第125話 新たなミッションです
『――――おめでとうございます。賞品は【ターザンロープ】三つです』
【ターザンロープ】:木々はもちろん建物にも、狙った場所に巻き付く移動用アイテム。
「…………」
「あれ、かなり便利なアイテムっぽいですよ?」
ミニゲームをクリアして、得られた特殊アイテム。
なぜか無言のメイに、マーちゃんは首を傾げる。
「アーアアー! からのバナナはもう、最強ですね……」
「アーアアーは絶対ダメ……アーアアーは絶対ダメ……っ!」
自分に強く言い聞かせるメイ。
そこに、運営から新たな指示がくだる。
『――――ヤマト天地争乱。両軍に新たなミッションが発令されます』
『先ほど『宝珠』を持ち出したため、城には妖気があふれ出しています。魔よけの彫像を安置してください』
『ヤマトのどこかにあるキツネ型の彫像。これを手に入れられなければ、あふれた妖気によって軍は全滅となります』
「これ、マズいですね」
新たな指令を聞いて、マーちゃんが悩み出す。
「まだまだ天軍は数が多く、それだけ物を探すミッションには強いはずです。こっちの彫像の場所にもすぐに気づくでしょう。そうなれば当然、地軍側の彫像を壊しにくるはずです」
「メイ自身を倒せなくとも、彫像を壊されたら終わりなのね」
「はい……本当に不利が過ぎますね。状況は厳しいですが、こうなったら地軍も多少バラバラになってでも彫像探しに集中しましょう……!」
そう言ってマーちゃんは、大急ぎで地軍の仲間に作戦を伝えにいく。
「待って」
レンが、急ぐマーちゃんに制止を促した。
「一応、試して起きたいことがあるの」
「試しておきたいこと、ですか?」
「天軍は数がいるから彫像探しにかける人数も多いし、情報も早く伝達される。でも、こっちにもそういう『情報』をくれる仲間はたくさんいるかもしれない」
「仲間がたくさん……?」
不思議そうにするマーちゃん。
レンは静かに耳をすます。
「ピーヒョロロ」
聞こえて来たのは、トビの声。
「あっ! そういうことだねっ!」
レンの思惑に気づいたメイは、さっそく欄干へと駆け寄っていく。
「おーい!」
ヤマトの空を、くるくると舞うトビたち。
メイがぴょんぴょん飛び跳ねながら手を振ると、一斉にやってきた。
「……鳥が、メイさんの呼びかけに応えた? 一体どういうことですか?」
普段、街や自然を飾るモブとしか認識していない鳥が集まってきたことに驚く。
スキル【自然の友達】は、風景の一つでしかないはずの動物が味方になってくれる変わり種スキルだ。
「キツネの彫像がある場所を探してるんだけど、どこかで見かけなかった?」
メイがたずねると、さっそく一羽のトビがヤマトの街目がけて飛び立っていく。
「あの子、心当たりがあるみたい!」
メイは【遠視】で、飛び立ったトビの行き先を凝視する。
「メイさん、これ使ってください」
「……ここ! ここのお寺に何かあるみたい」
ツバメが用意したヤマトのマップに、メイが指をさす。
「早かったわね。それじゃさっそく向かいましょうか」
「りょうかいですっ!」
「はい」
「で、では、私はまた地軍プレイヤーを集めてオトリになります。少しでもメイさんたちの方に向かう天軍の数を減らせれば」
「はいっ! よろしくお願いしますっ」
元気に応えたメイはそのまま、軽やかに欄干の上にあがる。
「それでは、いってきます!」
そう言ってニコッと笑うと、そのまま外へと飛び出して行った。
続くレンも笑みと共に手を振って、ツバメに至ってはぺこりと頭を下げたまま飛び降りる。
「……だ、誰一人階段を使わないんですね」
欄干から飛び降りて行ったメイたちに、少し唖然とするマーちゃん。
しかしすぐに思い出したかのように、階段を駆け降りていくのだった。
「【バンビステップ】!」
メイは【鹿角】装備で、ヤマトの屋根を駆けていく。
今回は天軍も『彫像探し』を優先しているせいか、地軍将と気づかれることなく目的地へとたどり着いた。
「ここだね」
降り立ったのは、大きな敷地を持つ寺社。
「ありがとー」
頭をそっと撫でると、先行していたトビは得意げに翼を広げて空へと帰っていった。
メイは目前の門に、ゆっくりと手を伸ばす。
「……地軍将だ」
「あっ」
そこに現れたのは、四人組の天軍プレイヤーたち。
「ここが彫像のありかだ! 急いで味方に伝えるぞ!」
そう言って、バラけるように走り出す。
「【電光石火】!」
念のため距離を取っていたツバメが、先頭を斬り捨てた。
「【ソードバッシュ】! からの【バンビステップ】!」
「「うおおおお――――ッ!?」」
続く二人を、大急ぎで吹き飛ばす。
しかし最後の一人は、速さに自信あり。
ツバメの【アクアエッジ】を喰らったものの、加速スキルで一気に距離を取り――。
「そうは……いかないわっ」
「ぐふっ!」
【浮遊】を切って落下してきたレンに杖で叩かれ、退場となった。
「ふう。さ、いきましょうか」
「さっすがレンちゃん!」
こうして三人は無事、彫像の置かれた寺社へと入り込むことに成功した。
「おじゃましまーす!」
◆
「今度は私がグラムについて行くよ」
ミッションへと向かうグラム。
同行を名乗り出たのはローランだ。
ヤマトの地図が頭に入っているローランは、探しものにはもってこいだろう。
余裕の足取りで階段を下りて行く、グラムとローラン。
二人を見送った金糸雀は、「んー」とわずかに考える。
「そういうことなら、あたしは地軍狩りにでも行ってくっかなぁ」
欄干から街を見下ろして、楽しそうに笑った。
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