第130話 危険へ特攻しちゃう姫

「もう三つ目のミッションだし、勝敗をつけさせにきてるわね」


 裏ヤマトの妖気町。

 姫はせわしなく辺りを見回し、隙あらば突撃を仕掛けていく。

 この姫を防衛して、裏ヤマトを抜け出すのが今回のミッションだ。


「あれはなんでしょう!?」


 さっそく走り出し、地面に描かれた五芒星の魔法陣をバシバシと踏んでみる姫。

 すると、魔法陣がまばゆく輝き出した。


「あぶないですっ!! 【加速】!」


 大きな炎が燃え上がり、ツバメは大慌てで姫に飛び掛かる。

 どうにか姫を守ることに成功したものの、ツバメのHPゲージは半分消し飛んだ。


「すごい炎! あ、あれはさっき見たやつですね!」

「見たヤツなら触る必要ないでしょう!?」


 レンがツッコミを入れるが、姫は止まらない。

 付近の灯篭をガンガン蹴り飛ばして、次々現れるヌエに「きゃああああー!」と新鮮な悲鳴を上げる。


「ちょっと、姫様めちゃくちゃ動くじゃない!」

「将軍がNPCだった時のことを思い出します……っ」

「【電光石火】【四連剣舞】!」

「【ソードバッシュ】からの【ソードバッシュ】!」

「もう、動き回らないで!」


 メイとツバメがヌエを片付けている間に、レンは姫の腕をつかむ。しかし。


「あれは……なんでしょう!」


 姫はすぐさま走り出す。


「えっ、きゃああああああ!?」


 そのまま強烈な力でレンを引きずり回し、たどり着いたのは龍の置物の前。


「これはなにかしら。えいっ」


 そして姫は、風格ある竜のモニュメントを蹴り倒した。

 すると妖しい煙が広がり、これまでのものより大きい三メートル級のヌエたちが現れた。


「ああもうっ! 【フレアアロー】!」


 慌てて魔法で応戦するレン


「加勢します!」


 そこにツバメが駆け込み、メイもやって来る。

 大ヌエは咆哮を上げ、雷光が閃く。


「よいしょっ!」

「大きいヌエは雷を落とすのね……っ」

「レンちゃん、光った瞬間に動けば回避できそうだよ」

「助かるわ!」

「さすがメイさんです。一気に片付けてしまいましょう」


 大ヌエたち相手に再び始まる戦い。そんな中。


「…………仁王像?」


 姫の興味はすでに、別のものへと移っていた。


「うーん。なんだか……作りがいまいちです。えいっ」


 なんと姫は、ここで爆破の魔法を使用。


「えっ……?」


 唖然とする四人。

 一気に燃え上がった仁王像はバランスを崩し、そのまま倒れ始める。

 そして案の定、その先には姫の姿が。


「な、何よこの歩く破壊兵器はーっ!?」

「マズいですっ」


 大型ヌエの雷を警戒していたメイたちに、姫の救出は間に合わない。


「ここは……私がああああーっ!」


 そこに駆けこんで来たのはマーちゃん。

 決死の覚悟で姫に飛び掛かる。

 直後、二人を押しつぶすようにして仁王像が地面にめり込んだ。


「マーちゃああああん!」


 思わず叫んだレンは、大急ぎで仁王像の裏側へ回る。


「あ、あぶなかったです……」


 そこには姫と共にギリギリのところで仁王像をかわし、安堵の息をつくマーちゃん。


「よかった……」


 レンも思わず胸をなでおろす。


「でも、本当に助かったわ」


 するとマーちゃんは、かすかに笑みを浮かべた。


「……今年こそ勝ちたいんです。皆さんと一緒に」

「マーちゃんすごーい!」

「助かりました」


 口々に、決死の救出劇を称えるメイたち。

 だがしかし、それでも姫は変わらない。

 起き上がるや否や、新たな仕掛け目がけて走り出す。


「…………メイ、もういいわ。やっちゃって」


 そんなマーちゃんと姫を目の前にして、冷静に告げるレン。


「りょ、りょうかいですっ!」

「あれは何かしらー!」


 駆けていく姫、メイはその背に向けて――。


「がおおおおっ!」

「きゃあああああああーっ!?」


 ここで『保護対象』にまさかの【雄たけび】をぶちかますメイ。

 姫、ド派手に転がり倒れ伏す。


「【耐久】のない姫様はこうなるわよね。でも……【雄たけび】にダメージはない」


 ものすごく冷静に言い放つレン。


「今です! 【電光石火】!」

「【連続魔法】【ファイアボルト】」


 吹き飛んだ姫が目を回している間に、残った大型のヌエを倒していく。


「……あの祠、宝珠を取ったらどうなるのでしょう!」


 それでも姫は立ち上がる。

 そして新たな仕掛けに目を付けた。


「メイ……あっちも使っちゃって」

「りょうかいですっ」


 駆け出す姫の足元に、種を放り投げるメイ。


「大きくなーれっ!」

「きゃあああああああああ――――っ!?」


【密林の巫女】の発動と同時に、足元から一斉に生える低木のツル。

 ものすごい速度で姫にからみついていく。

 ほどなく、めちゃくちゃに縛り付けられ、身動き一つ取れない姫のでき上がり。

 それでも、HPゲージの減少は……なし。


「……ダメージさえ与えなければいいのよ。ダメージさえ、与えなければね」


 救出さえできれば、見た目は多少汚くなっても構わない。

 レンは冷静に言いながら、大型ヌエの一団を爆炎で吹き飛ばした。

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