンの弾が混じっていて、上手くいかない。そこはちゃんと見て避ける必要がありそうだ。
というところで、二ゲーム目は終了した。
とはいえ、何かしらパターンに気づけば避けられるようにされていることは確証が持てた。
前向きな気持ちで弾幕に挑む。
死に覚えを繰り返す。
そうして、
「ああ、決まった場所を移動すればいいのか」
少し前の弾幕でも同じパターンがあったな。
左上から左下、左下から右下、右下から右上、次はそれを逆に、と行けばいいのか。
弾数は多いが、一定の規則があるため、パターンを見つければ対処できる。
それでも、各所間の移動時は、敵弾を躱しながらの移動となるため、そう簡単ではない。パターンがわかっても、その通りに自機を動かせるかは別問題だ。
それでも、何度かミスを重ね。
「よし、クリア!」
ようやく、一分間耐久弾幕の八つ目をクリアした。
すると、画面が一度暗転し。
FROM YUKIKA
作者の名前が飾り文字で表示される。簡易なエンディングということだろう。
ん? FROM? こういうときなら、BYじゃないのか? と若干引っかかったが。
そこで、
「こっちも読み終わったッス!」
紅理子ちゃんも読み終わったようだった。
「いいタイミングね。では、鐘太の作品の感想から、いきましょうか」
雪花の言葉で、俺は疑問を棚上げする。
というか、いつの間にか雪花が場を仕切っているが、いいだろう。表情はまったく解らないが、紅理子ちゃんの手前、先輩として張り切っているのかもしれない。
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