第64話 空の上の島は本当にあったんだ!

「雲間に、フツーに島があるんだが?」


『空の迷宮でしょうな』


「これ全部が? めちゃくちゃ広くない? 普通の島じゃない?」


『言われてみるとそんな気がしてきましたな』


 飛空艇をつけて、みんなで降りる。

 骨次郎がカチャカチャっと操作すると、飛空艇が収納されて馬車になった。

 これで良し。


『カタカタ!』


「よし、みんな乗り込め! ここを廻天将軍領と名付ける! まずはぶらっと探索するぞ」


「はーい」


『行きましょうぞー!』


『レッツゴーでーす!』


『ピピー』


『空のごちそう、ごちそう……』


 一人別方向を向いているな!

 だが、やる気を感じる。

 ヨシ!


『ウグワーッ! 空の島に上陸しました! 2000ptゲット!』


 馬車がパカポコと走るのは、空の島である。

 地面はなんと石畳で、草も生えている。

 小山が存在したりしてるが、草木がないところは赤い壁が覗いている。


「ねえねえ、ここも遺跡に作りが似てない?」


「だな。遺跡自体がここから剥げ落ちて落下した物なのかもしれないな」


 いろいろな事実が明らかになる。

 とりあえず、空の島は人工のものであることは確かだ。


「草とかどうかな」


 むしってアイテムボックスに放り込んでみた。


「あー、雑草って表記になってる。普通に雑草だわ」


『オー、雑草というグラスはナッシングだそうでーす』


「フランクリンがなんかやんごとなき事を言ってるな。俺のシステムもそこそこ適当なんだろうなこれ」


 草木は取り立てて特別なところのないもののようだ。


『草は食べらんないでしょ。もっとお腹に溜まるもの探しなさいよ』


『タマル様だけに』


「あっ」


『あっ』


『あっ』


 俺とキャロルとラムザーでハッとした。

 いやいやラムザー、お前が言い出したことだろ。

 ハッとするな。


「キャ、キャロルまでー」


 裏切り者ーという顔をするポタル。

 

『濡れ衣よ!! こらタマル! お腹に溜まるものを探しなさい!』


「タマルだけにな」


『わはははは』


 俺とラムザーで指さし合って大喜びする。

 キャロルがムキーッと怒って、俺とラムザーをぽかぽか叩く。

 わっはっは、痛い痛い。


 だが、確かに雑草を取るだけでは意味がない。

 キャロルにぽかぽかされつつ、俺は山側への進路変更を指示するのだった。


 空の島は案外広い。

 ちょっと踏み外したら地面まで真っ逆さまだが、島の幅自体が数十メートルあるのだ。

 で、そんなのが不規則に並んだり連なったり繋がったりしている。


 この中が迷宮になっているとしたら、そんなの考えたくもないような複雑さだろうな。

 そして魔人侯は迷宮に潜ることができない……。


 廻天将軍はここを攻略されると終わる、と考えているのではないか。

 だから、空の迷宮を守っている。

 それが高じて地上へ攻撃を仕掛けるようになったとか。


『鳥! 鳥がいる!!』


 キャロルが叫んだ。

 さすが腹ペコ娘、食べられそうなものに対する感覚が鋭い。


「どーれ、鳥をゲットしてごちそうしてやるとするか」


 空に向き直った俺である。

 そこにいたのは、見覚えのあるジャイアントバットだった。

 翼長15mくらいある。


「鳥じゃねえ!!」


『動物だから食べられるんでしょ?』


「どうだろうな。いちおう捕獲しとくか」


『オー! タマルさん、どうということはない的な事を言ってますが、あれは空のガーディアンみたいなモンスターでは……』


 パチンコぺーん!


『ウグワーッ!』


 ジャイアントバットが落下してきた。

 そいつに虫取り網をぶっつける。

 ピョインッ! ジャイアントバットがアイコンに変わった。


『アー。タマルさんはそういう人でしたねー』


「一度見た生物の動きは俺には通用しないぞ」


「タマルかっこいー! えっ、そんな力があったの!?」


『ノリでかっこいいこと言ってるだけですぞ』


 さすがラムザー、俺への理解度が高いな。

 空の島を駆けていくうちに、建物みたいなものが見えてきた。

 いや、これそのものが建物なのだから、言わば建物の入口みたいなところか。


「あそこで調理してみよう」


『うおー! やったわー!』


 大喜びするキャロル。

 そして同時に空を指差すポタル。


「今度は廻天将軍の手下が来たよ!」


「なんだとぉ」


 翼の生えた黒い魔人たちが、こちらを見つけて押し寄せてきているではないか。

 ええい、まだ備えてないうちに面倒な。


「一旦建物の奥深くまで入ろう。迷宮に突っ込むことになりそうだが仕方ない。DIYお料理レシピなら、火も煙も使わないから問題はないだろう!」


『食べられるならどこだっていいわ』


 キャロルのオーケーももらったところで、俺たちは建物の入口に馬車ごと突っ込むのである。

 肝心のレシピは……。


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYお料理レシピ

 ※コウモリの香草焼き

 素材:コウモリ系の怪物


「おお、出た出た! たまに出るのが遅れる辺り、俺がアクションをしてると処理落ちするんだな」


 建物の中は、奥深くまで続いている。

 とてもここからでは見通すことができない。


 これは……空の迷宮に直結していると見て良かろう。

 だが、それはそれとして廻天将軍の手下連中は、ここに侵入して来れないようだ。


「なるほど。魔人侯たちは迷宮に入れないね……。その通りみたいだな。だからあいつらは、なんとしても空の島に侵入させる気は無かったわけだ」


『タマル様、考察は結構ですがキャロルが死にそうな顔してますぞ』


『ごちそう……』


「ごめんごめん!!」


 うちの欠食児童のために、飯を作ってやるとするか!

 難しいことはその後である。


▶DIYお料理レシピ

 コウモリの香草焼き


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