第七部「猫の目」第1話 (修正版)
思えば、おかしな家だった
世の中のことなど何も知らない
知らないからこそ、何も疑問になど思わない
☆
家の周りは林だらけ。
山の中と言われても仕方ない。
一番近い街中からは車で一時間程度。しかもその半分以上は山道。明確な上り坂と共に周囲からは建物が減り始め、左右が斜面と林に囲まれた舗装道路から砂利道に入って二十分ほど。
ここより先に民家は無い。
元々どんな人が暮らしていたのかは知らなかったが、所有することになる土地自体は広い。坪数だけなら九十坪。しかしそのほとんどは林だった。小さな家と庭だけの部分で言ったら四十坪もない。
周囲の林の一部は竹林となっていた。
そのためだろうか。家の前の道路との間に申し訳程度に設置されていた柵は竹製。もちろん以前の住人が作った物かどうかも分からない。作りはしっかりしているが古さは否めなかった。何度か柵を新しくしたいとは思ったことがあるが、古い家の見た目と合ってもいるという言い訳でそのまま。
この家で、もうすぐ二度目の冬がやってくる。
この家での、
来週の天気予報にはいよいよ雪マークが点々と付き始めた。そうなると準備するのは
そんな毎日を繰り返している内に、玄関先には結構な量の枝が積み重なっていた。雨や雪に濡れない屋根のある所となると、今のところここしか思い浮かばなかった。リビングに置くと湿度を吸い込んでしまう可能性もある。冬場の
──……来年も色々とリフォームだなあ…………
その日も運動がてら
それでも今日は天気がいい。日当たりのいい縁側は季節を忘れさせてくれる。
──……コーヒー飲んだら
日中とはいえ少しひんやりとする縁側に出ると、すぐにギシギシと音が鳴った。空気の乾燥してくる季節というのも関係するのか、最近の気になる点の一つ。
いつものように縁側に足を下ろして座り込んだ。コーヒーの湯気すらも暖かく感じる。
冬の始まりの陽の温もりが最近の贅沢でもあった。
「ん?」
縁側の下から小さな音がする。
聞き慣れない微かな音。
「んん?」
途端に、
「あらま」
小さな二つの光。
そこにいたのは、小さな黒猫。
「どうした? どっから来たの?」
思わず声を掛けていた。
しかし当然ながら返答の無いまま、その二つの目が
「宿無し? やっとここまで辿り着いたのか…………」
攻撃的な姿勢は見せていない。
「お家に入ってもいいけど…………」
やはり警戒はしているようだ。
──強引には無理か
「ちょっと待っててね」
「無理強いはしないけど…………今夜も寒いからね。あ、そうだ」
今度は台所に移動すると、浅い皿に冷蔵庫から出した豆乳を少し注いで猫の元へ。
──無調整の豆乳あって良かった
豆乳をタオルの近くに置くと、猫に話しかける。
「まだ警戒してるよね。でもよかったら飲んで」
更に縁側に立て掛けるように段ボールを並べる。
──これでいくらか寒さしのげるかな…………
「中に入りたくなったらいつでも呼んでね。ガラスを叩いてくれたらいいから。鍵は開けとくからね…………」
まだ不安がありながらも、
──この部屋が暖かくなったら、もしかしたら床下まで熱がいかないかな…………
しかし一年前のリフォームの時に床下には断熱材が敷き詰められていた。床下からの冷気は遮断するが、同時に部屋の熱も逃げにくくする。
夜には街中と違って氷点下になる可能性もある山の中。
不安は大きかったが、かといって相手は野生の生き物。強制は出来ない。
──……頑張っておくれ…………
部屋の中に
冬の訪れを感じながらホッとする気持ちもありながら、やはり猫が気になった。
──……痩せてたな…………お腹空いてそうだったな…………
──味付きはダメなものが多そうだけど……これなら大丈夫だったはず…………
小さな皿に鳥肉を乗せると、あまり刺激しないように玄関から縁側に回った。
段ボールの横からそっと覗き込む。猫と目が合った。
「良かったら食べて」
豆乳の隣に置いた。まだ豆乳は減っていない。
──あまり構いすぎたら嫌われるかな…………
ガラスをカリカリとノックする猫を想像してみた。
──……一人で生きてきたんだろうなあ…………
そして、外に車の音。
今日は日曜日。
いつものお昼過ぎ。
「猫? あら……」
我慢が出来なかったのか玄関先で
元々お互いに動物は好きだった。せっかくの一軒家だからペットでも、という話は以前から出ていたが、かと言って家の中に閉じ込めておくのにもお互いに抵抗がある。同時にここは山の中。鳥以外は見たことがないが、野生動物にいつ遭遇しないとも限らない。犬にしても猫にしても難しいと考えていた。
犬か猫か、どちらを飼うか決められなかった、というのもある。
「まだ警戒してるからそっとしておいてあげたいの」
そう言う
「そうだね。じゃ、ちょっと見てくる」
そう言って背中を向ける。
「え?」
「驚かさないでね……ちっちゃい子だから……」
「大丈夫だよ」
そして小さく口を開いた。
「ホントだ、可愛い子だねえ」
目を丸くした、そんな子供のような
「でしょ? でもまだ警戒してるから静かに…………」
「そうだね。無理させないように……近付いてきてくれたら嬉しいけど……」
「うん……でも寒さが心配なんだよね…………」
「そうね…………」
そこには、今にも降り出しそうな曇り空が広がる。
雲が低い。
☆
「やっぱり
コーヒーを飲みながら、
「うーん…………」
それでもやはり気持ちが上の空なのは態度ですぐに分かる。
そんな
「気になるんでしょ? あの子……ここの床下だから、少しは熱が伝わるかもよ」
「だといいんだけど……リフォームなんかしなきゃよかった……」
「断熱材入れちゃったからなあ」
「誰もこうなるなんて思わないでしょ。もしも仲良くなれたら飼うの?」
「どうかなあ…………元々野良猫だし、家の中に閉じ込める気はないけどね。好きに出入りしたいでしょ。少し心配だけどさ」
その
「でもまあ、ここなら前の道路も通り道ってわけじゃないしね」
家の前には細い道しかなかったが、さらに登ってもどこかに繋がる道路ではなかった。いずれは細くなって道そのものがなくなるような所。したがって、この家に来る以外でこの道を登ってくる車は無かった。
「心配なのは野生動物だけか」
そう言った
「でも猫は警戒心の強い動物だし、この家でご飯さえ食べられたら自由にのんびり生活出来るかもよ」
「うん、居座ってくれそうなら…………キャットフードを買おう」
「そうだね……そう言えば先週も猫じゃなかった? みっちゃんの」
「ああ……そうだった」
先週の
最初からすぐに終わりそうだと思った
依頼主は
最近中古の一軒家を購入したばかり。するとすぐに、夜になると天井から足音がするという。家主は極度の怖がりでもあった。
そして
夜の八時に
「屋根裏に登れる所って、どこですか?」
それは二階の部屋の押し入れの中。屋根裏を覗くことになるだろうと持参していたマスクをつけ、懐中電灯で中を照らしただけで総てが解明する。
「猫ですよ」
「ねこ⁉︎」
会社の社長の奥さんと言ってもまだ若い。
「はい、子猫が見えたので家族ですね。五匹くらい見えました。きっと寒くなってきたので屋根伝いに入れる隙間を見つけたんでしょうね。この家の冬は初めてですか?」
「え……ええ……」
「もしかしたら毎年来ていたのかもしれませんよ」
「……なんだか……そう聞くと可哀想ですね…………」
奥さんが困惑した表情を浮かべると、すかさず
「一冬……お願いできませんか?」
「え?」
「屋根裏に使っていないお布団とか入れてあげれば、それだけで足音は軽減しますよ。それと餌だけあげれば悪さはしません。むしろネズミは近付かないでしょうね」
「……そうですね…………なんだか追い出すのも…………ねえ」
「餌代は私が出します。今回の報酬はいりません。それでどうですか?」
「いえいえ、さすがにそれは…………」
「屋根裏覗いただけですから」
そう言って
その話に、
「しかもその後、みっちゃんが慌ててキャットフード買ってったんでしょ?」
「うん……私を
「報酬をもらわずに餌代置いてくるなんて、
「猫も生きてくのに必死なんだよ……それにまさか屋根裏覗いただけでお金は取れないし」
「でも家主がいい人で良かったじゃない」
「そうだね。その内家の中で飼いそうだし。それならそれでいいことだよ」
「だね」
「何か食べる?」
──……後で覗いて無くなってたらまたあげよう
「昨日作った鶏肉のトマト煮があるよ」
「もちろん食べます」
その
そして外が薄暗くなり始める頃、
☆
翌日、
朝の冷え込みが強くなってきた。同時に布団から出るのが億劫になる季節でもある。夜までの
そんな時の着信音。
『これから時間ない?』
「ないなー」
『早いでしょ』
「だってウチに転がり込んできた子がいるからさー」
『何よそれ! 浮気してるの⁉︎
「大丈夫。
『なにそれ! ドロドロしすぎ!』
隣で笑いを堪える
「猫だよ猫、野良猫」
『そう、それ、今度は猫なのよ』
「まったく意味が分からないのでサヨナラ」
『待って待って待って駅まで来てるんだってば!』
「強引ねえ……合意の元じゃないと嫌われるよ」
真っ直ぐ台所へ向かった。
『急に大人の話にしてないで早く来てよ!』
「そんなに私に会いたいの? 強引に迫っちゃうよ」
『合意じゃないのでしません!』
「ま、迎えに行ってやるから駅前でコーヒーでも飲んでな」
そして相変わらず強引に
そこに昨日と同じ大きな目を見付けると、途端に笑顔が溢れた。
──……良かった……食べてくれた…………まだ警戒はしてるけど…………
新しい小皿をそっと入れ、空になった小皿を取り出す。
「豆乳も温めて持ってくるね」
バスタオルに包まる黒猫に笑顔を向けた
コーヒーの香りが広がるリビングを抜け、電子レンジで少しだけ豆乳を温める。
そこにソファーの上の
「で?
すると
「
「困ったものねえ、強引なのは
「んー……外出しにくくなったね」
「仕事の依頼はいいけど、
戻った
「ま、
そしてパソコンを開いた。
「まずは
二人は駅前で
いつもの夜とは違い、大きな窓から見える景色は昼間の風景。
「日帰り出来る依頼限定でよろしく」
カウンターでそう言い切る
「そんなこと言ったって仕方ないでしょ。場所は私が選ぶわけじゃないんだから」
相変わらず
二人の前にコーヒーのマグカップを置いた
「それもそうね」
昼間だというのに自然と定位置のカウンターの中から続けた。
「いきなり訪ねてくるなんて、よっぽど緊急なの?」
すると、
「連続殺人事件」
「まさか…………最近ニュースで騒いでるとこ?」
「うん……〝
「あれか」
「テレビで霊能力者がどうとか言ってたけど、あんただったの?」
横目で冷ややかな視線を向ける
「いや……まあ、私もそうだけど、私だけじゃなくて…………」
「みたいね。
すぐに返した
その
「まあ……その通りなんだけど……実際に一ヶ月で五人も死んでる…………」
「そこの街じゃちょっとしたパニックになってるってニュースではやってたけど、さすがに大袈裟なんじゃないの?」
しかし
「まあパニックってのはさすがにあれだけど、地元の新聞とかテレビでは毎日特集してるね。一応警察としても注意喚起はしてるけど…………マスコミが
「
「実はね。何気にマスコミ各社の霊能力者競争になってる」
「そういうことか。関わりたくないなあ」
するとカウンターの中から
「まさか愚痴こぼすために新幹線でわざわざこんな遠くまで来たわけじゃないんでしょ? 私たちに相談するってことはそれなりの理由があるってこと?」
すると
「あそこに呼ばれた他の同業者見てるとさ……みんないかにもな格好して数珠を振ってるだけ…………それでも何も解決しないままに先週ついに五人目の犠牲者が出た…………お札貼って解決するならもう終わってるはず。元々は三年前に吸収合併された限界集落の
☆
地方とは言っても、そこは中核都市として発展してきた街だった。
首都圏からのインフラの中継地点としての役割も担っている。そんな街が北側の山沿いに位置する小さな村を吸収合併することになったのは三年前。
起伏の激しい山間部。村とは言ってもいくつも限界集落を抱えるような所だ。村に吸収合併を断る理由などない。むしろ表向きは歓迎された。村が市になることでお金の流れも変わる。
それでも、その中の限界集落の一部から反対が無かったわけではない。
しかしその言葉に力があるわけでもなく、吸収合併と共に市からは立ち退き要求が始まった。そのエリアは公共事業によって掘り起こされ、新しい新興住宅街を作るための計画地でもあった。もちろん金銭的にもそれなりの待遇ではあったが、そう簡単に故郷を捨てられるわけもなく、住民たちは市に対して一つの要求を出した。
〝
市は快諾した。
しかし
取り壊され、土に埋められる。
元住民たちが、移されたという神社に行っても何もない。そもそも移す話すら神社は聞いていないという。住民たちは抗議したが、立ち退きで引っ越したその集落の元住民は五人だけ。しかも事を騒いでいるのはその内の三人だけ。
行政が動くはずもない。
問題が
公共事業としての新開発地区での工事が滞り始めた。あまりにも事故が多く、関係していたほとんどの業者で死者まで出す始末。二年程度の工事にしては犠牲者が多すぎた。
マスコミは当然のように管理の
そして元住民たちが〝
マスコミとして必要なのは、それが事実かどうかではない。ネタになるかどうかということだけだった。
呪いや怨念といった、人々が興味を持ちそうな言葉でマスコミが事を大きくしていく。
地元新聞社も各ローカルテレビ局も、まるで競争でもするかのように全国から霊能力者と呼ばれる人たちを街に招いた。
同時に他の霊能力者からは良く思われていないようだった。ローカルのテレビ番組で名指しで非難されるほど。
普通に見ればただのやっかみににも見えるが、マスコミにとってはそれすらもネタの一つでしかない。
もはや安っぽいエンターテイメントと化していた。
やがて、最初の殺人事件が起きる。
犠牲者は一二才の男の子。
地元で大きな地主だった家。
夜に自宅敷地内の蔵の中で殺されているのが見つかる。
死亡推定時刻はその日の一二時から一八時頃。
両目を尖った物で刺され、喉を鋭利な刃物で横一文字に四カ所切り裂かれていた。
失血死の可能性もあるが警察からの発表はショック死。
あまりに残酷な殺され方に新たなマスコミの話題となったが、その事件と〝呪い〟を結びつけたのは、あの住民たちだった。
〝まるで猫が喉を切り裂いたようだ〟
と言ってマスコミを焚き付けるが、マスコミが一気に食い付いたのは二人目の犠牲者が出てからだった。
五三才の主婦。
ごく普通の中流階級の家だ。旦那は長年公務員として市役所に勤め、長男と長女はすでに社会人として家を出ている。狭いながらも一軒家に暮らし、自身は地元のお菓子工場で長年パートを続けてきた。パートとは言ってもそれなりに仕事を任せられて人望もある。
早番の勤務が多いために、
リビングで倒れ、両目と喉から大量に出血している妻を見付けた。
マスコミでも猟奇連続殺人事件として盛り上がる。
改めて〝呪い〟の話が出始めると、話題は一気に全国区に広がった。
その時点で街に残っていた霊能力者は
マスコミはこぞって〝
しかし
街の歴史を調べるために、
しかし限界集落に関する歴史はまばらな物ばかり。
東京の大学まで訪ねてまとめた直後、三人目の犠牲者が出る。
地元で一番大きな地方銀行の銀行職員。
三五才。
五年ほど前に結婚したばかりで、まだ幼い娘がいた。銀行に勤めてから一〇年以上。
その日も秀一は仕事を終え、まっすぐ自宅へ向かっていたと思われる。
時刻は夕方。いつも通り自宅まで街中の大きな公園を抜けて帰っている途中、その公園内の公衆トイレの中で殺害された。発見は殺害直後。殺害方法は今回も同じ。
殺された三人には繋がりが何も見付けられなかった。
それだけにマスコミの霊能力者合戦も激しくなる。
集落の
事の起こりは戦国時代。戦で城を追われた殿様と配下の侍たちが逃げ延びた所が現在の集落跡地。当時の集落の人たちとも良好な関係を築いていった。
その集落までの道案内をしてくれたのが〝一匹の黒猫〟だったということで、侍たちは村に
「でもまあ、あくまで伝承ってやつだから、そんなに簡単な話じゃなかったとは思うんだけどね」
「詳細は分からないけど、今のままじゃ〝
そこに
「コーヒーのお代わりは?」
「お願い。あんまりコーヒーって飲まないけど美味しいね、これ」
「でも、事実として古い
「うん、写真も残ってる」
「猫を
「そうだね。実際地元の神社から市役所に抗議の電話はいくつかあったらしいよ。そんなことしちゃダメだって…………そこに元住民の訴えもあってさらに盛り上がってるところに、四人目の犠牲者」
四人目は地方議員の次男。
二五才。
遺体の発見は早朝の繁華街の裏路地。
検死の結果だいぶ泥酔していたことは分かったが、やはり殺害方法は同じ。
地方でも長く務めていた有名な議員の息子だっただけに、警察も今まで以上に力を入れざるを得ない。マスコミの報道も加熱した。
またしても犠牲者同士の繋がりは皆無。
そして先週、五人目が見付かる。
四〇才。
警察官。
発見場所は繁華街近くの公園。死亡推定時刻は発見された深夜一時の直前。
休みの前日の仕事終わり。泥酔状態ではあったが、やはり殺害方法は同じ。
「元住民は早く新しい
そう言って
「他の霊能力者はお
すると、ずっと話を聞いていただけの
「うまく言葉に出来ないけど……何か違うよ…………あれは完全に〝人間の殺し方〟って感じがする…………だとすれば犯人は必ずいる…………ただの〝
「ふーん」
そう言って
「私たちの取り分は?」
「テレビ局には解決したらって言ってあるけど……一応一〇〇は出すって言ってるし…………二割で…………」
「こ…………交通費と宿泊代別で…………三割…………」
「────乗った。その代わり二人で行くからホテルはいい部屋でね」
「え?」
その声は
すぐに反応した
「ちょっと……何日掛かるかも分からないのにお店どうするのよ⁉︎」
「大丈夫だよ。今日は月曜日。週末までには帰ってこれる」
「……まあ…………
ある程度、
「今回は
「猫? ああ……そんな話してたっけ。でも野良猫でしょ?」
それに返すのは
「……これが可愛いのよ」
「野良猫だったら別にそのままでも…………」
そう言った
「やっとあそこまで辿り着いたんだよ…………ご飯くらいは食べさせてあげたいじゃん」
「
「だから
「そういうのじゃないから」
☆
そのまま
いつものように店を他の女の子たちに任せ、
途中キャットフードを買って自宅に戻ると、黒猫はそのまま縁側の下。
大き目の皿に多目にキャットフードを入れ、豆乳も多目に用意した。
「食べ過ぎちゃダメだよ。すぐに帰ってくるからね」
二人は最低限の準備だけをして駅に向かった。
すぐに解決するという
むしろ問題は周りの霊能力者だった。そういう職業にありながら、
その
「面倒なことに巻き込まれなきゃいいけど…………大丈夫?」
小さく寝息を立てる
──……なんとか、なりそうだね…………
その街に到着した時は、すでにだいぶ遅い時間だった。
「かなざくらの古屋敷」
〜 第七部「猫の目」第2話へつづく 〜
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