第85話 スケルトン海賊団です!

 エレベーターから降りて来た海賊船。

 接岸と同時に、数十体の海賊スケルトンが襲い掛かってきた。


「【バンビステップ】!」


 先陣を切るのはメイ。

 これだけの敵の数にも、まるでひるまない。

 速い足の運びで一気に距離をつめると、剣を引き抜いた。


「【ソードバッシュ】!」


 横なぎの【ソードバッシュ】で、10体のスケルトンをまとめて吹き飛ばす。


「【電光石火】!」


 隙間を抜けて来た海賊スケルトンは、ツバメが早い攻撃で打倒。

 前衛の見事な戦いぶり。

 最後方に位置したレンはゆうゆうと杖を掲げる。そして。


「【フレアバースト】!」


 骨密度の高いところに爆炎を放り込む。

 海賊スケルトンたちが、まとめて消し飛んだ。


「この数相手でも、メイが先頭にいてくれれば問題なしね」

「レンちゃん!」

「了解っ!」


 メイの呼びかけに、すぐさま頭を下げる。

 すると放たれたクロスボウの一撃が、頭上をすり抜けていった。


「ありがとメイ! 【フレアアロー】!」


 見事な反撃を決めたレンに「やったあ!」とサムズアップしたまま、海賊スケルトンの曲剣をかわすメイ。

 繰り出す早い反撃で、敵を返り討ちにする。


「おっと!」


 そこに、一際豪華な剣を持った海賊剣士が飛び掛かって来た。


「よっ、ほっ」


 続く振り下ろしからの斬り上げを、メイはわずか二歩の後退で回避する。

 ここで海賊剣士は、手にした剣を高く掲げた。

 同時に発動するライトエフェクト。


「おっとととー!」


 大きな斬り上げをかわすメイ。

 そして、海賊剣士が放った衝撃にハッとする。


「今の……【ソードバッシュ】だー!」


 まさかの基礎スキル仲間を見つけて、ちょっとはしゃぐ。


「それならこっちも! 【モンキークライム】!」


 テンションの上がったメイは、勢いに任せて海賊船のマストを駆け上っていく。

 そのまま柱を蹴り、中空へと躍り出た。


「いっくよー! 【アクロバット】からの――――!」


 そのまま華麗に一回転。


「ジャンピング【ソードバッシュ】だああああーっ!」


 駆け抜ける猛烈な衝撃波。

 海賊剣士はその驚異的な威力の前に、粒子となって消えた。


「【加速】」


 ツバメはスケルトンたちを引き付ける。


「【跳躍】」


 そしてそのまま、並んだ海賊船のもとへ。


「【跳躍】……【加速】【跳躍】」


 船から船へと跳躍し、短い距離を駆けてまた跳躍。


「【加速】【跳躍】」


 そして大きな跳躍で海賊船を離れたところで、十分に引き付けた海賊スケルトンたち目掛けて――。


「【フレアバースト】!」


 レンの放つ爆炎。

 強烈な爆発が、スケルトンたちを消し飛ばす。


「いい感じじゃない。これならすぐに…………とはいかないわね」


 いよいよ数を減らしてきた海賊スケルトンたち。

 メイの【ソードバッシュ】が残りを一掃すると、最後に船から降りて来たのは、羽付きの海賊帽に紅色のマントを身につけた大物。

 船長スケルトンは、手にした宝玉付きの杖を掲げた。

 豪炎が、一直線に地を駆けて来る。


「【ラビットジャンプ】!」


 迫る炎を大きなジャンプでかわしたメイは、一気に突撃を仕掛けにいく。


「【ソードバッシュ】! ……あれっ?」


 しかし船長スケルトンは、滑るような挙動と共に姿を消した。

 次の瞬間現れたのは、十メートルほど離れた船の前。

 再び杖を掲げると、頭上に光が瞬いた。

 直後、氷の矢が雨のように降り注ぐ。


「【バンビステップ】!」


【フリーズアローレイン】は、やっかいな範囲魔法。

 通常ならギリギリでダメージを受けてしまうところだが、【野生回帰】による【敏捷】の向上が、攻撃範囲からの脱出を間に合わせる。


「やああああーっ!」


 メイはそのまま剣を振り抜く。

 しかし船長スケルトンは再び、ぬるっとした瞬間移動で逃げおおせた。

 掲げる杖、揺れ出す足元。

 突然、足元から岩が突き上がってきた。


「【跳躍】!」

「【ラビットジャンプ】!」


 初見の魔法に、慌てて空中へ逃げる二人。


「次はツバメが先行して! メイはそいつが逃げた先をお願い!」

「わかりました」

「りょうかいですっ!」


【加速】で一気に距離をつめたツバメが放つ【電光石火】

 船長スケルトンはこれを瞬間移動でかわす。


「短距離の瞬間移動。なかなか面白い戦い方だけど、クールタイムはどうかしら?」


 メイは船長が現れるや否や【バンビステップ】で追いかける。

 放つ横なぎを、船長はギリギリで逃げおおせた。


「なるほどね。この感じだと次の移動先はこの辺かしら? 【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 予想は的中。

 三度目の瞬間移動は間に合わず、三発全てのファイアボルトが直撃した。

 船長スケルトンは大きく体勢を崩す。


「いいスキルだけど、邪魔された時の反動は大きいのね」


 すでにメイは、走り出していた。


「今度こそ【ソードバッシュ】!」


 しかしここで船長が発動したスキルは、HPを1だけ残して即死をまぬがれるもの。

 船長スケルトンは、またも瞬間移動による回避を試みる。


「間に合いました」


 駆け抜けていく二刀流。

 瞬間移動の直前に、【電光石火】がゲージを削り切った。

 船着場にまた、静寂が戻ってくる。


「ツバメちゃんありがとー!」

「スケルトンはこれで打ち止めかしらね。さあ、船の探索に向かいましょう」


「やったね!」と親指を上げてみせるメイに、ツバメも少し恥ずかしそうに応える。

 こうして海賊団を見事に打ち倒した三人は、さっそく船に駆け出した。

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