第55話 殺す気かッ!?
さぁ、面白くなってきたわね。
ユラの範囲攻撃も無力化させ、エレンの一点突破の攻撃も避けた。
ゾルによって盾使いとして基礎以上は叩き込まれているのは証明されたわ。
後は私の攻撃を防ぎ切れば合格よ。
あぁ、我が子の成長が嬉しい──ここまで成長してるなんてね。
ロイを見ると笑っている。
この子はどんな苦境であっても笑う事が出来る凄い子。この私の最大の『威圧』を前にしても怯むことがない。
これは対人戦にとても有効な手段の一つ。
表情を悟らせない事で『まだ何かあるのか』と思わせる事も出来るし、余裕があると思い込ませる事も出来る。
強い魔物が相手でもこの余裕があればパニックになっても周りは落ち着く事が出来るかもしれない。
さて──力比べをしましょうかッ!
「──【
本気では無い。だけど、ロイが回避するには限界ギリギリであろう規模と破壊力は込めた。
ドラゴンのブレスすら防いだ技で凌ぐのかしら?
さぁ──どう出る?
◆
「ははっ……」
乾いた笑いしか出ないな!
やっべぇ……どうするよ!?
受け流した場合……百戦錬磨の先生達の見解は──
手足の一本は確実に吹っ飛ぶ未来しか見えないんですけど!?
母さんの事だからギリギリの範囲を見極めているに違いない。
だけど、買い被り過ぎじゃね?!
これミスったら死ぬじゃん?!
あれって【
もう母さんの攻撃が発動してるし──やるしかない……。
「──【
母さんと僕の中間地点に大きな盾を具現化する。
母さんから技を放たれ、攻撃が当たると同時に盾は破壊される。
無理じゃん!
死ぬじゃん!
好き嫌いしないで【暴食】さん仕事しろよ!
あれか!?
盾が攻撃範囲より小さいからなのか!?
それともスキル攻撃は無理なのか!?
単純に母さんの威力が高すぎるのか!?
──って、そんな事考えてる場合じゃねぇーっ!
攻撃が来るぅぅゥゥゥッ!!!!
あぁぁぁぁっ! どうする!?
どうしたらいい?!
最悪、死ななければシャーリーさんが治してくれるはずだ!
よし、生き残るぞッ!
盾を複数枚出しても効果は期待出来ないし、こんな短時間で強力な盾も具現化出来ない。
ここは『無限収納』に保存された『ブレス』を使うしかないッ!
目の前に大きめの盾を出して『アイギス』のスキルスロットに『ブレス』をセットする──
「──良しッ! いっけぇぇぇっ! ──うおッ!?」
盾から出た『ブレス』はレッドドラゴンの放っていたのと同じ規模で発射される。
地面を削りながら進む『ブレス』──
それが母さんの【
ここで僕は驚愕の光景を目にする。
ドラゴンのブレスで相殺も出来ないが、斬られる事も無い。
ただ──押されているという光景だッ!
斬られなかったのはありがたいけど、このままじゃ僕がヤられるッ!
母さんの必殺技はブレス如きじゃ敵わないとは……もはや人外だろ……。
出し惜しみは無しだッ!
母さんの【
斬られないのであれば押し戻すしかない。つまり残りの四方にブレスを当てる。
僕は4枚の盾に『ブレス』をスキルスロットにぶっ込み──
「──
──発射するが──
「甘いッ! ──【
中間地点で大爆発が起こる。
「おわっ」
僕は風圧に負けないように踏み留まる。
──後ろから『危機察知』!?
即座に振り向き防御体勢を取る。
その時──【直感】先生が「死ぬぞ?」と言った気がした。
うん、確かに! と目の前を見て納得する。
シャーリーさんの極太
こんなもん避けれるかッ!
タコ殴りじゃないかッ! というか消し飛ぶわッ!
あぁ、なんか光線が遅く感じるな……【視覚】の効果か?
いや、普通に走馬灯的な奴かな?
ふと、師匠が視界に入る──
とても気の毒そうな表情だな。
師匠なら跳ね返すんだろうけどさ……。
──跳ね返す?
よく考えてみたら『アイギス』の魔力盾って魔力で出来てたよね?
やるしかないか──
師匠の【
あれは盾に魔力を高密度に覆って、鏡の様にしていたはずだ。
確かに『アイギス』で出した盾は半透明だけど、魔力を込めて強度を上げると濁った色になっていた。これが鏡のようになれば成功なのだろうと推測する。
この死と隣り合わせの状況を利用して【魔感度】の『魔力精密操作』を使いこなそう──
幸い【性感度】大先生のお陰で恐怖心は全く無い。
それに今の僕なら全感覚を最大にしているから研ぎ澄まされているはず──
それに僕を応援してくれている人がいる。それだけで頑張れる──
◆
マジかー。
隊長もシャーリー様も容赦がねぇな……。
俺は念の為に介入する為──盾に魔力を込めている。
『縮地』スキル使えば間に合うだろう。たぶん──
しかし、本気では無いとは言え、こんな連携攻撃なんか俺でもキツいぞ?
まぁ、ロイの事だからなんとかするとは思うが──
ミスったら死ぬな……やはり、今直ぐに介入するべきか?
いや、これは試験だ。
ロイがどんな苦境であっても諦めずに足掻く事がちゃんと出来るかのな。
ぶっちゃけ、普通の冒険者やってて──こんな攻撃が来る未来が訪れるとは思わんが……。
俺がロイの立場ならグレるぞ?
隊長の愛が重過ぎるだろ……。
──!?
むむ、ロイは目を瞑っているな。こんな状況でも集中している。
やはり大した奴だな。
ん?
あれは──
まさか、【
この土壇場で試す気か?!
しかし、そんな簡単に出来るもんじゃない──
俺もカイルだって習得に一年はかかっている。
やはり、介入するべきだな。
俺は踏み込み、スキル『縮地』を発動するが──
「──信じなさい。大丈夫。いつでも『結界』を多重展開出来るようにしてるわ。それにレラちゃんは光線を斬ろうとしているし、フィアちゃんも『回復魔法』を遠隔で使用しているから即死はしないわ。それに──あの子はいつだって乗り越えて来たわ。だから信じてみたら? 貴方の弟子よ?」
ユラの言葉に踏み留まる。
フィアとレラの2人がロイの為に動いていると知り、俺は胸が熱くなる。
ちゃんと全員が精神面でも成長している。
いけねぇな……大人の俺があたふたしてたら。
俺も信じてみるか──弟子をなッ!
【
◆
──良しッ!
──完成だ。
僕は目を開いて右手の盾を見ると大きめにした盾が少しキラキラ光っていた。
師匠程ではないけど、初挑戦でこれなら十分だ。
跳ね返す必要は全く無い。師匠だって被害が出ないように逸らしていただけだ。
それに僕の盾は面ではなく、円錐のようにしている。
これなら僕は無事だろう。
フィアは僕が即死しないように『回復魔法』を使い、レラはシャーリーさんの極太光線を横から『魔法剣』で斬り──勢いを多少殺す事に成功する。
2人の想いが伝わってくる。
パーティとしての僕達の絆を母さん達に見せる事が出来た。
後は僕が2人を守れる証明をすれば良いだけ──
「行くぞッ!!! ──【
僕の盾に光線が当たるが、予想通り魔力でコーティングされ、角度をつけたお陰で反射する事に成功する。
光線はそのまま人気の無い場所に行き、爆発を起こす──
そして、僕の盾は霧散する──
「……はぁ……はぁ……はぁ……」
ギリギリだったな……。
辺りは静まり返り──僕の息切れが木霊する。
パチパチッと拍手をする音が聞こえて来た。
母さんを含めた大人達だ。
全員が嬉しそうに手を叩いて僕達3人を称えてくれる。
この瞬間──
僕は合格したんだと悟った──
その時、僕が思ったのは──
試験多いし、殺す気かッ!
──だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます