第116話 話し合い——②
「話し合いっていうよりさ、なんていうか...秘密を打ち明けないかな?」
急にゆうきがそう言った。
「どういうことなの?」
蒼が疑問に思いゆうきに聞く。
それにゆうきは少し悔しいような表情をして答えた。
「...今回のこともそうだったけどさ、ボクっていろんなことを知らなかった。母さんの病気のことだって、この家のことも、父さんの仕事のことも。そのおかげでこういう事が起きているかもしれないんだよ?だったら...可能な範囲でいいからボクに教えてよ?だって、家族でしょ?...秘密ばかりじゃ、いやだよ」
哀しいともいえるような表情でゆうきは三人にそう言った。
それを聞いた三人も黙ってしまう。それはそれぞれに思い当たる節があるのだろう。
りんとは事務所のことを。
恵子は病気のことを。
蒼は家のことを。
それぞれが大きな秘密を隠していた。しかもその大半がゆうきが関わることだった。
確かに秘密にしておくべきこともあったりするとは思うが、ここまで秘密にされていいと思う人は少ないだろう。
「それじゃあ、少しだけ暴露大会でもやるか!」
場の空気を明るくするためか、わざとらしく言うりんと。
蒼もクスリと笑いそれに乗る。
「じゃあ、まずは私から」
そう前置きを置いて蒼は頭を下げた。
「おととい、ゆうきのプリンを食べたのは私なの....ごめんね」
「あれお姉ちゃんだったの!?」
このタイミングで話されるとは思っていなかったのと、蒼が食べたと想像していなかったゆうきは呆気に取られて思わず反応してしまう。
「ああ~だったら俺も...」
ゆうきが蒼に反応しきる前にりんとも頭を下げる。
「え!?父さんも!?」
「こないだのコラボの時に間違えてお前のプリン食べたんだ」
「ええ!?」
この大事な場面で、二人ともゆうきのプリンを食べてしまったことを謝っているというこの状況が少しシュールにも見える。
因みに捕捉すると、ゆうきはプリンが好きなスイーツ三本指に入るほどに好きだ。
「それじゃあ次は私の番ね」
蒼、りんとときて次に秘密を言うのは恵子らしい。
「こう言って信じてもらえるかはわからないけど...私たちはゆうきを嫌ってないわ」
プリンの件からの落差で若干の戸惑いがありつつも恵子に言葉を返す。
「それってどういう...?」
「中々説明が難しいわね...」
少し時間がかかりつつも恵子はそのことについて説明した。
要するに、今の恵子はゆうき贔屓で、もう一人の恵子は蒼を贔屓していたらしい。
この時点でよくわからないが、要するに——
「ええっと...つまり?」
さっきの説明でだいぶ困惑したのか、りんとは鼻元を押さえながら聞いた。
聞かれた恵子は珍しく恥ずかしそうに言った。
「私たちはゆうきと蒼のことを愛してるけど...とある事で喧嘩してああなりました.....」
衝撃の事実である。
—— —— ——
※現実問題的に色々アレな点はありますが、あまり結びつけずにお楽しみ下さい。
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