第95話 モデルさんってすごい!

「これから始めるけど、こっちが言ったポーズをしてもらうだけだからそんなに難しく考えなくていいよ!笑顔だけは忘れないでね!」


平野さんは優しくそう言いファインダーを覗く。


「そんなに緊張しなくて大丈夫よ、確かに照明とかいっぱいあるけど...あれは全部機械だからね!あ、疲れた時は遠慮せずに言ってね?時間はいくらかかってもいいから」


隣に立つヒナさんも優しくボクに言ってくれた。


「じゃあまず最初は...」


そうして約40分ほど撮影が続いた。


◇◇◇


「さてと、大体撮り終わったね...ゆうき君は疲れてないかい?」


ファインダーから目を離して一息ついた平野さんがボクに聞いてくれる。


「だ、大丈夫です!」


「本当?無理してない?」


疲れを一切感じさせない顔でヒナさんが聞いてきた。


「休んだら多分もう無理そうなので...このまま行きます!」


正直普段しないような体勢をいくつもしたせいでもう筋肉痛のような痛みが体に走っている。


やっぱり本職はすごいなぁ


「それじゃあ後三枚だけ撮って終わりにしようか!」


「いいんですか?」


「ああ、十分なぐらい撮れているよ。だから今言った三枚は俺のわがままだ。別に断ってもらって構わないよ」


そう言う平野さんは砕けた笑みを浮かべて提案してくれた。


「そんな、全然いけます!」


「よし!その意気だ!」


そうしてまた時間は流れて行って残す撮影はラスト一枚となった。


「よーしこれで最後の撮影だよ」


「次はどんなポーズをすればいいんですか?」


ボクがそう聞くと平野さんはニヤリと笑う。


「そこはゆうき君にお任せするよ」


「ええ!?」


「君がいいと思うポーズを俺が最高の画角で撮ってやる!案外こういうのが売れたりするんだよなぁ~」


さっきの笑顔とはまた違い、今平野さんがしている笑顔はいたずらを思いついた子みたいな、そんな表情。


「ゆうき君、ちょっとこっち来れる?」


「?はい」


ヒナさんに言われるままそっちに向かうといきなりボクの視界に影が下りる。


「わわっ」


「はい、顔が少し赤くなってたからこれつけててね?」


そう言いながらヒナさんはボクの頭に帽子を乗せた。その時平野さんの声が大きく聞こえた。


「よっし!撮れた!」


「え?え?」


困惑していたボクだったが、どうやらさっきの瞬間を写真に収めたらしい。


「さて、これでおしまい!お疲れ様!」


写真の確認を終えた平野さんがそう声を発すると周りにいるスタッフさんたちの間で拍手が湧き上がる。横を見てみるとヒナさんも手を叩いていた。


「撮影が終わるとこうして無事に終了したことと労いを込めてみんなで拍手をするの」


「そうなんですね~」


僕も習って手をたたく。


こうして撮影は無事に終了したのだった。

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