第59話 驚く人たち

復帰配信から一夜明け、事務所の社長室。


「なあ、ここに書いてあること本当なのか?」


口角を少しヒクりとさせながらりんとは聞いた。


「私もちょっと信じられないのですが...マジです」


草薙にそう言われてもう一度ディスプレイを見る。


「信じられん...」


「社長のあなたが信じなきゃどうするんです?」


確認しても信じられないようで、こう言葉をこぼしたりんとに対して六条は笑いながらそう返した。


「だったらお前も見てみろ、やばいからさ」


「ゆいの人気からしたら...ゲリラで解禁しても三ケタ万円行くのは予想できなくもないのでそんなに驚くことじゃ...」


手招きするりんとに誘われ六条もディスプレイを見る。そこで六条は目を見開き固まってしまう。


「ま、マジですか」


「社長の俺が言うのもなんだが...バグか?」


「き、金額表示にしましょうよ...もしかしたら違うかも....」


言葉が震える三人は恐る恐る表示を切り替えるてみるが、もちろんバグなんかではなかった。


それを見た三人はまるで一時停止したかのように動きを止めた。


「やっほ~みんないる~ってどうしたの?」


いつものように騒がしく部屋に入ってくる莉奈。


「ちょっと信じられなくてだな...」


「なにが~?」


莉奈がそう聞くが、りんとは言葉では返さずディスプレイを見るようにと指し示して返事をした。


「なに~?って...え?」


氷柱ゆいの収益化情報を表示してあるモニターを前にして四人の動きは止まった。再び動き出すのに少し時間がかかったのは言うまでもない。



場所は変わってゆうきの家。ここにもディスプレイを見て固まっている人物が一人いた。


「ば、バグだよね??」


昨日の配信でスーパーチャットを解禁した時にもすごい勢いで投げられていたことは鮮明に覚えているが、まさかここまでだったとはだれが想像できただろう。


「えっと...赤いスパチャは一万以上....だったよね??」


念のためページをリロードしてみる。が、数字は変わらなかった。


「赤スパが567!?!?!?てことは...昨日の配信でのスパチャは567万ってことだよね!?ええぇえええ!」


赤スパのみの数字なので、実際はもっと多いのだが...ここは黙っておくことにしよう。



ややあって、あまりにも大きい金額で混乱したゆうきは徐々に冷静さを取り戻していった。


まあ、冷静になると現実問題などなどが思考に浮かんでくるわけで...


「あ、確定申告どうしよう!」


忘れかけることもあるが、ゆうきはまだ高校生。確定申告とは本来まだ無縁のはずだが、それが必要な金額に達してしまっているわけで...未知の書類手続きなどに恐怖を覚えるゆうきであった。



一方その頃...


「税理士増やさないとまずいよな...」


「そうですね...手配しておきますね」


「頼む」


「あはは~マスターがんばれ~」


人気が出る事は喜ばしいことだが、その反面早すぎて追いつかない部分が多々あるなかでの追加の仕事。


嬉しい悲鳴ではあるのだか...そんな何とも言えない感情で今日もまた仕事をするりんとであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る