第103話 忍びよる影

夏休み日程の配信が始まって一週間ぐらい経ったころ。


「お疲れさまでした~」


ボクたちは夏休みの終わり頃にあるイベントに向けてレッスンを受けている。記念配信の時の様に厳しめではあるが着実に成長していることを感じている。


 今日は早めに終わることができたので、軽く買い物をしてから家に帰ることにしたボクはスーパーの方に足を向ける。


 家から歩いて行ける距離にあるスーパーは安くて品質の良いものが多くてとても重宝している。その人気はわざわざ遠くからこのお店に来る人がいるほどらしい。


「えーっと、あとは...そうだ、キャベツキャベツ」


買う予定の物を思い出しながらカゴに入っている物と照らし合わせる。買い忘れがあると結構ショックだからね。


買い忘れの物をカゴに入れて再度確認していると後ろからボクを呼ぶ声がした。


「ゆうき、今帰りか?」


「あ、六条さん!はい、今日は早めに終わったので」


買い物カゴ片手に話しかけてくれた六条さん。少し見える中身から考えると自炊をするみたいだ。なんかこの様子だけでも”出来る男”感が満載だ。


「そういえばゆうきは今日がレッスンだったな...俺のを見たって面白い物なんて入ってないぞ?」


「あ、ごめんなさい!」


どうやらボクが思っていた以上に覗き見ていたらしい。


「別に莉奈と違って隠すような物じゃないから別にいいぞ?それよりも俺はゆうきが何を買うか気になるなー」


「ボクもそんなに面白い物無いですよ~」


そう言ってボクは軽く笑う。


六条さんはボクのカゴ中身を一瞥すると満足げに頷いた。


「しっかり自炊しているみたいだな。冷食とかにはあまり頼らないイメージを勝手に持っていたが、自分で作っていて感心したよ」


「そんなに言われると恥ずかしいですよ...」


そんな雑談をしながらボクらはお会計へ進む。


会計を済ませて買い物袋に移している時、隣で同じことをしている六条さんがこんな話を始めた。


「そういえば知ってるか?」


「何をです?」


「最近この辺りでストーカーが出ているらしい」


「た、大変ですね...」


想像していた話とは違う話題が出てきた事に戸惑いつつも頷く。


「もう何人か被害にあっているようで、被害にあった方の共通点が高校生という事らしい。お前も気をつけろよ?」


「だ、大丈夫ですよ~」


この手の話が苦手なボクは真剣に注意してくれている六条さんに笑ってごまかしてしまった。


「まあ、用心に越したことは無いからな。よっと、それじゃあ俺はこれで」


「あ、お疲れさまです」


六道さんはそう言って買い物袋を提げて店を後にした。


「...ボクも帰るか」


移し終わったボクもその店を後にして家に向かう。


◇◇◇


夏になり、日が伸びたおかげでもう7時頃だというのに振り返る空は若干明るい。


日中もこのくらい涼しいといいんだけどなぁ~


そんなことを考えながら帰路をたどっていると後ろからコツコツという足音がする。


さっき六条さんがああいっていたことを思い出して余計恐怖心をかきたてる。


なるべく気にしないように歩いてみたが徐々に足音は近づいてくる。ふと地面を見てみると、ボクの隣にもう一つ影が見える。


驚いて後ろを振り向いてしまったボクはそのと対面してしまった。


そしてその黒い誰かはこう言った。


「見つけた」


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