第95話 赤い湿地を舗装する

「なんかすごく降りづらいなあ、ここ」


 ポタルが嫌な顔をする。

 赤き湿地は肉とか血が腐るそうだからな。

 危ないね。


「じゃあ、危なくないようにしよう」


 そういうことになった。


「天地創造アイコンを連打! そして俺は天地創造ルックに着替えたぞ。ご安全に!」


『ピピー!』


 ポルポルと互いに指差し確認である。

 ポルポルにとっての指は砲塔だ。


 そして、赤い湿地に降り立ちながらピッケルを叩きつけた。

 ポルポルがすかさずコンクリを流し込む。

 飛空艇に戻って一分待つ。


 赤い湿地に一マスだけ、コンクリートの安全地帯ができた。

 こうなればもう簡単だ。


 安全地帯に立って、先の地面をピッケルで掘る。

 コンクリが流し込まれる。

 ピッケルで掘る。コンクリ。


 ピッケル、コンクリ、ピッケル、コンクリ、ピッケル、コンクリ、ピッケル、コンクリ。


 俺は単純作業が苦にならない人間だ。

 生前も、学生時代に大手パン屋でバイトをしていたことがあるが、朝から晩までアンパンにゴマを乗せる仕事を平然とこなしていたものだ。


『タマル様が凄まじい正確さで赤き湿地を塗り替えて行きますなあ。あの方はついに、最強の武器を手にしてしまったのかも知れませんぞ』


『タマルさん、たいがいこのワールドのナチュラルエネミーですが、そろそろヌキチータさんよりもインベーダーらしいことをし始めてますねー』


「いいぞータマルー! いけいけー!」


『そろそろ降りられるんじゃない? ここって美味しいものが生えてるんでしょ? そっちまで道を作ってもらおうよ』


 おっ、キャロルが真っ先に降りてきた。

 食が絡むとくそ度胸を発揮する娘なのだ。


 手には虫取り網を構え、周囲をキョロキョロしている。


『ぬばーっ!』


『きゃーっ!』


 横の湿地から、カエル人間みたいなのが飛び出してきた!

 慌てて虫取り網を振り回すキャロル!

 だが、彼女にはカエル人間をゲットする権能は与えられていないのだ!


 危うし……!

 となるところだったが、コンクリートの地面に乗ったカエル人間、その上でピチピチ跳ね始めた。

 そして『?』という顔をする。


『これはどうやら、赤き湿地で行える特殊な攻撃があるようですな。しかしここはタマル様がたった今侵略した、新鮮な征服地ですぞ』


 ハンドドリルを持ってラムザーがやって来た。

 ピチピチするカエルにドリルをサクッと刺して『ウグワーッ!?』グリグリ回して退治した。

 とてもこの光景は見せられないね!


『タマル様ー! 横にもこの硬い地面を広げたほうがいいですな!』


「おーう! 今戻る」


 湿地を舗装しながら、ターンしていく。

 すっかりこの工程にも慣れたので、スピードアップしているぞ。


『ワーオ! ビッグなスペースがコンクリートジャングルになりましたねー!』


「カッチカチだあー! ここなら馬車も安心して走れるねえ」


「おっ、そういえばそうだ!」


 ポタルの指摘で俺はハッとする。

 馬車が湿地を走れるように舗装しまくればいいんじゃないか。


 さらば、湿地の危険な大自然!

 そしてこんにちは、文明的なコンクリート道路!


 猛烈な勢いで道を作っていくと、いつものシステム音が鳴り響いた。


『ウグワーッ! 1ヘクタールを舗装しました! 1000ptゲット!』

『天地創造の新しい素材が入手可能です』


「おっ! 新しい素材だと!?」


 早速タマル村まで戻り、魔人商店を訪れる。

 そこには、煉瓦の床とアスファルトがあった。


 煉瓦の床は見た目がかっこよくなるが、強度に問題があるらしい。

 後はちょっと作業工程が多くなる。

 アスファルトは弱めだが、作業速度が加速する。


「よし、煉瓦はもちろん買うが、今回使うのはアスファルトだ。見た目はともかく、さっさと湿地を舗装しきらないとな! 自然の保護は俺たちの安全が確保されてから考えるのだ」


「毎度ありがとうございまあす!」

「まあす!」


「タマルさん、ヌキチータさんよりもらしい思考になってきましたねー」

「ねー」


「あと、館長が新しい展示品を欲しがってました」


「あ、そうか! じゃあ怪物もゲットしてこないとな。忙しいなー」


 せっせと地面を掘り返す。

 掘り返して掘り返して掘り返して……。

 ポルポルが一気にアスファルトを流し込んだ。


 速攻で固まる。

 こりゃあ早い!


 あちこちで、襲ってこようとした怪物たちがコンクリの地面に戸惑っている。

 湿地に適応した連中には、コンクリートジャングルは馴染まないのである。


「どれ、片っ端からゲットしていくか!」


 天地創造ルックのまま、俺は虫取り網を構えたのだった。

 響き渡る、連続ピョインッ!の音。


 そして異形博物館にカエル人間や骨トカゲみたいな怪物を寄付して……。

 館長が大喜びする横で、ファンが俺に流し目を送ってくるのを華麗にスルー。


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※ロットリザードの物干し竿

 素材:ロットリザードの背骨


「おお、なんか長そう!」


 早速作ると、とても長い骨製の物干し竿になった。


「ラムザー、こいつを使って怪物たちを押しのけてくれ」


『合点承知ですぞ。こりゃあ使いやすくていいですなあ。高いところにジャンプするにも、高跳びの棒として使えそうですぞ』


「魔人にそんな文化が!!」


『羅刹侯爵が持っている魔人旅団は、槍を使ったりしますからなあ。活用方法も色々編み出してるのですぞ』


「槍が相手かあ。じゃあ、長ものが生まれたのはちょうどよかったな。色々応用したり、発展性がありそうな道具なので練習してくれ!」


『心得ましたぞ! 物干し竿二刀流~!』


 ラムザーが物干し竿二本を四本腕で自在に扱い、怪物たちを摘んではコンクリの上にそっと置く。

 すると怪物は突然コンクリのど真ん中に放置されるので、ピチピチするしかないのだ。


 湿地の怪物たちは、みんな水気が多かったり、湿地で活動する前提の姿。

 カラッカラに乾いて水分ゼロ%のコンクリやアスファルトでは活動できない!


「ははははは! イージーミッションでーす!!」


 駆け寄りざま、怪物たちを捕獲していく。


『オーウ! タマルさんがミーのラングレッジをトークしてまーす!』


 そんなわけで。

 まずは赤き湿地に、舗装された大地が誕生したのだった。



▶DIYレシピ

 ロットリザードの物干し竿


 UGWポイント

 7500pt


 天地創造機能

 アスファルトの地面

 煉瓦の地面


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る