第105話 ふたたび空へ

「じゃあなタコさん! あんたが元の世界に帰れるよう、必要な素材を取ってくる!」


『任せた……!』


 飛び立つ飛空艇を見送るタコさん。

 一人異世界に流されてしまった彼は、かつての俺を見るかのようだ。


 俺には帰る世界など無かったので、ここでスローライフし、世界を変えていくしかなかった。

 だが、タコさんには帰るべき場所があるのだ!

 きっと元の世界の人々は、タコさんを待っていることだろう。


 旅立つ途中、ヌキチータが何かに気付いたようで、何か叫びながら追いかけてきたが……。

 飛空艇は急には止まらないのだ。


 なので、後からメールが来た。


『教えに来たけど間に合わなかったので、メールをしたんだなもし。天地創造アイコンに新しい機能が追加されたんだなもし。これは山を崩したり盛りつけたりする機能なんだなもし』


「山を崩す機能? あ、確かにアイコンが増えてる。これかあ」


 天地創造アイコンの横に、ショベルカーが山を削っているアイコンが生えている。

 飛空艇の上では使いづらそうだ。


 空の島がまだ残ってないかな……。


『オー! フライングアイランドでーす! まだあったんですねー』


「ほんとだ。というかこれ、空の迷宮があった島とタイプが違うな。人工的じゃない感じがする」


 岩と土のカタマリが宙に浮いている、という感じなのだ。

 そしてその中から、キラキラと輝くものが見える……。


「あれが輝きの欠片かな? 土と岩が固まっていて、掘るのが難しそうだ」


『足場も不安定そうですな! 我やフランクリンでは上手く体を固定できなさそうですぞ』


「そうか。ということは……俺の仕事だな」


 天地創造アイコンを押す。

 すると、俺の姿がクルリンっと変化した。

 作業服である。


 さらにポルポルも変身する。

 そ、その姿はーっ!

 ミニミニショベルカーだ!


 そして俺の手に出現するのは、ハンディタイプのショベルカー運転装置である。


「まさにこのシチュエーションのためにあるような力だな。行けっ、ポルポル!」


『ピピー!』


 ポルポルがぴょーんとジャンプして、浮遊する岩の塊に飛び乗った。


「天地創造開始だ! おらあー!」


『ピピポー!』


 ポルポルのシャベルが岩を突付く。

 そうすると、ゴッソリと岩が削れた。


「すごーい! ちっちゃいスコップだとあんなに掘れないでしょ?」


 シャベルというものを知らないので、ポタルが見ると全部スコップなのだ。

 ポルポルが掘って掘って掘り進み、なんと浮遊する岩塊は半分くらいの大きさになってしまった。


 ついに露出する輝きの欠片!

 ふわーっと浮かび上がろうとするのは浮遊石か。

 これに付着していたのがキラキラ光る曖昧な欠片だ。


「ていっ」


 ピョインッとゲット。

 アイテムボックスにも……輝きの欠片とある。

 よしよし!


「よーし、じゃあ次行ってみよう!」


『ねえタマル、これって壊したままで行くの?』


「あ、そうか。また盛り付けてから行くか。ポルポル、もうひと働き頼むぞ!」


『ピピー!』


 今度はポルポルが、掘るのとは逆の動きをする。

 そうすると、なんと無から土や岩が出現して来るではないか。


「うわー! 半分もなくなってたのに、どんどん増えていくよ!」


「不思議な仕組みだよな。どこから土とか岩が出現してるんだろう」


 ひとかたまりの浮遊する岩塊だったものは、気づくと小島くらいの大きさになっていた。

 さすがに浮遊石一つで浮かせるには重すぎたらしく、ゆっくりと降下していく。


 せっかくなので、ラムザーと二人で物干し竿でつつきつつ、浮遊小島を誘導した。


 タマル村の高さ4m辺りに浮かべておく。

 この辺で安定したな。


 早速、小鳥が飛んできて小島の上でうんこをした。

 きっとあのうんこに植物の種なんかが含まれていて、この小島に根付いていくのであろう。


「これなら私、ちょこちょこ遊びに行けるね。面白いのができたなー」


 ポタルが嬉しそうだ。

 タマル村の新たなアクティビティが生まれてしまったな。

 そのうちハシゴを掛けたりしてみんなで上がれるようにしよう。


『妙なものを持ってきたな。ところで進捗はどうだ』


 タコさんが不安げに聞いてきたので、輝きの欠片を見せた。


「あとひとつ、生命の欠片を手に入れればいい。任せろ」


『頼もしい。うちの奉仕種族に爪の垢を飲ませたい』


「奉仕種族って?」


『人間が変異したカエルや魚みたいなものが我の奉仕種族である』


「あっ、タコさんの世界には人間もいるのか!」


『いる。人間もまた、我を信奉している』


「なんだ、なかなか人望がある神様なんじゃないか」


 ますます、タコさんを元の世界に戻してやらねばなるまい。

 きっとみんな寂しがっているだろう。


「では、デッドランドマウンテンに行ってくる。もうすぐ帰れるぞタコさん!」


『頼むぞ……!!』


 切なる願いを受けて、フライアウェイ。

 懐かしきテーブルマウンテンへと向かうのだ。


「キャロルは里帰りだな。感慨深かったりとかする?」


『この間のことじゃない。そんな気持ち全然ないわよ』


 マンイーターは長生きなのだった!

 時間感覚が俺たちと違うのだな。

 

 飛空艇は空を駆ける。

 タコさんの思いを乗せて……!


 待ってろよ、タコさんの世界の人々。

 お前たちのタコさんはもうすぐ帰ってくるからな!


▶天地創造スキル

 道路敷設

 地形変化:山


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