第14話 式部春の涙
その後、ラーメンを食べ終わった僕達は会計を終えた後、連の運転で再度大学まで戻り解散していた。
駐車場に止めてある自分の車の所に行き、車に乗ってエンジンをかける。
すると、エンジンをかけたのと同じタイミングでスマホが鳴った。
僕はすぐさまエンジンを止め、スマホを取る。
画面を確認すると連絡は式部さんからだった。
時刻は昼の二時ごろ。
こんな時間に何の用だろうか?
そんな風に疑問に思いつつも、電話に出ないわけにはいかないので、ひとまず電話に出る。
『先輩、前に言ってた夏祭り、私と一緒に行きませんか?』
電話に出て開口一番、式部さんからそんなことを言われた。
「え?」
式部さんの言葉に、僕は思わずそんな素っ頓狂な声をあげる。
え? どういうことだ?
確か式部さんは友達と一緒に夏祭りに行くと言っていたはずだ。
なのに、僕を誘ってくるのはどういうことだろうか? 僕が式部さんと式部さんの友達と一緒に夏祭りに行くということなのだろうか?
一人で誘ってきた理由を考えていても仕方がないので、式部さんに聞いてみる。
「えっと、一緒に夏祭りに行こうっていうのは……つまり、式部さんの友達も含めたみんなで夏祭りに行くってこと?」
僕がそう尋ねると、式部さんは息を呑んだ後、そのまま黙り込んでしまう。
何か聞いてはいけない事でも聞いてしまったのだろうか?
不安になりながら、式部さんが話始めるのを耳にスマホを当てながらゆっくりと待っていると、すすり泣くような声が聞こえた。
そして、そのすすり泣くような声は、次第に嗚咽に変わっていって
『えっと、あ、すいません……また後でかけ直しますね……すいません……』
そんな式部さんの言葉と共に通話は切られた。
式部さんが、泣いていた。
原因はわからない。
だが、確かに泣いていたのだ。
そのことを実感した時には、僕は式部さんの家に向けて車を走らせていた。
なんで泣いているかなんてわからない。
一人にした方がいいのかもしれない。力になんてなれないかもしれない。
だが、それでも、泣いている式部さんを放ってはおけなかった。
放っておけるわけがなかった。
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