第116話 タマル村にお花畑を造成せよ!
「じゃあ、この辺りに花で道を作るが、ご覧のとおり、よく分からん地味な花しか咲かない」
『ふむふむ、創造神たる余にも種類がわからない花だ』
『道を作るための花なんですね』
「そういうことだな。つまり、もっと見栄えのする感じで花畑みたいなのを作っていくには、ポイントを稼ぎ、広場にいるトウテツから種や苗を買わねばならん」
『創造神なのに買うのか……。アヒー、なんたる厳しい世の中』
『ポイントを稼ぐ……。ポタルさんやキャロルさんもやっていた事ですね。わたくしもやってみます。やらねばならないでしょう』
ファンが燃えている。
とりあえず、スローライフ的なことや、スローライフに役立つことをするとポイントが稼げるようだ。
俺はヌキチータに、創造神とファンのぶんも仲間としての申請を行い、アイテムボックスをつけてもらうことにした。
『タマルさんの活躍で、そこそこ余裕があるんだなもし。全然かまわないんだなもしー。……あれ? 創造神にアイテムボックスを付与するとか言った?』
「気にしなくていいですぞ」
ヌキチータのツッコミを出る前に躱し、俺は二人に仲間として活動できるシステムを付与した。
そして、広場のトウテツに挨拶していく。
「トウテツ、いつまでいるんだ?」
『今日いっぱいはいるかな~』
「よし、じゃあポイントを稼いで、種や苗をたくさん買いに来るからな」
『楽しみに待ってるよ~』
どうやらトウテツは、星と星を渡りながら、その土地の植物を採集し、これを自分の世界で繁殖させているようなのだ。
そして別の星で販売する。
これもまた、植物的には侵略行為なのだ。
外なる神は侵略しないといけない決まりでもあるんだろうか。
『わたくし、邪魔になりそうな石ころを拾って集めてきます!』
「よし、ファン、このスコップを使うんだ。そして石はアイテムボックスに入れて、いっぱいになったら持ってきてくれ。なにか作る……」
『余は生い茂っている雑草を引き抜こう。どうやらトウテツは雑草も買い取ってくれるそうだ』
「あいつの世界で繁殖させて、別の星で売るんだろうな」
そんなわけで、三方に散る俺たちである。
せっせと花畑ロードを造成していると、興味を持ったらしくポルポルがやって来た。
『ピピー?』
「これはな、タマル村を花でいっぱいにする計画なのだ」
『ピポー!』
「そうだなあ、花の道を作るのには、ポルポルの助けが無くてもいけるからなー」
『ピポピ』
「えっ、手伝う? じゃあ雑草とか抜いてくれ。これもポイントになる」
こうして、せっせと作業を進めるのだ。
『ウグワーッ! 小石を50個集めました! 100ptゲット!』
『ウグワーッ! 雑草を100本売りました! 100ptゲット!』
いいぞいいぞ。
コツコツポイントが稼げる。
ここ最近は、世界的なイベントばかりでポイントがインフレしていた。
だがスローライフとは、そんな大イベントばかりがあるものではない。
こういうのでいいんだよ、こういうので。
『ファイヤーフラワーの種を3つ買ってきました!』
『ホーリーブロッサムの種を3つ買ってきたぞ!』
「よしよし! 植えよう!」
ワイワイと、花の種を植えるのである。
間隔はどうするとか、並びはどうするとか好き勝手話しながら、種まきをしたところにじょうろで水をやる。
すると、地面がキラキラ輝くではないか。
これがじょうろの効果か。
今日すぐに何かあるというわけではあるまい。
『ピピー!』
「なにっ、芽が出た!? 早い!!」
じょうろで水撒きをしたところから、芽吹きが始まっている。
『ウグワーッ! 花を十本植えました! 100ptゲット!』
「おっ、これで新しい花の種が買えるな」
新しい種を植えてじょうろで水撒き。
その間に、ポルポルが雑草をたくさん獲ってきたので、これをまた売りに行き……。
タマル村入り口周辺が、一面の花畑予定地となった。
歩道は、舗装用の花の道で覆ってあるからここを通過すればよかろう。
『おお……久方ぶりに創造的な仕事をした……。余はもう権能とかほぼ無いから、こうやって地道にやっていくしかない。しかしこれはこれで楽しいものだ』
『はい。自分の手を汚して土をいじるなんて初めてで、何もかも新鮮です』
ファンは皇妃だったもんな。
一日中土いじりをしていて、気づけばもう日が暮れそうである。
広場に戻ると、トウテツが帰るところであった。
『また来るからね~。ポイントを貯めて待っててね~』
「ああ。珍しい花とか期待してるぞ」
俺と創造神とファンとポルポルに見送られ、トウテツは空にやって来たUFOに吸い込まれていった。
アダムスキー型じゃん。
そしてUFOは不規則な動きをしながら、夕日の向こうに消えていく。
「外なる神も、ああいう友好的なのと、ヌキチータが言う侵略してくるやつに分かれるんだな。世の中色々だ」
『余からすると、どれもこれも侵略に来ている者ばかりなのだが? 魔人商店の双子や彩色洋品店の兄弟は違うが』
「彼らはヌキチータの侵略を見物に来てるからなあ。根っこの方では同類ではないか」
それを考えたら、外なる神なんかみんな同じか!
俺たちに友好的かそうでないかくらいの違いしかない。
『タマル様も似たようなものでは……? わたくしは別に構いませんけれども』
「言われてみればそうである。これは一本取られた」
わっはっは、と笑い合う俺たちなのだった。
さあ、明日になったら芽吹いた種はどうなっているのか。
楽しみに夜を過ごすとしよう。
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