第98話 土蜘蛛と戦います!
犬神に逃げられたブラック陰陽師からクエストを受けたメイたちは、ヤマトの東側へ。
山沿いに建つ寺社を眺めつつ、背の高い杉が立ち並ぶ林の中へと歩を進める。
「霧が立ち込めてきたね……」
怪しい雰囲気に、ちょっとワクワクしてくるメイ。
尻尾がブルブルと震え出す。
「この辺、蜘蛛の巣でいっぱいだ」
すると次の瞬間、林立する杉の巨木に一斉に飛び散る白い糸。
一瞬にして、場を区切るように巣が張り巡らされた。
「きたっ!」
土蜘蛛が木の上から飛び降りてくると、地面が揺れた。
その自動車並みの体躯を走らせ、メイに飛び掛かってくる。
「よいしょっ!」
前足を使った攻撃を、メイは身体を左に倒すことでかわす。
すると土蜘蛛はその場で、砂煙をあげながら一回転。
「【アクロバット】!」
メイはその場で後方回転し、衝突ダメージを回避する。
すると土蜘蛛は大きく跳び上がり、そのまま樹上へ。
「そういうことなら――――」
「メイ、ちょっと待って!」
土蜘蛛を追って樹上へ向かおうとするメイを、レンが引き止めた。
「樹に登るってのは少しやっかいだけど、そういうことなら『野性なりかけお姉さん』からもらった新スキルを、さっそく使わせてもらうわっ」
そう言ってレンは【銀閃の杖】を構える。
「いくわよ【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」
杖から放たれた三つの炎。
それを見て土蜘蛛は、木の陰へと逃げていく。
しかし三つ全ての炎が土蜘蛛の後を追い、見事にさく裂した。
「すごーい!」
舞い落ちる火の粉を見て、思わず拍手をするメイ。
「もう一発! 【誘導弾】【フレアアロー】!」
なおも逃げようとする土蜘蛛に向けて放たれた追撃の火矢も、緩やかな弧を描いて直撃。
炎に包まれた土蜘蛛は樹上から落下し、落下ダメージを受けた。
「追尾とまではいかなくても、大まかにでも追いかけてくれるのは助かるわね。本来回避がやっかいな相手でも狙いやすくなる。次は【魔砲術】と一緒に使ってみたいところね」
「【アクアエッジ】」
そこへ続くのはツバメ。
水の刃が土蜘蛛の脚を斬りつける。
「ッ! 【フリーズボルト】!」
さらに冷気が土蜘蛛を襲い、飛び散る飛沫を凍結。
キラキラと舞う氷片の中、残りHPが半分ほどになった土蜘蛛はその場で身体を反転。
「ッ!!」
辺りかまわず白糸塊を乱発し始めた。
白糸塊は弾けると、そのまま大きなクモの巣となる。
「勢いが……すごいですっ」
怒涛の糸攻撃を、必死にかわすツバメ。
足元や木々の間に広がる巣は、触れれば絡みつくやっかいな障害物だ。
自由が利く場所は、ドンドンその面積を減らしていく。
「まずっ!」
そんな中、レンはその全身を白糸に絡めとられ身動きが取れなくなった。
完全な無防備状態。
土蜘蛛は一気に樹上へ上がると、そのままレンに飛び掛かる。
「【アクアエッジ】!」
これをどうにか、直前でツバメが弾き飛ばした。
すると反撃とばかりに放たれた白糸が、ツバメに襲い掛かる。
「させないよっ!」
メイはこの白糸塊を斬り払いにいくが――。
剣にぶつかった瞬間に巣が開き、メイはそのままぶ厚い白糸に全身を飲み込まれてしまう。
「うわー!」
「メイさんっ!」
「もがいてください! もがけばそれだけ早く――」
バリバリバリッ!
「……ん?」
即座に蜘蛛の巣が弾け飛び、首を傾げるツバメ。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
この隙にどうにか蜘蛛の巣から抜け出したレンが放つ魔法。
土蜘蛛はすぐさま樹上に逃げる。
「なるほど。蜘蛛の糸からの脱出速度は【腕力】の数値に関わってるのね。やっかいな攻撃なのは間違いないし、反撃をもらいそうになると樹の上に逃げるってのも面倒。でも……」
そう言ってレンが視線を送ると、その狙いを察したメイはピッと可愛く敬礼して見せた。
「おまかせくださいっ!」
メイが『好きなタイミングで糸から脱出できる』と分かった時点で、三人が同時に対策を思いついていた。
「さ、いってみましょうか」
「りょーかいですっ!」
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
レンの放った炎を、樹から樹への跳躍でかわす土蜘蛛。
そしてすぐさま放たれる、無尽蔵の白糸。
「【跳躍】」
「あっぶな!」
これを後方への跳躍でかわすツバメと、決死の横っ飛びで回避するレン。
そんな中、駆け出していたメイだけが蜘蛛の巣に直撃。
罠にかかったメイを見て、土蜘蛛は即座に樹上を移動。
そのまま空中へ身を投げた。
狙いはもちろん、メイへの飛び掛かりだ。
「……メイ、今よ!」
「待ってました!」
バリバリバリッ!
メイは攻撃を受ける直前で、蜘蛛の糸を破り捨てた。
落下中。しかも攻撃モーションに入ってしまっている土蜘蛛はもう止まれない。
「【アクロバット】!」
華麗な後方回転で土蜘蛛の飛び掛かりを回避すると、着地と同時に剣を引く。
「いくよー! 必殺の【ソードバッシュ】だぁぁぁぁ!!」
放たれる猛烈な衝撃波に、付近の杉が大きく揺れる。
直撃を受けた土蜘蛛は粒子となり、差し込んで来た陽光が霧を晴らしていく。
「メイがオトリになるやり方は、ヒット&アウェー系の敵には効果抜群ねぇ」
パチンと軽く音を鳴らして、ハイタッチ。
「それに、この戦いでいくつか面白そうな要素も見つかったわ」
レンはうれしそうにほほ笑んだ。
「……ん?」
そんな中、不意にメイの【遠視】が違和感を捉える。
土蜘蛛のいなくなった杉の陰、そこから一匹の白犬がこちらを見つめていた。
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