第48話 ドラゴンいるじゃん

 ドラゴンが通過していったのをボーッと眺めていた俺である。

 なんたる幻想的な生物!

 でかくて強そうで、明らかに魔人候よりも格上なんじゃないか、あの生き物は。


「なあラムザー。ドラゴン知ってるか」


『知ってますぞ。稀に地上に降り立つ巨大な怪物ですな。ちょっかいをだした愚かな魔人がドラゴンブレスの餌食になったりしますぞ』


「強いかー」


『ドラゴンブレスを浴びれば魔人候でも無事では済みませんな』


「完全にこの世界の上位生物じゃん。よし、捕獲しよう」


『我の話を聞いてましたかな?』


 この間捕まえた、ジャイアントバットよりもなお凄そうな奴がいるのである。

 これは捕まえて異形博物館に寄付せねばなるまい。


「えー! タマル、せっかく登りきったんだから一休みしてご飯食べようよう」


「言われてみればそうである」


 俺の腹が鳴った。

 登山しながら飯を食うのではなかなか安らげなかった。

 ここは、山の上の食材をゲットして飯を食うのがいいだろう。


 虫取り網を装備した四人で、森の中を散策である。

 危険なものが現れたら俺を呼ぶように言ってある。

 怪物系は俺しかゲットできないからだ。


「どーれどれ。美味そうなものは……」


 木の実みたいなものをもぎ取ってみた。

 むっ、レシピが出ない。

 食べられないのかな?


 ではこっちの木の枝はどうだ。

 何か加工品が出たりは……。


『新しいレシピが生まれた!』


「来た!」


▶DIYお料理レシピ

 ※マシマル焼き

 素材:マシマルの実+クリソーの枝


「何もわからん。さっぱりわからん……」


 謎なものが出た。

 とりあえず回収して戻っていくと、仲間たちも奇妙な動物をゲットしてきたところだった。


 極彩色のカエルがいる。

 木の枝と一緒に手にしてみると、


『新しいレシピが生まれた!』


▶DIYレシピ

 ※毒矢

 素材:デッドランドヤドクガエル+木の枝


「毒だこれー! 物騒なものができるなあ。こんな危険なものはスローライフにはいらんぞ」


『ハハハ、一撃でどんな怪物も捕らえる魔人タマル様が何か仰ってますぞ』


『HAHAHAHAHAナイスジョーク』


「くそー、ラムザーみたいなのが一人増えたぜ」


 だが、俺以外のメンバーは自衛の手段に乏しい。

 毒矢は作っておくことにした。


「敵が来たら投げつけろ」


『弓を使わずに!?』


『オー、ワイルド!』


 弓はレシピが無いからできないのだ!


「ピコーン! 私、閃いた! これ、私が空まで持っていって、相手に落とせばいいんじゃない?」


「おおっ、空を飛べるポタルの有効活用!」


『落ちてくる勢いで刺さりそうですな!』


 やんややんやと盛り上がった。

 そして、俺が閃いた新レシピ、マシマル焼きを食べるのである。


 外見は、焦げ目のある真っ白いふわふわの実。

 これに枝が突き刺さっているが枝からも香ばしい、なんともいい匂いがするではないか。


「どーれ」


 かじってみてびっくり。

 口の中でとろける甘さ。

 こ、これは……。


「マシュマロだこれ! 合わせたことで、枝もチョコになってる」


「あまーい! おいしいー!」


『し、刺激的な味ですぞ!』


『スウィート!! この味はレボリューションでーす!!』


 ポルポルが『ピピー』とジャンプして欲しがったので、砲口に食わせてやった。


『ピー』


「満足したか。しかしこのマシマルの実、なんなんだろうな。実のままだと……」


 ちょっと鼻を近づけてくんくん嗅ぐ。

 甘い香りはするが、なんか危険な気配だ。

 毒見なんかやって毒に倒れたら堪ったもんじゃない。


 そしてクリソーの枝とやら。

 これはハーブというか、漢方の匂いがするな。


 辺りを見回すと、マシマルの実は誰も手つかずのままたくさん実っていた。


「本来毒がある実なのかもしれないな。だが、それをクリソーの枝で刺すことで中和し、焼けば食えるようになるのだ」


『タマル様のレシピ、いきなり答えの方が出てくるから困りますな』


「うむ。過程が全くわからん。これからは、過程を推理していくのも大事になるかもしれない」


 その後、システムキッチンを用いてマシマル焼きの再現を行ってみた。

 結果、俺の推測が正しかったことが証明されたのである。


「しかし誰も獲らないなら、このまま種がばらまかれなくて増えていかないのではないか? どういう生態なんだろう。謎だ……」


 森でひとまず腹は膨れたものの、いろいろな謎を得てしまった。

 木々を伐採しながら、馬車の通り道を作り、どんどん森の奥へと進んでいく。


 端的に自然破壊だが、スローライフとは自然を破壊せねば不可能なものなのである。

 俺は自然の回復力を信じているぞ。


 そして途中、ドラゴンがいる間は息をひそめていたらしい怪物も出現した。


『キョエー!』


 頭がふくろうっぽいクマみたいな怪物だ!


『鳴き声が「もがー」じゃないでーす!』


「あー、そういうのばっかりだったもんなあ!」


 ぶんぶん太い腕を振り回して襲ってくるので、これはなかなか近寄りがたい。

 何かで気をそらしてから捕獲すべきか。


 そう思ったら、ポタルがやってくれた。

 いつの間にか空を飛んでおり、ふくろうクマな怪物の頭に毒矢を落としたのである。


 おっ、ちょっとだけチクッと行った。

 ハッとして頭上を見る怪物だが、すぐに動きが鈍くなった。

 嘴の端から泡を吹いている。


 俺はそーっと近づいた。


『さっきまで大暴れしてた怪物に平然と近寄る辺り、タマル様の胆力はおかしいですなあ』


『確かにあれしか手段はナッシングとしてもですねー!』


 はっはっは、感心してくれたまえ。


「そいっ!」


 ピョインッと音がして、怪物はアイコンになった。

 そこには、オウルベアと書いてある。

 ふくろうの頭を持ち、空を飛べるクマなのかもしれない。


 ハイスペックだなあ。

 だがデッドランドマウンテンでは空を飛んだらドラゴンのご飯になっちゃうな。


 ポタルもすぐに降りてきた。


「空を飛んだらねえ、すぐにドラゴンがこっちに来た! 怖かったー」


「飛ぶことが許されない場所だな、ここは! 一刻も早くドラゴン対策をせねばなるまい!」


『今タマル様、大義名分を得たって顔してましたぞ!』


▶DIYレシピ

 毒矢


 DIYお料理レシピ

 マシマル焼き


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