第73話 断られたし!?
さて、見栄を張ったけど──どうしたものかな?
とりあえずレアルさんは僕達が動くまで動くつもりが無いのかもしれないし、『威圧』を使って黙らせた2人の名前を聞いておこう!
なんせ共闘する予定だし。
「君達の名前は?」
「……アイラ」
「……ミゼルだ」
一歩後退りされてしまった……。
さすがに魔力を使い過ぎたかな?
でも2人とも止まる気配なかったんだもん!
「僕盾使いなんだ。一緒に戦わない?」
「「断るッ!」」
返事早ッ!?
しかも断られたし!
2人は再度、レアルさんに特攻していく──
「
ロロとレラは僕の指示を待つ。
「仕方ない──僕がサポートするからレラとロロはあの2人を気にかけながら攻撃だ」
僕は少し観察させてもらう。見たところ、全員脳筋前衛だろうし……。
「「了解ッ!」」
各々が攻撃を繰り出して行くが、アイラとミゼルは怪我が酷いせいか動きが鈍い。
素手なのに斬撃や刺突を簡単に弾く姿を見ていると本当に人なのか? と疑問しか出てこないな。
僕はアイラ、ミゼルが攻撃されそうになると盾を具現化して防ぐが直ぐに破壊される。
勝てないのはわかりきっているのに攻撃の手を緩めない根性は認めるけど、足手まといだな……。
というかその内、死ぬぞ? せめて言う事聞いてくれないかな……。
時間もないし、一気に決めよう──
「──【
「──邪魔だッ!」
フィアの時に作った濁った盾を作って視界を塞ぐが、一瞬にして拳打により破壊される。
当然ながらそれだけで終わりじゃないッ!
「──からの──【
目を見開くレアルさん。
いかに高ランク冒険者といえ、これを防ぎ切るのは厄介だろう──
さぁ、沈んでもらおう。
「──『紅蓮』ッ!」
レラは『魔法剣』を使用し──
「──『竜牙』──」
ロロが『半竜化』した強力な突きを放ち──
「──『一閃』──」
ミゼルは剣速を最大にした居合い斬りを──
「──『雷撃』──」
アイラは雷を拳に纏って殴りつける──
四方から4人が最大の攻撃を行う。
「──甘いッ!」
攻撃が当たる──そう思った瞬間、レアルさんは今までより速く動く。
「「「──!?」」」
各々攻撃が当たる前に吹き飛ばされる。
拙い──かなり強めの一撃を全員が受けてしまった。
瞬時に『アイギス』のスキルスロットに僕が『無限収納』に込めまくった『回復魔法』を全スロットに装着する。
「──【
全員が飛ぶ方向に盾を具現化させて盾のボックスに閉じ込める。
しばらくすると淡い光に包まれる──
無事に発動したみたいだ。
これで後は少し時間稼ぎすれば大丈夫だ。
旅の途中に『回復魔法』を習得した僕は練習がてら『無限収納』に魔法を込めまくっていた。
これをスキルスロットに装着したらどうなるかの実験もした。
ただ、装着しただけでは効果が無かったが──盾に触れると回復したのだ。
これなら離れた人にも回復出来る。
ただ、重ね掛けで効果を上げる事は出来ない。どうやら一つの盾につき魔法やブレスは一つずつしか発動しないようだ。
その為、あくまで初級並の『回復』効果しかない。つまり盾1枚につきスキルスロット5個分の回復を継続して発動する。
少し時間はかかるからゲームとかのリジェネ効果みたいな感じだ。盾から離れると使えないのが欠点だから今回は閉じ込めて使ってるけどね。
動く人にも使えるように何か考えないとダメだな。今回は盾で囲んでいるからどれかは触れるだろう。
とりあえず、これで戦力の回復は出来る。
時間さえ稼げればだけど……。
「ロイドだったな。おかしな戦い方をする……だが──俺に『身体強化』を使わせたのは賞賛に値する。残りは盾使いのお前だけだだが──やるか?」
レアルさんは僕を見ながら褒めてくれるが、『身体強化』を使用されただけで一気に戦況がひっくり返った事に動揺している。表情は大先生のお陰で笑ってるけどね……。
しかし、さっきとは段違いの動きだった。
ここまで違うものなんだな……。
母さん達が訓練では『身体強化』を使っていなかったのは明白だな。確かに今から思えば
慢心してたなぁ……。
いったい……いつになったら追いつくんだろう……。
そんな事を思ってしまう。
でも──ここで無様にやられてるようじゃ、いつまで経っても追いつけない。
僕の戦い方って奴を見せてやるッ!
「──レアルさん、僕は簡単にはやられませんよ? なんせ『双聖壁』の息子ですからね」
「……そうか……通りでカイルさんと似た防ぎ方をするわけだ。──ならば確かめさせてもらおう。お前の盾使いとしての力をな?」
「えぇ、さぁ第2ラウンドの開始ですよッ!」
◆
俺は共闘を拒否して再度一心不乱に攻撃を行う──
人数が増えて先程よりはまだ動きやすかった。
いや──怪我で動きの鈍い俺とアイラとかいう女が危なくなると、レラとロロと呼ばれた奴らが介入してくるようになったと言った方がいいか。
あの男はロイドと言っていたな。威圧も凄まじかったが、戦い方が異常だった。
盾使いと言っていた癖に、盾を持たず、半透明の盾を離れた場所に出す。しかもサポートだけじゃなく、攻撃も行っていた。
そして、奴は隙を作り出し、俺達は一斉に渾身の攻撃を行うが──
それでも全然届かなかった……。
俺は試験官に吹き飛ばされたと思った瞬間、この半透明のボックスに閉じ込められ、光ったと思ったら傷を癒やされている──
こんな盾使いは見た事がない。
だが、俺は誰とも組むつもりは無い。
俺は妹以外は信じない──
それが、故郷から逃げて──この街の貧民街で学んだ事だッ!
俺は双子の妹と貧民街で2人暮らしている──
貧民街の子供が生きていくのは難しい。騙し騙され、盗みや暴力は日常茶飯事。
力の無い者は悪だ。人権なんてあったもんじゃない。毎日、力ある者には殴られるし、食事も1日1食──食べれたら良い方だ。
貧民街から出たら出たで厄介者扱い──
ここにいる奴らも俺らみたいな者を見下す奴ばかり──
だから俺は妹以外は信じない。
そう思っていると──
『お兄ちゃん負けないでッ!』
──妹のそんな声が聞こえてきた。
今年から冒険者育成学園の制度が変わって学費も安くなり、更に有用なユニークスキル持ちや試験の優秀者は免除になると聞いた。
朗報だと思った。妹は病気だ。しかも魔法で治せない……治すには薬が必要だと言われた。
薬を買う金を稼ぐには冒険者になるしかないと思っていた。
そして、俺は『開花の儀』でユニークスキルを授かっているし、妹は強力なユニークスキルを生まれながら持っている。
後は住む場所と食事──そして金を手に入れる事が出来るのであれば俺は問題無い。
後は──
底辺であっても凄いんだと周りに示すッ!
それに妹の前で無様な姿は晒せない。
ロイドと言ったな。妹の為にも回復が終わったら借りは返すぜ──
◆
この威圧の中動ける人は少ない。最初は動ける者はそれなりにいた。けど直ぐにやられ──最後まで残ったのは私と黒髪の男だ。
後から参戦した3人の中に『拳聖』である母さんから聞いていた『双聖』の息子であるロイドがいる事に気付く。
離れた場所に盾を出す事が出来ると聞いていたが、参戦すると同時に盾を自在に操り、私達が動きやすくなる為にサポートをしてくれた。
それにこいつが威圧を使ったお陰で相手からの威圧が少しだけマシのように感じる。
正直ここまでとは思っていなかった。
しかも盾を囲むように出したのも回復させる為──
こんな事が出来るとは……。
母さんが既成事実を作って引き入れろと言うわけだ……。
学園生活が楽しみだ。
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