第50話 遺跡の奥のでっかい花

 すっかりきれいになった広場に馬車を停める。


『ポルポル、馬車の護衛を任せますぞ』


『ピピー!』


 砲口から白い湯気をぶしゅーっと吐いて、ポルポルはやる気満々であります。

 なので、俺とラムザーとポタルとフランクリンの四人で探索を進めていく。


「地面は煉瓦だなこれ」


「レンガ? なあにそれ」


『土を焼いて固めたやつですな。確かに、石とは違う感覚ですな』


『文化のスメルを感じまーす』


「壁もなんか赤いだろ。長持ちするように工夫した煉瓦で作られた遺跡なのかもしれないな。だけど全然人の気配がない。魔人候の城の方がよっぽど賑やかだったよなあ」


『あれは現在進行系で使われている場所でしたからなー。ここはもう、使われなくなって長いのではないですかな? この煉瓦は草木が生えぬようですから、こうして下草に覆われたりしてはおりませんが』


「暗くなってきたよー」


「おう、そうだな。ここにたいまつがある」


 以前作っておいたたいまつだ。

 これを取り出すと、勝手に火が付いた。

 しかも取り出している限り、永遠に消えない火だ。そういうアイテムなんだな。


「明るくなった」


『オー、ファイアを見ていると溶けそうな心持ちでーす』


「雪だるまだもんなあ」


 ぺちゃくちゃと喋りながら、遺跡をずんずん奥に進んでいくのだ。

 さて、この遺跡だが、パッと見で俺はデジャブを感じた。

 何かに似てるんだよな。


 なんだろうなあ、なんだろうなあと考えていて、ハッと思い出した。


「アーケードで覆われた商店街だこれ」


 遺跡は、城という感じではなく、どちらかというと町のように見えたのである。

 しかも天井で覆われているが、材質は分からないがその天井から、陽の光が透けて見える。


 あちこち天井が破られていて、そこから光が差し込んでいる場所もあった。

 左右がお店の並びだとすると、何かあるかもしれない。


「よし、家探しを開始する」


『退廃帝のところでやったやつですな! いいですなー』


「みんなのアイテムボックスがいっぱいになったら、馬車に戻るぞ! どうせ急ぐことでもない。スローライフというくらいだからな。スローで行こう……」


『HAHAHA、超高速で退廃帝を下したモンスターガイが何か言ってますねー』


「タマルって色々自分基準だものねー」


 そうかも知れない。

 だが、人は人ではないか。

 俺にとってはこのRTAみたいな道行がスローなのだ。


 さーて、入ってみましたここは……花屋ですな。

 入ってすぐに、でっかいラフレシアみたいなのがいる。


『もが~』


 いつもの叫び声とともに、たくさん花粉を飛ばしてきましたよ!

 これやばいやつでしょ。


「いけ、紙吹雪マシーン!!」


 アイテムボックスから取り出した紙吹雪マシーンが、素晴らしい勢いで紙吹雪を吐き出す!

 相手をびっくりさせるくらいしか効果がわからなかったこいつが、今唸りをあげる!


 紙吹雪の勢いが花粉を凌駕した。

 花粉が全部ラフレシアに戻っていく。


 ラフレシアがちょっとびっくりしたようで、身を捩った。

 既に俺は接近しているぞ。

 手にしたたいまつを振り回し、余計な花粉は燃やしてやるのだ。


『もが~!?』


「ははははは! 怖かろう、苦しかろう! では大人しくするがよい。俺がゲットして売ったり博物館に寄付するから」


『も、もがー!』


 おお、ラフレシアから蔓みたいなのが伸びてきて俺に襲いかかる!


「ぐはははは! 少しばかり遅かったな!」


 たいまつを地面に設置し、既に俺の手には虫取り網がある。

 ピョインッと無情な音が響き渡った。


 ラフレシアはアイコンになっている。


『タマル様、何か邪悪な哄笑が響き渡りましたが、面白いものでもゲットされましたかな?』


「ああ、珍しい生き物をゲットした。怪物だったかもしれない」


 ラムザーが俺を邪悪呼ばわりするのはもう気にならないな!


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※つる草のロープ

 素材:蔓

 ※マンイーターの芳香剤

 素材:マンイーターの花弁

 ※マンイーターの虫取り網

 素材:虫取り網+マンイーターの花弁


「うわーっ、マンイーターじゃん! 人食い植物じゃんあれ!」


 こっちが一方的に攻撃していた気分だったが、どうやら本来なら俺が獲物だったようだ。

 危ない危ない。


 ちなみにマンイーターの他には、植物の種子を幾つか手に入れた。

 よく分からん名前の植物だ。

 気になるのは、食べられるのか食べられないのか……。


 一応もらっていくとしよう。


「みんなの戦果はどうだー?」


「みんな壊れちゃってるー。だめだよー」


 ポタルがガッカリしながら出てきた。


『我はこれですな。不思議と錆びても朽ちてもいない武器ですぞ』


 ラムザーが持ってきたのは、ギラギラ輝く金属製の……ハサミ?

 持ち手が恐ろしく長い。

 これは、高枝切鋏だな!?


 どうやらこの遺跡、高度な文明の跡らしいな。

 ギラギラ輝く色合い、たいまつに近づけてみると、金色っぽいことが分かる。

 もしやこれは……。


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※オリハルコンの高枝切鋏

 素材:オリハルコン


「オリハルコンでこんなもん作ってるのか!!」


 いや、トイレにしようとしていた俺が言えた義理ではないか。

 世界中にオリハルコンレシピが眠っているかもしれないな。

 これは探し甲斐があるというものだ。


『バット、浮遊ストーンはありませんでしたねー』


「ほんとだ。だけどここ、入り口近くで割りとオープンなところだからな。あるとしたら、あっちだろ」


 俺が指差すのは、遺跡の奥にある暗い入り口。

 商店街アーケードの先にあるあれは……。

 ビルの中にある専門店街……!


 異世界感薄いなあ!


『ウグワーッ! オリハルコンレシピを発見しました! 200ptゲット!』


▶DIYレシピ

 つる草のロープ

 マンイーターの芳香剤

 マンイーターの虫取り網

 オリハルコンの高枝切鋏


 UGWポイント

 5700pt


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