第28話 面倒くさいわね!?
ロイの成長が嬉しくて泣きそうだわ。
これなら学園にも問題なく送り出せそう。
卒業試験も考えてあるのよね〜。来月には出来そうね。
『剣術』スキルも才能は無いけど習得しているし、ソロでも弱い敵ならなんとかなるでしょう。
それにマンティコアの首を斬り落とした時──既に気絶していた。あの未知の力もあるなら問題ないはず。
「感慨深そうですね?」
ユラが私にそう声をかけてくる。
「我が子の成長は嬉しいものよ?」
「そうですね。うちの娘も冒険者育成学園に通わせようかしら? フィアちゃんも聖女にならないならあの子は聖騎士にならないだろうしね。それに魔法使いだし、丁度いいかも。ロイ君達のパーティなら安心して任せられるわ」
ユラとゾルの娘は才能溢れる魔法使いだったはず。いずれ賢者にもなれる──そう聞いている。
そんな子がロイのパーティに入ってくれるなら安心出来るわ。
「そうね……私達みたいになってくれるといいわね?」
周りも頷いてくれる。
レラちゃんやフィアちゃんもユラの娘に興味があるようで色々と質問している。
シャーリーもフィアちゃんが聖女候補のままであるなら、きっと子供達を聖騎士として迎え入れたかったでしょうね……。
今の教会の事情を聞く限り、あんまり良い事はなさそうだし、子供達には自由に生きて欲しいわね。
それよりも──面倒臭い事になったわね……。
「リリア──」
「はっ、ロイきゅんを連れて帰ればいいんですね?」
「そうよ。リリアならわかっているでしょう?」
リリアは『聖天』では斥候の役割を担っている。これぐらいはわかっているはず。
「はい──既に街周辺は魔物だらけです……」
「「「!?」」」
「ロイが起きても家で待機させなさい。解毒させてもしばらくは安静にしないといけないわ。リリア──手を出したら細切れにするわよ?」
「い、嫌だなぁ〜寝込みなんて襲いませんよ〜」
本当にこの子は……昔は遠くから見るぐらいだったのに、今では処女の癖に襲って既成事実でも作りそうなぐらい歪んで成長してるわね……忙しくて孤児院で戯れる暇もなかったからなんでしょうけど……。
まさか、ロイをロックオンするとは……。
「ロイは頼んだわよ」
「はーい、じゃあ家に戻りますね。ご武運を──あ、ロイきゅんがこっちに向かいそうになったら襲いますからね〜──」
全く……ロイは勘が鋭いから大人しくするでしょ。
走り去るリリアを見送り、シャーリーに問いかける。
「さぁ、シャーリーどうする?」
「街の防衛を行います……危険な魔物はいますか?」
「今の所はいないわ。──
空にいるワイバーンに向けて放つと肉片が地面に落下する──
「相変わらず隊長は規格外だな……ワイバーンとか普通一撃で仕留められんぞ?」
ゾルはやれやれと声をかける。
「貴方達もこれぐらい出来るでしょ?」
「「当然」」
「俺は無理だ」
ユラとエレンは問題ないようね。まぁゾルは盾役だから仕方ないわね。
「私とエレンは手強そうな奴を狩るわ。それ以外は街付近で防衛線。ユラとゾルはレラちゃん、フィアちゃん、シャーリーの護衛よ。無理なら合図を──」
全員が頷き移動する。
はぁ……厄介な事になったわね……。
魔族でもいるのかしら?
◇◇◇
「はぁ……やっぱり鈍ってるわね……手こずったわ」
目の前は死屍累々になっている。当然ながら私が斬り刻んだ。
予想以上に魔物が多かった……。
やはり、私の力はまだ全盛期に届いていない。
剣筋は戻っているけど、体力が落ちているし、勘も鈍くなっている。元【剣聖】の名前が泣いてるわ。
まぁ、でもそれはマンティコアの時にわかっていた。あんな雑魚に手間取るなんて、昔の私では考えられない。
それでもこの短期間でここまで戻せたのはロイにマッサージをしてもらったからかしら? 直ぐに疲労が取れるから次の日も快調だったし……。
「さてと──」
皆と連絡を取る為に通信水晶を手に取る。これは今日魔物狩りをする前日にシャーリーが予め何かあった時用に大人全員に渡している。
「全員聞こえる?」
水晶が光り出すと私は連絡を取る為に話し出す。
「「「聞こえるわ」」」
シャーリー、ユラ、エレンが水晶ごしに返事をする。
「一旦、シャーリーのいる街の門に集合よ。今はそこまで強い魔物はいないわ」
私の『索敵』には強い存在は今の所はいないけど、一旦集まって対策を練った方がいい。数が多すぎる。
私は合流する為に走り出す──
◆
「ふぅ……」
ライラから連絡を受けた私は一先ず安心します。
目の前にはレラちゃんは疲労、フィアは魔力切れで地面に座っています。
雑魚とはいえ、大量の魔物が襲ってきましたからね……満身創痍でしょうね。
今は街を結界で守っているので魔物が襲っても大丈夫でしょう。
残党はユラとゾルに任せておけば問題ないはずです。それにそのうち、ライラとエレンも帰ってくるでしょうしね。
しかし、魔物が異常に多い。
この地域は魔素が薄く──魔物が少ない場所のはず。
だけど、私がここに来た時と比べると日に日に魔素が濃くなっている気がします。この間のエレンが暴走した時に精霊様が一旦魔素を取り除かれたはずなのに……。
何か起こっているのでしょうか?
魔物の氾濫?
しかし、その割には数が少ない……ですが、その可能性も捨て切れない。
それとも人為的に引き起こされた?
もし、そうであるなら私達だけで防衛するのは少し厳しそうですね……戦力が足りない……。
子供達は街に避難させた方がいいかもしれませんね……。
「ふっ──」
モーニングスターの鉄球を近寄って来たオーク目掛けて放ちます。
オークは肉塊に変わると同時に全員が到着します。
「相変わらず凄まじいわね。雑魚がかなりいるわよ。──この結界はどれぐらいいけるのかしら?」
「魔力的に1日が限界ですね……ライラの方はどうでしたか?」
「とりあえず、厄介そうな奴と目に入った魔物は殲滅したわ。シャーリーの魔力が切れる前になんとかしないとダメね。原因はわかる?」
「残念ながら原因不明ですね。ただの氾濫の可能性もありますが──急すぎます」
「……そうね。せめて原因さえわかればなんとかなるのに……しばらくは街の防衛かしら?」
「それしかありませんね……エレンは領主にこの事を伝えて、その後は近くの街まで救援を頼んで来て下さい」
「はっ」
「私、ライラ、ゾル、ユラは街の防衛です」
「「「了解」」」
「フィアとレラちゃんは帰って休みなさい」
「私はまだ戦えますっ!」
「私もまだいけます!」
「ダメよ。2人とも疲労が強すぎるわ。これ以上は足手まとい──帰りなさい。ここからは大人の仕事よ」
私は普段より強めに言葉を出して有無を言わせないようにする。
「「……はい……」」
2人は大人しくそのまま帰路につく。
この戦いはいつまで続くかわからない。死ぬかもしれない戦場に子供は置いておけない。
「散開っ!」
ライラの掛け声で全員が動き出す──
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