第126話 まずはこの曲から!!

「...よし」


もうすぐ始まるライブの為に今一度モーショントラッキング装置を付けなおす。

最後に手袋型のそれを取り付けて、手首の具合を確かめながらゆうきは小さく意気込んだ。


「つけ終わったかい?」


「はい!」


3Dを担当するスタッフから声を掛けられたゆうきは、さっきとは違い元気に返事を返した。


「ちゃんと作動しているか確認するから少し待っててね~」


ややあってすべての装置が作動していることが確認できた。

丁度そのタイミングで他のみんなの準備も整ったようだ。


「柊さん、本番まで後どのくらい?」


「予定通りなら10分ほどで始まります」


「りょーかい」


いつも通りに伸びた返事を返す莉奈。

だけどその表情はすっかり真面目モードだ。


「よーし、あと少しで始まるから、お茶や水を今のうちに少し飲んでおけよ~本番中は基本飲めないからな~」


りんとがそう呼びかけると、念のためと水分を皆口にする。長机にまとめて置いてあるので必然とみんながそこに集まる。トラッキング装置は古いながらも確実な方法を取っているのでみんな全身黒一色。髪とかが邪魔にならないように纏めているので中々シュールな絵面になっている。


そんなことを考えているうちにライブ開始2分前。


みんなそれぞれ息を整え、ライブの緊張に備える。そうしている間にとうとう開始時刻になった。


◇◇◇


ライブ会場はしっかりと満員になっており、そこに詰めるファン達はスタートを今か今かと待っていた。


元々薄暗かった会場内の照明が通路の足元に設置された間接照明に切り替わる。


とうとうライブが始まる。その合図だった。

それに若干ざわつくが、明るくなったステージ中央に皆が注目して瞬時にそれは収まる。


次の瞬間、その場所にメンバー全員が現れた事で会場は一気に盛り上がる。


そのあと前触れなしに曲が始まったので準備が遅れたファンは慌ててペンライトを構える。


しかもイントロこそ発表済みの曲に酷似していたが、すぐに誰も聞いたことのないメロディーに変わる。


それにまた会場は驚きと期待で盛り上がった。


<アイン>『さあさあさあ!ようやく始まりました、【future!feat.Second Production】!色々話は後にして、まずはこの曲から!』


いつも通り元気に話すアインに彼女の色であるウィスタリアに光るペンライトが振られる。



こうして歌声とペンライト、そして声援で彩られるセカプロ初の全体ライブイベントが幕を開けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る