第5話嵐を呼ぶ!僕とグレイマン

 春。

 それは運命という名の未知との遭遇。

 ・・・・・・・・この入りはつい最近やった。

 そして出会ったのはうちゅうじん基グレイマン基グレイちゃん。

 未知という点で見れば限りなく無限。

 無限に広がる好奇心。

 されど強い畏怖を感じる。

 無理やり作ったキャラクターなのか。

 奇を衒う凡人。

 なにも特徴が無かったから後付けでつけた個性。

 ・・・・・・・・それはないか。

 着ぐるみを脱げば天上天下唯我独尊を謳う、常識外の美少女。

 外見が良いという生まれ持った素晴らしい個性を持っている。

 僕の様な地球における、全人類の人生のサポーターには何を考えているのかさっぱり分からない。

 まぁ僕でなくても彼女については欠片も理解できないか。

 しかしサポーターは12人目の青きサムライとも言う。

 自分を肯定するための上手い口実。

 自己暗示みたいなものだけど。

 悪い?いいじゃないか。

 男の子は妄想とか空想とか大好きなんだよ。

 妄想の中なら最強の主人公にだってなれる。

 最後は意識がプツンと切れ、虚しさだけが心を侵略し、体を癌のようにどんどん蝕むだけなんだけど。

 閑話休題。


 桜舞う季節に奇跡とベタが舞う。

 桜のようにピンク色の3年間か、はたまた寝坊した蕾の様な塞ぎこんだ3年間になるか。

 それは神のみぞ知る。

 そう断定づければそうとしか言えないが。

 自分の一挙手一投足にかかっていると言えば希望が湧く。

 ルートを間違えれば3年間月下氷人。

 されど正当な主人公ルートに少しでもかすれば1人くらい。

 僥倖に巡り合う事だって・・・・。

 僕が誘蛾灯で女の子がキャァァー。ワァァァー。

 悲鳴じゃないよ。歓声、嬌声の嵐。・・・・になるはず。

 つまりもし蕾になりそうなら自分で花を咲かすしかないという事。

 水も栄養も日光も待ってるだけじゃ来ない。

 自ら勝ち取りに行く。

 でも・・・・出来ればピンク色の・・・・それも出来レースの上を走り切りたい。

 チコクチコクゥゥゥ!ドンッ!キャァァァ。チラ。

 あっ苺だ。

 ドコミテンノヨヘンタイ!

 テンコウセイヲショウカイスル。

 ッテェー、アンタアサノォ!

 苺ちゃんじゃん!

 ナニヨソレェ!

 ・・・・・・・・みたいなのがええなぁ。

 もちろん苺じゃなくてもいいよ。

 クマでもシマシマでも。

 欲を言うなら、僕は今センチメンタル(意味は知らない)な気分。

 レースの少し透けそうな感じの、大人っぽい色気のある感じが。

 ゲヘッ。グヘへへ。

 おっと涎が。

 フキフキ。猥雑な心もフキフキ。

 オトコノコダカラワイザツナノハフキトレナァイ。



 舗装されていない、でこぼこの道をテクテクと歩く。

 1歩1歩コンクリートを踏みしめて、確実に着実に進む。

 相変わらず空気はおいしい・・・・のか?

 とにかく澄み切っている。

 元居た都会の空気は2重の意味で汚い。

 排気ガス、人込みそれらによって汚染され、行きかう人々の疲れ切った顔、汚い商売で小銭を稼ぐ下賤な輩。

 目には見えないもののどこか錆びついた様な・・・・。

 それに比べればここの空気は素晴らしい。

 スゥっと体になじむ気がする。

 ゴホン。咳払い。

 人生に寄り道は無いという。

 目的地がないから、という事らしい。

 しかし今日は、今日の僕の歩みには目的地があった。

 澄み渡る空は快晴。雲1つ無い、気持ちとしては清々しくなるような。

 その空は地球の7割を侵略する海を投影している様な気もする。

 なら海の気分次第?母なる海とも言うし・・・・。

 つまり神秘的、スピリチュアルであるという事。

 手を伸ばせば宇宙に届くかもしれない。

 ・・・・それはないか。現実味がない。

 届いたところでどうすればいい。

 宇宙の皆さんに迷惑が掛かってしまう。

 まぁあいつには報告してやるかな。

 それにしても今日は星が見えそうだ。



 6日前の落雷の後。

 非現実的な現象に狂喜乱舞するうちゅうじんの感情の高ぶりを抑え、何とか家に入れる。

 コンビニの高ルクスの光とは比べ物にならない、比べるのもおこがましいくらいに感じるその光量は少なからず僕の心を席巻した。

 思考が袋小路になり、熱を帯びたように顔がほてる。

 紺碧の空に1筋の光基落雷。

 興奮や恐怖などの万感を表面には出さず、努めて冷静に。

 「怪我はないか?」

 ドタドタドタ。「おかしゃぁぁぁん!」

 川に佇むアオサギが空へ羽ばたく様な、そんな躍動感のある動きでリノリウムの道を駆け抜ける。

 水灰色の髪がなびき、雨粒が残滓となって後を追う。

 ビー玉の様な青い目はいつにもましてきれいに映り、大きく見開かれている。

 好奇心という火が目に宿り、ギラギラと燃え滾っていた。

 そんな感じで無視された。僕の心配は雷には勝てなかったみたいです。

 「おかしゃん。庭先に!ドカァァンって!ピカァァァって!その後はモクモクで、クサクサだったの!なんで?なんで?」

 濡れたレインコートを身に纏い、おねさんの下へ猪突猛進。

 「やぁぁん。若い子の勢いはすごいわぁ。まぁ私も負けてないけどねぇ。」

 その勢いを体全体で受け止め、クンカクンカとレインコートうちゅうじんの若い成分をしれっと吸収していた。

 ソレッテオイシイノ?僕の感想。

 「やっぱりおかしゃんはうちゅうじんだ。私の知らない事なんでも知ってる。なんであそこに雷落ちるってわかったの?」

 いつもは淡白で、口数の少ない。しかし口を開けば訳の分からない事をだらだらと羅列し、さも常識かのように語る。

 自分の好きなことは一生懸命に、嫌いなことは見ないふり。

 そんな生き方ができるのはお前だけだよ。

 皆、嫌なことを嚥下して生きている。

 でもお前は良いよな。顔が良いから何でも許される。

 そういうところを見るとイライラする。

 僕の人生観とはアシンメトリーで、僕が東奔西走している時にこいつはのうのうと宇宙がーとか考えていると思うと・・・・・・・・。

 たぶん無視されて機嫌悪くなっている。

 いつもはさわやかお兄さんだよ。ほんとだよ。

 閑話休題。

 グレイちゃんの問いにしばしうーんと小首をかしげあざとく考えるふりをし、その妖艶な唇・・・・ゴホン、張りのある唇を動かす。

 「グレイちゃん。喰っちゃうぞぉぉぉ!」

 「キャァァァァ!」

 ドタドタドタ。トテトテトテ。

 ・・・・2度目の入浴が始まるようだ。

 「ミッキー!これはチャンスよぉぉ!」

 「アガッタラハイリマスネー。」





 15分ほど歩いただろうか。

 周りにはちらほらと同じ制服を身に纏った学生が見える。

 基本的に自転車か歩きの二択といった所だろうか。

 ここにきて自転車登校に憧れを抱く。

 もう少しで目的地には着くのだが、これがなかなかキツイ。

 足は運動不足でもはや棒。

 毛を生やした、少し傷ありの棒。

 そんなものででこぼこのコンクリートを歩く。

 額には汗が滲み、肩で息をする。

 自転車で優雅に登校する奴らを横目に、額の汗を拭く。

 あぁ。自転車欲しいなぁ。

 でもなぁ。居候の身だしなぁ。

 正直難しいところなんだよなぁ。みつを。

 ゴホン。

 


 錆びた門に古びた校舎。

 その光景は都会に置いていかれ、それでも牛歩をやめないセピア色の産物。

 どれだけ刮目しても最新鋭の何かは見えず、自然に席巻されている。

 ここら一帯の時間はうちゅうじんにキャトルミューティレーションされたのだろうか。

 僕は今この瞬間、進化のコントラストを見た。

 都会の学校と田舎の学校。

 でもなぜだろう。都会より劣っているとは思えない。

 その錆も、傷だらけの校舎も、都会の綺麗で大きな校舎に。

 時の流れを身近に感じられる分、悪くない。

 色んな事を踏襲し、様々な伝統があり、思い出がある。

 僕の様な新参者にもわかりやすく伝えてくれる。

 諸手を広げ、僕をお迎えしてる様な。

 ・・・・・・・・何言ってるんだ。僕は。

 現実逃避。

 これから起こることから少しでも距離を取るために。

 事前には分かっていたんだよ。

 でも僕はこっちの道を選んだ。

 ・・・・・・・・逃げ道として。



 

 階段を上る。

 足は重い。

 あいつは何してるんだろう。

 シンリャクカツドウアサノブだろうか。

 ばかばかしい。

 扉を開ける。

 ガラガラ。ジィィィィィィ。

 痛い、痛いよぉぉ!おかぁしゃゃん!

 視線のレーザーポインターが無数に直撃する。

 教室を包んでいた喧騒が、一瞬にして静閑が包む。

 メッ〇もネイ〇ールもこんな状態でフリーキックをゴールに叩きこんでいるのか。

 再度賞賛の拍手を!

 パチパチパチパチ・・・・。

 ササササッ。

 黒板に席順が書かれている。

 レーザーポインターは無視だ。

 実害はない。それに僕は毎日グレイマンから光線を浴びているんだ。

 こんなところでひよってはいけない。

 これは予定調和。事前に知っていたことだし、覚悟していた事。

 この数日間の非日常が勇気に変わる。

 グレイマンに出会い、うば桜に僕の性癖を滅茶苦茶にされそうになる毎日。

 これよりひどいことがあるだろうか。いや、ない。

 こんなことが1歩を踏み出すための礎となるのは癪だが仕方ない。

 ・・・・・・・・よね。

 今から始まるのは華の高校生活。

 青春を謳歌し、時には苦汁を飲み、それでも前に進む。

 曖昧模糊ではあるが、全力で楽しむ。

 1つ1つの萌動に敏感に、そして逃さない。

 恋の交信は全力でキャッチするつもり。

 そして・・・・・・・・自分に嘘はつかない。





 青息吐息。青息吐息。青息吐息。青息吐息。青息吐息。

 いじめられることはないだろう。多分。

 そう願いたい。

 席順は案の定あいうえお順。

 浅井から始まり・・・・・・・・渡辺で終わる。

 そう、終点は僕。

 2人目の渡辺じゃない。ミッキーの方の渡辺。

 あの時は思わず無機物である紙にツッコミそうになった。

 見間違いでは?と目が赤くなるまでこすった。

 結果は変わらなかった。

 神様はいない。

 改めて実感した。

 閑話休題。

 具体的な席の場所の話をしよう。

 えっなに?ずっと独り言できもい?

 仕方ないじゃん。今僕のおでこには『肉』でも第3の目があるわけでもないんだから。

 うっっっっすぅぅぅく『独』の文字が浮かんでるんだから。

 プロレスも、武道界にも出られない。

 強いて言うならうちゅうじんと交信できるくらいの才しかない。

 それも似非うちゅうじん。

 じゃあただの人やんけ!

 そうやでぇぇ!

 ゴホン。何度もすいません。

 僕の右手には後ろの扉。

 この教室には前後に出入りできる扉がある。(普通か)

 後ろの扉には内から鍵が掛けられる。

 一方、前の扉はその逆で外からしか鍵を掛けられない。

 だから何?って感じだけど、今後の展望にかかわるかもしれないから・・・・ね。

 もちろん、1番後ろの席。

 それだけは何よりの救い。

 自分で言うのもなんだが、授業を真っ当に受けれる自信はない。

 ヤンキーぶってるわけじゃないよ。多分。

 睡魔が歩哨のように立ちはだかる。

 時間が経つにつれ、養っていた英気がすり減り、なんでこんな事しているんだと栓無い事を考え始める。

 そしてそのままテイクダウン。

 1、2、3カンカンカン!

 シープならぬスリープ。

 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。

 おはよう。っていうのがセオリー。

 スターバッ〇スコーヒー基スタバの注文がややこしいように、睡魔との戦いは宇宙規模に。

 ・・・・・・・・?

 



 「おらぁー席に着けぇー。」

 前の引き戸が開くと共に、野太い声が教室の喧騒を貫く。

 その声を筆頭に、バラバラと散らばった生徒たちがダラダラと自分の席に戻る。

 どうやらこれから始まるようだ。

 バラ色のが・・・・えっ?

 僕の双眼が非現実的な光景を捉える。

 「う、うせやろ。」

 その衝撃は脳天を隕石が直撃したような、まさに天変地異。

 この世の摂理をまるっきり変えた様な。

 「「「「「「・・・・野原〇んのすけがいる。」」」」」」

 クラスが一致団結したような、まさにシナプスがリンクした。

 あの永遠の5歳児がこんなおっさんに。

 あの物語はフィクションではなかった。

 サ〇エさん方式に年をとらない日常アニメでありながら、おしりを丸出しにするあの社会不適合者っぷりはノンフィクションだったというのか?!

 たとえ5歳児でもおしり丸出しは軽犯罪に引っかかるのでは?と昔は子供ながらに心配していたのだが。

 それは杞憂だったみたいだ。

 こうして大人へ成長し、教育者として青少年を導く立場に立っているのだから。

 でもまぁあれか。

 映画の時は怖いほど感動を生み出すからなぁ。

 どこかのガキ大将には敵わないにしても。

 そのギャップがやはり良作を生み出すのだろうか。

 閑話休題。

 濃く太い、繋がりそうな眉毛。

 丸刈りっぽい、角刈りっぽい髪型。

 服こそ赤と黄色では無いものの僕には見える。

 見えるぞぉぉぉ。

 ピンクの恐竜がプリントされている、緑色の六角形の筒がぁぁぁぁ!

 「ブリブリィィー。ブリブリィィー。」

 少しざわついていた教室が一気に静閑に包まれる。

 空気は、春なのになぜか凍え、心を凍てつく風が蝕む。

 空に舞う桜が血塗られた風花なのでは?と勘違いを起こしてしまうほどに。

 「と、まぁ、ここまでが例年通り一連の流れなんだが。」

 顔に火照りなど一切見せず、傲岸不遜に仁王立ちして二言目を話し始めた。

 その男らしい姿はまさに映画の時の野原ひ〇しを彷彿させる。

 彼1人で2役を演じきる。

 やはり超人気アニメの主役は器用なんだなぁと改めて感心。

 マルチな活躍が成功の鍵なんだと人生の助言を貰ったような。

 そんな気がした。

 「何か、質問はあるか?」

 「はい!はい!はい!」

 少しやんちゃな見た目をした、中身もその通りっぽい感じの男が手を挙げる。

 周りと目配せをし、笑みがダムくらい溢れている。

 「あのぉー。お名前は?」

 辺りがざわつく。

 ビビってんじゃねぇよ!それじゃねぇだろ!

 こそこそとそんな声が聞こえた。

 どうやらこの質問は本命ではないようだ。

 「あぁー言い忘れていた。俺・・・・いや、オラの名前は・・・・・・・・」



 「東原慎之介ひがしはらしんのすけだ!」

 



 ・・・・・・・・嵐を呼んだ。



 

 

 

 

 




 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

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