第65話 まさかの再戦!?

「【ファイアウォール】!」


 乱戦にまぎれて迫ってくる剣士たちを、炎の壁でけん制する。


「【電光石火】」


 その隙を突き、ツバメが斬り掛かる。


「【紫電】」


 さらに動きを止め、【二刀流】による連撃を決めたところで――。


「【フレアバースト】」


 まとめて一掃。


「切りがないわねぇ」


 レンの視線の先には、新たに駆けつけて来る戦士たち。


「ここからまとめて吹き飛ばすのはどうですか?」

「……ツバメは大人しそうな顔して、時々とんでもない大胆さを発揮するわね。宝珠を提出に行くだけのプレイヤーだったら申し訳なくない……?」

「問題ありません。確実に強奪狙いの人たちです」


 見れば戦士たちの先頭にいたのは、前にツバメが見つけた物騒な四人組だった。


「そうなの?」

「はい」

「そういうことなら。【魔砲術】【フレアストライク】!」


 巻き起こる盛大な爆発。

 見事に、最後の混戦による略奪を狙うプレイヤーたちを吹き飛ばした。


「前回のバトルロワイアル以来だな……」


 一方、メイの前に立ちふさがったのは、前回のバトルロワイアルで戦った元優勝者。


 猛者たちを引き連れ、【ソードバッシュ】や【雄たけび】対策を伝えたのも、打倒メイに燃えるこの男だ。


「はいっ! こんにちはっ!」


 戦友との再会に楽しそうなメイ。


「さあ、二度目の勝負だ! 今回は全力でいかせてもらうぞ! ――――野生児メイッ!」

「や、野生児ではございませーん!」


 意外な掛け合いからスタートを切る戦い。

 駆けこんで来た全身鎧は、二度の攻撃をかわされると両手剣を高く掲げた。


「【一刀両断】!」

「よいしょっ」


 メイがこれをかわすと、砂ぼこりが巻き上がる。

 それでも全身鎧は手を止めない。


「【大波紋斬り】だああああー!」


 付近一帯を薙ぎ払う強烈な一撃。


「【ラビットジャンプ】!」


 怒涛の必殺スキル構成。

 しかしこれもメイは、大きな後方へのジャンプでかわす。

 立ち込めたままの砂煙。

 全身鎧が足を引いた際に出た音を、メイの【聴覚向上】は聞き逃さない。


「とつげきー!」

「うおおおおっ!?」


 煙を割って飛び出して来たメイが、【鹿角】で全身鎧を突き飛ばした。

 すぐさま追撃に向かうメイ。


「させるか! 【大波紋斬り】!」

「うわっと!」


 広がる衝撃波を、身体を伏せることでやりすごす。


「あぶなかったぁ」


 息をつくメイ。


「勝機!」


 すると全身鎧は大きく脚を曲げ、跳躍した。


「行くぞォォォォ!!」


 予想以上に高い軌道で、剣を掲げた重装戦士が跳んで来る。

 その猛烈な勢いを前に、メイはレンからもらった『種』を手に取った。そして。


「おおきくなーれ!」


 発動する【密林の巫女】

 次の瞬間、メイが手を突いた地面から三本の樹が一斉に伸びあがる。


「なっ!? 木が、生えたぁぁぁぁ!?」


 突然町中に現れた三本の高木は、迫る全身鎧を弾き返した。

 衝突ダメージと落下ダメージの両方を喰らい、そのまま倒れ込む。


「い、いきなり地面から木を生やしたぞ!!」「なんだよあれ!」「初めて見た……!」


 今回も無事、メイの異常さにざわつく観戦者たち。


「いっくよー!」


 メイは【バンビステップ】で一気に距離をつめていく。


「くっ、いいだろう! ならばここで勝負をつけてやるっ!」


 全身鎧は、新しい剣を取りだした。


「バフスキル【パワーライズ】をもらった状態でさらに【気合溜め】を乗せ、この両手剣【ヘビーストライカー】で放つ必殺の一撃。これが俺の最終奥義だ!」


 そのアイテムスキルは、武器の破壊と引き換えに放つ一撃必殺。

 対メイ用に持ち込んで来た、奥の手だ。


「いくぞォォォォ! 【ファイナルブラスト】――――ッ!!」

「わあ! すごーい!」


 エフェクトのド派手さに思わず感動の声をあげたメイは、「それならっ」と【王蜥蜴の剣】を掲げる。


「【トカゲの尻尾切り】だーっ!」


 身代わりスキルの発動と共に、メイの手から【王蜥蜴の剣】が弾け飛んだ。


「……お、俺のとっておきが、相殺されただとォォォォ!?」


 まさかの事態に唖然とする全身鎧。

 メイはこの隙を逃さない。


「【ラビットジャンプ】! からの【アクロバット】!」


 そのまま高く跳び上がり、空中で一回転。


「くるぞ!」

「ああ、くるっ!」


 期待の声をあげる観戦者たち。


「ジャンピングー!」

「ジャンピングー!?」

「【キャットパンチ】だああああー!」

「「「猫パンチ!!」」」


 思わぬ一撃に体勢を崩す全身鎧。

 メイは止まらない。


「からの…………パンチパンチパンチパンチパンチパンチ」


 一撃でもらうダメージは、ゲージの約5%ほど。

 しかしそれも、猛烈な連打によってウソのような速度でゲージを削っていく。


「パンチー!!」


 放たれる決めの一撃。


「これが……さらなる進化を遂げた……野生の力か……ぐふっ」


 全身鎧は、ゆっくりと倒れ込んだ。


「……ボスキャラみたいな倒れ方をしたわね」

「負け様まで、しっかり計算されてます」


 見せつけるような倒れ方をする全身鎧に、思わず感心してしまうレンとツバメだった。



   ◆



「はい! 確かに宝珠セット受け取りました!」


 見事、混戦を乗り越えたメイたちの前に立てる者はいなかった。

 三人はそのまま01番倉庫へ。

 受付をしていた運営のお姉さんは、すぐにプレゼントボックスを持ってやって来た。


「レンさんはこちら、ツバメさんはこちらです」


 受け取ったボックスを手に、二人はすぐにメイのもとへ。


「そしてメイさんにはこちら」

「やったー!」

「スキル書になります!」

「やったー!」

「メイさんにぴったりな一品ですよ!」

「やった……えっ?」


 お姉さんの発した『メイにぴったり』という言葉に、ビクリと身体を震わせる。

 身を寄せて来るレンとツバメ。

 受け取ったスキル書の説明に、メイは恐る恐る目を向ける。



【野生回帰】:文明の産物である『防具』を脱ぎ去ることでステータス向上。各値が15%上昇するが【耐久】は変わらない。



「や、やっぱり――――ッ!!」


 野生は、忘れた頃に追ってくる。

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