第45話 ボク、動きます!(仮)
あれからは順調に会議は進んで、とうとう実際に動いてみることになった。
「いまからモーショントラッキングをする機械を取り付けていくから動かないでね~」
慣れた手つきで機械をボクの体に取り付けていく草薙さん。頭から足まで取り付けた装置はその数20を軽く超える。昔は簡易的なモーショントラッキングしかできなかったので取り付ける機械の数は少なかったが一つ一つが大きくてあまり体の自由はきかなかったらしい。そう考えると技術の発展はすさまじい物で、ボクの体についている機械はボクの掌よりも小さく体も快適に動く。草薙さん曰く、走ったり跳ねても問題ないとか。
「よしっ!これで全部取り付けれたよ。少し動いてみて」
「分かりました」
そう言われてボクは軽く手をブラブラさせたりその場で足踏みをしてみたりする。
「そうそう、ゆうきくんの目の前にあるカメラの画角に収まっていたら移動しても大丈夫だよ」
「す、すごいですね」
「技術の進歩はすさまじいからな。ほらスクリーンを見てみろ」
六条さんがスクリーンに映し出されている画面を切り変えると、そこには
「すごい!【ゆい】がいる!!」
「いいねいいねその反応!あたしも作り甲斐あるってもんだよー」
薄いスカイブルーの髪と瞳。かなりサイズの大きいパーカーを来た華奢な女の子がそこに立っていた。
ボクが試しに右手を上げると【ゆい】も右手を上げる。
「おおお!!」
「珍しく興味深々じゃないか」
「ボクが動いてるんだよ!すごいじゃん!」
「ゆうきくん。軽く私が言った動きをしてみてくれるかな?それで問題がなかったら今度は自由に動いてもらってテストするから」
「了解です!」
ビシッと敬礼をすると【ゆい】も敬礼をする。なんかすごいワクワクする!
「それじゃあ、指を一本ずつ動かしてみてもらえるかな?」
「は~い」
小指から親指をゆっくりと動かしながら握る。問題なく【ゆい】も動いているように見えたが...
「あ、ここ!少し座標ずれてないかい?」
「本当ですね...ここも修正しましょう」
陽彩さんと草薙さんが齧りつくように画面に見入っていてボクではわからないような問題点を次々と見つけていく。
「リスナーはいい意味で目が肥えてるからな、少し変なところがあるとすぐに見つけ出してしまう。分かりやすく言うと、古い3Dゲームとかだとキャラクターが腕を上げたとき服を突き抜けて腕が上がったりするだろ?ああいうのを無くすために今やってるのさ」
あそこまでしなくても...と思っているのが見破られたのか、六条さんが説明してくれた。
「これって、ボクが動かさなくてもいいんじゃ...」
「それがそうとも行かない。確かに単に動かすだけだったら別にいいんだろうが、お前特有の動きをしたときに問題が出たりするんだ。あと、単純に本人にも一度見てもらってモデル自体に修正点がないか確認するのも目的の一つだ」
もうやることが無くて暇だったのか父さんも会話に入ってきた。
「おい、今なんかディスられた気がするんだが?」
「社長、それは少し自意識過剰じゃないですか?」
「う゛ぅ...」
画面から戻ってきた草薙さんが鋭く父さんにツッコミを入れる。
「まだまだやってもらうことはいっぱいあるからどんどんやっていくよ!」
「はい!」
次々と来る動きの指定に頑張って答える。時たまキツイ体制もあったりしたけど、ボクが動いているのが新鮮だったし、何より楽しかった。
3Dライブは今でも少し嫌だけど...それよりも楽しいって思えてきたよ!
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