第190話 キャラバンを助けます!

「頼む。キャラバン隊の積荷は商売の生命線なんだ」

「場所はどこですか?」


 モンスターに襲われているという行商部隊。

 ツバメがその場所をたずねると、支配人は手にした古地図を指さした。


「街から続く川を進んだ先、ちょうどピラミッドの反対側に当たる場所だ」

「向こうですね」


【地図の知識】によってツバメは、すぐに方向を把握。


「さっそく行きましょう」

「はいっ! 行ってきます!」


 ビシッと支配人に敬礼して、劇場を出ていくメイ。

 二人もそのあとに続く。

 砂漠は、やはりどこか足の取られる感覚がある。

 それでも移動力に定評のあるメイたち。

 時に青い空を望みながら走り続ける。


「あの辺だよっ!」


 方向さえ分かっていれば、すぐにメイの【遠視】が異変を見つける。

 やや浅めの川べり。

 積荷を乗せた複数のラクダと商隊が、体長5メートルを超える黒いワニたちに囲まれている。


「メイ、お願いできる? 魔法を使う時間が欲しいの」

「おまかせくだいさいっ!」


 レンの言葉に笑顔で答えたメイは、そのままっ直ぐ商隊のもとへ。


「【ラビットジャンプ】!」


 着地と同時にスキルを発動。


「【投石】!」


 投じた石がワニに当たり、メイがまとめてターゲットを引き受ける。

 残りのワニは、時間差でやって来たツバメが引き付けにいく。


「よっ、それっ、【アクロバット】!」

「【加速】」


 メイは左右に、ツバメは周るような動きでワニの喰らい付きをかわす。

 四足歩行で動きも早くはない。

 もはやメイには、目を閉じていても避けられそうな攻撃だ。

 そしてメイの動きを参考にしているツバメも、回避中心なら当たる気がしない。


「いいわ! 二人ともありがとう!」

「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】」


 レンの言葉に、二人は同時に跳んで場を開ける。


「さあいくわよ! 【ダークフレア】!」


 一応辺りに目撃者がいないか、気にしながら使う新スキル。

 収束する黒の粒子は、ワニたちの中央に炸裂。

 輝く闇色の炎によって起きた爆発が、ブラックアリゲーターをまとめて消し飛ばした。


「……高火力です」

「レンちゃんすごーい!」


 これまで以上に派手な演出が、そのパワーを物語る。

 杖を下ろし、楽しそうに笑うレン。


「『ため』と演出のダークさが気にかかるところだけど、威力は十二分ね」


 そこはゲーム好き。

 しっかり試して、使うべき時に使う覚悟はつけていくのだった。

 だがこのクエストはまだ、終わったわけではない。

 第二陣のワニたちが、一斉に川からあがってくる。

 商隊メンバー、そして荷積みのラクダたちにもHPゲージが存在するところ見ると、どうやら防衛クエストのようだ。


「【アクロバット】!」


 新たな三匹のブラックアリゲーターによる飛び掛かりを、難なくかわす。

 するともう一段階、早い動きで喰らい付きにきた。

 これも危なげなくかわすと、ワニはそのまま高さ数メートルになるサボテンを豪快に食いちぎった。


「お借りします!」


 メイはすぐさま、倒れたサボテンを両手でつかむ。


「あいたたた」


 チクチク感を覚えながら放つのは、全力の振り回しだ。


「いっくよー! チクチク【フルスイング】だー!」


『オブジェクト振り回し』による豪快な薙ぎ払いが、ブラックアリゲーターたちを弾き飛ばす。

 高すぎる【腕力】によって転がされた個体は、別のワニたちを巻き込み衝突ダメージを与えた。


「斬新な全体攻撃ねぇ」


 感心したように笑うレン。

 こうしてHPを減らしたワニたちのもとに、迫るのはツバメ。


「【電光石火】!」


 駆け抜ける一撃で打倒し、即座に振り返る。


「【アクアエッジ】【四連剣舞】!」


 攻撃範囲を伸ばした四連撃で、さらに敵の数を減らす。


「いくよー! そーれっ【フルスイング】っ!!」


 一方メイは、まるで掃き掃除のようにワニたちを弾き飛ばしていく。

 そしてゴロゴロと転がっていったワニの塊に向けて放たれるのは、黒の爆炎。


「【ダークフレア】!」


 収束する黒い粒子の爆発が空気を揺らし、川を大きく波打たせる。

 青空を焼く黒の炎は、ワニたちを一瞬で霧散させた。

 グランダリアを踏破するレベルの三人に、このクエストは危なげもなし。


「ありがとう、次はメイの番ね」

「はいっ!」


 現れる増援のブラックアリゲーター。

 見れば第三陣は、その数をさらに増している。

 中には一回り大きな個体も含んでおり、一気に商隊を食い潰しにきたようだ。


「よーし!」


 そんな敵の攻勢を目前に、メイは気合を入れ直す。


「それでは、いかせていただきますっ!」

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