第20話 新しい学校【改稿しました】
「私が呼んだら入ってきて簡単に自己紹介をしてくれ」
「わ、わかりました」
ボクの担任になった先生はそう言って教室に入って行った。
今日は転校初日。あれから転校の準備を急いでしようと思っていたらほぼ全てがお姉ちゃんと担当さんがやっていて、あまり頼るのはよくないと思っているけどその時には8割近く片付いていた。
担当さんも仕事がいっぱいあるはずなのにここまでやってくれる。感謝しか言葉が見つからないし、それ以上の言葉が見つからないボク自身の語彙力の無さを痛感していると教室から呼ぶ声がする。
「ゆうき〜入ってこーい」
扉の前で少し止まった。
「...大丈夫」
そう自分に言い聞かせてボクは教室の扉を開いた。
◇
「は、初めまして。水瀬ゆうき…です」
緊張と恥ずかしさをなんとか押し込めて噛まないように自己紹介をした。
少しの間沈黙が流れる。たった数秒だけど冷たい空気が体を突き抜けるような感覚を覚えた。
「せんせー!」
その沈黙を破ったのは一人の女子だった。
「どうした?」
「えっと、昨日の話では男の子が来るって話だったはずだった気がするんですけど」
最近ではその反応に慣れてきたけど、変な誤解を生まないためにも最初はしっかり言っておかないと...
「ちゃんと男です!」
「だ、そうだ。あたしも最初は驚いたけどねー」
「「ええ!?」」
「そんなに驚く??」
うう、やっぱりボクは男らしくないのかな…
「ゆうきくんは男の娘…了解しました!」
....なんか言葉に違和感を感じるけど、ボクは男だから問題ないよね?
「あれで男??」
「ウチの学校私服だから余計わからなかったわ」
「かわいい//」
少しクラスが騒ついてきた。ボクなんか変なこと言ってないよね?
「それじゃあそろそろ授業やるぞ〜」
事前に教えてもらっていた席に着くと先生は黒板にデカデカと文字を書き出した。
「ということで、一時間目は質問大会といこうじゃないか!」
「「おおお!」」
転校生特有の質問ラッシュがまさかこんなことになるなんて誰が予想できたのだろうか?
ボクは予想つかなかったよ!!
「ゆうき、そんな死にそうな顔するなよー」
笑いを堪えながらそう話す先生。
「安心しろ、何もお前一人じゃなくてクラス全体だ。進級して新しいクラスになってもうすぐで一ヶ月。まだ硬いところが見えるからそこをほぐすのも目的の一つだ。もちろんゆうきにも質問がくるから覚悟しろよー」
これも先生の配慮なのだろう。ぶっきらぼうに見えてすごく優しい先生なんだなと考えていると早速始まっていくのであった。
◇
Q:好きなお菓子は?
「えっと、和菓子かな?あ!あとプリン!」
Q:趣味は?
「料理とか読書とかだね」
Q:好きなゲームは?
「基本的にはFPSだよ!」
Q:ホラー得意?
「き、きらいじゃないよ....?」
Q:スキンケアとかやってるの?
「なんかよく聞かれるけど、何もやってないよ」
Q:ちょっとした自慢は?
「多いのかは分からないけど、本は600冊ぐらい持ってるよ」
Q:女装興味ある??
「ええ!?な、無いよ!確かに可愛い服とか見るのは好きだけど...ないからね!?」
Q:お化粧興味ある??
「正直少しだけあるかも....あ、今のなし!」
などなど、やっぱり転校生のボクに対しての質問が多かったね
◇
質問大会も時間的に終盤に差し掛かってきたころ。一人の生徒がある提案をする。
「最後にみんなの推しを言うのはどう?」
「私は別にいいよ~」
「逆に言いたい」
「布教したい」
クラス全体的に肯定的だったのでそのままみんなの推しを紹介して終わることになった。
「まずは俺だな!セカプロのアインさんとか好きだぞ!」
運動部ですと顔に書いてあるような生徒がそう言った。
「私は新人のゆいちゃんだよ」
「ぶッ!」
「ゆうきくん大丈夫?」
「だ、大丈夫」
だいじょばないよ!!だってクラスでボクの名前が出てくるんだから!
「僕もゆいちゃん好きだな」
「あたしも!」
「同じく」
それを火種に半数以上の生徒たちが『推しは?』の質問に対してボクの名前を出していった。
最後にボクの番が回ってきた。
「ゆうきくんは?」
「ボクは...」
最初は迷った。同じ事務所の先輩のほうがいいのかな?
でも、今はゆうきだ。だから自分がいつも見ている人を答えることにした。
「ラムネせ...さんも好きだけど、一番見てるのは
バーチャル社会人の社員。
セカプロとは別の事務所だけど、男性Vtuberでは一二を争う大物さんだ。
こんなところで質問大会は無事終わり、通常の授業に戻るのだった。
この時のボクは逃げ出したくてしょうがなかったことをここに残していくよ....
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