第103話 嫁入り行列防衛戦です!

「【フレアバースト】!」


 頭上を爆炎が飛び、大量のタヌキが宙を舞う。

 そんな中でも嫁入り行列は、ゴールの鳥居に向けて堂々と歩を進めていく。


「【電光石火】! 【アクアエッジ】!」


 行列の左側から来るタヌキたちは、魔法だけではさばき切れない。

 逃した個体は、ツバメが追討することでクリア。

 そして右側から来る分身タヌキたちは、メイの早く強力な攻撃に吹き飛ばされる。


「レンちゃん! おっきいタヌキが来たよー!」


 レンが付近を見回すと、三メートル級の大型タヌキが五体ほど。

 嫁入り行列に向けて突進していく。


「【フレアアロー】!」


 炎の矢がさく裂するが、その動きは止まらない。


「この威力で止まらない? 【ファイアボルト】! 【フリーズボルト】!」


 しかし続けざまに放った炎と冷気が直撃すると、大型タヌキはその姿を消した。


「メイ、ツバメ! 大型はダメージ量関係なく三発当てれば消えるわ!」

「りょーかいですっ! 【バンビステップ】! 【ソードバッシュ】からの――――とつげきー!」


 先に子タヌキたちを剣技で消し、大タヌキは一度弾き飛ばしておく。


「【投石】からの【投石】だーっ!」


 ネタが分かってしまえば、メイはすぐにでも対応可能。

 すぐさま大タヌキを煙に変えた。


「さすがメイね! 【ファイアボルト】から【フレアストライク】! 【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 左側を担当するレンも、高威力魔法と連続魔法の使い分けで必死に応戦。


「ッ!」


 大タヌキの背後に隠れていた子タヌキたちの虚をつく突撃は、すぐさまツバメが対応。


「【紫電】【アクアエッジ】」


 範囲攻撃で見事に掃討してみせた。


「あっぶない! ありがとうツバメ!」

「はいっ」


 ツバメは【グランブルー】を掲げ、ほほ笑んでみせる。

 するとそこに、五体の大型タヌキが列になってやって来た。


「【連続魔法】【ファイアボルト】! 【フレアストライク】! 【連続魔法】【フリーズボルト】!」

「【紫電】! 【加速】【アクアエッジ】! 【電光石火】!」

「まずっ! 何匹か抜けたわ!」


 大型を倒しているうちに、抜け出してきた小型タヌキが数匹。


「【加速】【アクアエッジ】」

「【誘導弾】【フレアアロー】!」


 嫁入り行列のギリギリ前で燃え上がる炎の矢と、空を駆る水刃。

 それでも行列は、動揺すらせず歩を進めていく。ゆっくりと。


「もうちょっと早足で行進しなさいよーっ!」


 思わずツッコミを入れてしまうレン。


「よいしょっ【ソードバッシュ】!」


 一方のメイも、五体の大タヌキを早い通常攻撃で次々に打倒。

 抜けて行った子タヌキは、普通に後を追って【ソードバッシュ】で全滅。

 まさに、鉄壁の守りを披露してみせた。


「レンちゃーん! タヌキが来なくなったよー!」


 レンの側にも、タヌキの姿はなし。


「……嫁入り行列は、終わりの鳥居にたどり着くまであと20メートルくらい。ということは」

「そういうことですね」

「メイ、後ろ後ろ」

「うん?」


 レンに言われて振り返るメイ。

 そこには、高さ10メートルを超える特大タヌキの姿があった。


「ええええーっ!?」


 行列の左右から迫る、二体の特大タヌキ。


「【連続魔法】【ファイアボルト】! 【連続魔法】【フリーズボルト】!」

「【投石】! 【投石】! 【投石】からの【投石】ーっ!」


 怪獣のように、嫁入り行列に迫る特大タヌキ。


「先行します【加速】!」


 ツバメは一気に距離をつめ、レン側の特大タヌキに連撃をくわえる。


「【バンビステップ】!」


 メイも目前に現れた特大タヌキの足元へ。


「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチ! パンチパンチパンチパンチー!」


 猛烈な連続攻撃で、20発もの攻撃を叩き込む。

 すると特大タヌキは、ボンと大きな煙に変わった。


「やったあ!」


 拳を上げるメイ。しかし。

 その中から、大量の子タヌキがあふれ出してきた。


「え、ええええええええ――――ッ!?」

「ツバメ待って! 魔力を溜めさせて!」


 メイが先行したおかげで、次の手を知ることができた。

 レンの言葉に、ピタリと攻撃の手を止めるツバメ。


「【魔眼開放】【コンセントレイト】…………いいわ、お願い!」

「【電光石火】! 【アクアエッジ】!」


 連撃を喰らい、弾ける特大タヌキ。

 直後に子タヌキたちが、滝のような勢いであふれ出る。


「【フレアバースト】!」


 その発生際を叩き、一気に数を減らすことに成功。


「【アクアエッジ】! 【加速】【アクアエッジ】! 【紫電】っ!」

「【フリーズブラスト】! 【フレアストライク】!」


 レンとツバメは、一気に畳みかけにいく。


「【電光石火】!」

「ああもう、魔法が間に合わないっ!」


 真横を通り過ぎようとする子タヌキを、レンはもうシンプルに【銀閃の杖】で引っぱたいた。

 それでもまだ、子タヌキはその数を残している。


「【ソードバッシュ】!」


 一方メイは、子タヌキの群れに剣撃を叩き込む。

 飛び掛かってくる子タヌキたちは――。


「【キャットパンチ】! パンチパンチパンチからの――――【ソードバッシュ】!」


 近くの個体を早いパンチで倒し、離れた個体は剣技で吹き飛ばす。

 その隙に抜けて行った子タヌキたちには、振り返り様の【雄たけび】


「がおおおおーっ!」


 転がる子タヌキたちを、後は【ソードバッシュ】で払うだけ。

 ――そんな中。

 こっそり距離を置いた木陰を駆ける一匹の子タヌキがいた。

 いやらしい仕掛けの伏兵は、しかし。


「【投石】っ」


【遠視】がしっかり捉えていた。

 軽く放った石が大きな放物線を描き、見事最後のタヌキを煙に変える。


「やったあ!」


 メイは無事、行列右側のタヌキをさばいてみせた。


「行かせませんっ!」


 子タヌキは行列の目前まで到達。

 だが行列に向けて放つ攻撃は、狐たちにダメージを与えてしまう。


「こ、こうなったら……【加速】っ!」


 ツバメは地を駆け、タヌキに直接飛びついた。

 行列最後尾に突撃しに来た二匹の子タヌキの後ろ足を、どうにかつかむ。


「ここは通さないわ!」


 同じく行列目前。

 飛び掛かってくる五匹の子タヌキ。

 もはや魔法でさばける状況ではない。

 レンは杖をしまうと、両手を開く。


「こうなったら最後の手よっ!」


 そしてそのまま、子タヌキたちをまとめて身体で受け止めた。


「レンちゃー……ん?」


 さっそく手伝いに来たメイの目の前には、タヌキまみれになった二人の姿。


「……ぎょ、行列は無傷です」

「一匹たりとも通さないわ」

「す、すごい……」


 身体でタヌキを止める二人の迫力に、思わずメイは息を飲んだのだった。

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