第47話 テレビ出演。そして
話を聞くと、最近話題になっているコンテンツを扱う番組らしく、今回はネット上で活躍している人たちに焦点を置いた放送回を制作したいとのこと。もちろん他事務所のVtuberやYouTuberも出演するらしい。
「因みに、地上波だぞ」
「ふぇ!?」
そのまま番組名も教えてくれたが、全国的にも有名であるとだけ言っておこう。
「俺も聞いた時は驚いたぞ」
深く頷く六条さん
「マネージャーとしてちゃんと仕事取ってきましたよ!」
「今回の件は向こうさんから連絡あったんだけどなぁ」
「あれだよね?誰かと一緒に出るんだよね???アイン先輩とか!」
そうであってくれと願うが帰ってくる答えは実に残酷なものだった。
「一緒と言うのが同じ事務所という意味ならそれは無いぞ」
「別の事務所のVtuberさんは来るらしいですけどね」
ボクはこめかみに手を当て頭を抱える。
「ゆうき。どうする?」
「どうするって言われても...」
「ゆうきくんがこういうことが苦手なのは先方も俺たちもわかっている。だから無理して出る必要はないぞ」
「その通りです」
六条さんの言うことは最もだ。最近デビューしたボクにとってはこれから先二度と現れないような大きな仕事。
この話をわざわざボクまで持ってきてくれたのはボクにとってプラスになるからだろう。
ボクは大きな舞台が苦手だ。
ボクは人と話すのが苦手だ。
ボクは人が怖い。
でも、【ボク】が始まってからは段々とそういうことがなくなった。
確かにまだ大きな舞台は苦手だし、人と話すのもまだ怖い。
だけど....
「考える時間はまだある。と言っても三日が限度だけどな」
もう、ボクの返答は決まっていた。
「大丈夫。ボク、やるよ!」
「そんなに焦って答えを出すものではないぞ?」
「そ、そうですよ!第一ゆうきくんはこういうの苦手じゃ...」
びっくりする草薙さんとは対照的な態度を示す六条さん
「確かにそうだけど...何だろう?出たほうがいい気がするんだ」
「それが理由か?」
「だめ...だよね....」
いつもよりワントーン下げた声音で問いかけてくる父さん。出演する理由が『なんとなく出た方が良い気がする』なんてまかり通っていいものではないしね...
「何を言ってるんだ?良いじゃないか!」
「へ?」
「親だからというのもあるが、もしゆうきが何かを感じたのであればやってみるべきだ。それに生放送ではないから、もし何かあってもある程度なら問題ないしな」
「因みに打ち合わせは二日後だ」
「え!?それじゃあ、さっき言ってた日にちじゃ間に合わなかったじゃん!」
「ん?ああ、それはお前がこの話を受けることは分かっていたからな」
「え?」
なんか今日は『え?』しか言ってない気がする...
ということはボクの思考は読まれてたってこと!?
「確かにお前は隠し事できないタイプだからなぁ」
「確かに、ゆうきくんは何を考えてるか顔に書いてあるからね」
父さんの言葉にうなずく六条さん。そんなにわかりやすいかな...ボク
「最近よくレッスンを頑張っているのは京子ちゃんから聞いているぞ。今すぐライブをしてもいいレベルだとも言ってたな」
「機材に関しても技術スタッフがほめていたな。この事務所にあるものなら八割ほどの操作をマスターしていると伝え聞いている」
「ゆうきの考えが、行動が少しずつ変化している。それはお前も感じているはずだ。でもその答えをまだ明確に見つけられないでいる」
「俺たちはその答えを見つけるには今回の話は絶対に必要だと思った次第だ。最も俺はこの仕事の中ででみつけられると思っているがな」
「そうとなれば!先方に伝えておきますね~氷柱ゆいは出演するって」
「これでいいんだな?ゆうき」
「うん!」
最初は流されて始まったけど、いつの間にかボクにとって必要不可欠なものになっていた。それはいつしかボクが【ボク】を演じるのではなくなったほど。
これは新しいボクになるために、ボクが踏み出す最初の一歩だ。
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