第24話 弾幕シューティングに関する鐘太なりの考察

 木曜の夜。


「これで、いけた、か?」


 文芸部のない日なので、授業が終わって飛んで帰ってから、日付が変わろうかという今までずっと書いていたのだ。


 弾幕シューティングについて、ルージュさんから沢山のことを教えてもらった。大量の情報をもらったし、プレイ動画の解説だけでなく、ビデオ通話で実際にプレイしながら解説してくれたりもした。


 お陰様で、今では紹介してもらった和風の弾幕シューティングのEasyであればどうにかクリアできるようになっていたし、雪花の創った弾幕も、七つ目までクリアして、明日完成するらしい最後の八つ目を残すのみだった。


 最初はつきあい程度にプレイしていた弾幕シューティングの世界を、深く知ることになった。


 反射神経で勝負するようなゲームだと思っていたが、勉強していく間に知的なゲームだと思うようになった。敵弾を避けるにしても、『避けやすいように誘導する』『避けやすい位置取りをする』という発想が大事になってくる。パターンを覚えて、先読みして準備するのだ。覚えたパターンを蓄積し、応用することで新たな弾幕に対応していく。


 もちろん、パターンがわかってもそのパターン通りに自機を動かせなければ話にならないし、あの蜂ぐらいになると反射神経も要求されてくるのだから、頭でわかっただけではクリアできないのもまた確かだが。


 雪花は弾幕シューティイングではないと言っていた光の巨人が出てくるゲームも、根は一緒だ。


 弾幕シューティングという括りではなく、シューティングゲームという括りにすれば、その根底にあるゲーム性は『パターン化』。撃って避ける、という単純なルールの中で、敵の攻撃を読み解いて有利に進める道を模索するのがシューティングゲームで、敵弾の派手さ激しさを特に重視するのが弾幕シューティング、ということなのだろう。


 そう考えれば、弾幕は一種のパズルと言えるだろう。パターンを読み解き、そこから見出した解法を実践して避けきるのだ。


 あくまで俺個人の論理だが、一応、筋は通っていると思う。俺の小説のためのものなのだから、俺の論理でいいのだ。


 辿り着いた論理を元に物語の骨子を組み立てた。ジャンルは、恐らくミステリ。弾幕を主題にしたミステリ、だ。


 結果的に、雪花の好きなものを、自分が好きなジャンルで描く試みになった。ちょっとあざとい気もするが、弾幕をネタにした時点であざといのだから、気にしない。


 ミステリだが、論理に溺れずキャラクターを優先することも忘れない。


 弾幕というパズルの解き方は、キャラクター次第。キャラクターに寄り添って、時には間違えたり、根拠なく運で答えに辿り着いたりもした。


 完全にノックスの十戒に反しているが、構わない。


 このキャラなら、そう動くだろう。

 物語で、キャラを縛らない。

 結果として生み出される物語。


 今まで書いたどの作品とも異なる手法で、異なる動機づけで書き上げた物語。


 これは、俺にとって特別な物語になるだろう。


「この特別な物語で、雪花を笑顔にするぞ」


 想いをこめて、書き上がった原稿の最後に、『完』の文字を打ちこんだ。

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