*6-2-2*

 地鳴りにも似た鳴動が直下に駆け抜ける。

 直下型地震を想起させるような、垂直に突き上げる揺れが城塞全体を震わせた。

 ほんの1秒にも満たない揺れではあったものの、もしこの場で気を抜いて立つ者があれば間違いなく脚を掬われていたはずだ。

 イーストクワイア=エウロスを抜け、玉座の間へ至る白亜の回廊を歩んでいたルーカスとロザリア、アシスタシアの3人は突如として襲い掛かった揺れに足を取られること無く何とかその場で立ったまま持ちこたえることに成功していた。

「大丈夫か?」

「えぇ、貴方こそ」

 ルーカスの言葉にロザリアが応える。

 気丈に振舞い、余裕そうな表情を浮かべているように見える彼女だが、先の戦いの後から今に至るまで足元がおぼついていないことをルーカスは見抜いていた。

 だが、本人が何ともないと言う以上はそのことに深く触れるべきではないだろう。特に、彼女がどういった性格の人物かを誰よりもよく理解する身としては。

 ルーカスは敢えて流し気味に言う。

「俺は見ての通りだ」

 そうして視線をアシスタシアへと向けて言った。

「そっちは?」

「問題ありません」

 聞かずとも分かっていた答えだ。

 そうだろうとも。今みたいな出来事に対し、身のこなしという側面においては、このメンバーの内では一番優れているのが彼女なのだから。

 しかし、シルフィーとの戦いの最中で右大腿部にアイスピックを突き立てられ、未だにその傷が治癒できていないということは忘れるべきではない。

 すると、そうしたルーカスの心情を察したのかアシスタシアが言った。

「申し訳ありません。余計なご心配をおかけしてしまうなど」

 目線の動きで気付かれたか―― 或いは、そういうところで主人の特性を受け継いでいるというのか。ルーカスは何とも言えない気持ちになる。

「気にするな、っつっても、根が真面目な貴女のことだから気にするんだろうな。だが、俺に対して謝ることではないのは間違いない。貴女がいてくれなければ、俺も貴女の主人もここに立っていなかったかもしれない」

「しかし……」

 アシスタシアが言いかけるが、ロザリアが彼女を制止して言った。

「彼の言うことは正しい。ここは素直に言葉を受け取るべきですわよ。アシスタシア」

「はい」

「それに、貴女の治癒能力が自身に対して十全な効力を発揮しないのは、わたくしの作為によるものなのですから」

 この言葉にアシスタシアは何か返事をすることもなく、静かに視線を前に向けたままだった。

 対して、思わず沸き上がった疑問を口にしたのはルーカスである。

「どういうことだ?」

 先のエウロスにおけるシルフィーとの死闘。その最中に、ロザリアを庇う形で受けたアムブロシアーの狙撃による傷を治癒してくれたのはアシスタシアであった。

 いつまでも子供のように泣くロザリアと、そんな彼女の腕に包まれたままの自分の傍まで歩み寄った彼女が負傷した胸へと右手をそっとかざすと、まるで怪我など最初から存在しなかったかの如く跡形もなく一瞬で治癒したのである。

 あの時は怪我が治癒したのだと、そのことを頭で認識するよりも早く痛みが喪失したことに驚いたものだが、当のアシスタシア本人がさも当然というように振舞うものだから、たった一言感謝の言葉を伝えることが精一杯だった。

 それと同時に気に掛かったのは、アシスタシアの纏う黒色の修道服の右大腿部付近に血が滲んだような跡が見受けられたことである。

 彼女にそのことを尋ねた際、シルフィーに接近した際に受けた傷であると答えてくれたし、過ぎ去ったことだという風に余りにも淡々と受け答えをするものだから既に治癒しているものだと考えた。

 ところが、白亜の回廊に出て共に歩く最中で“それは違う”と気付いたのだ。本人は気付かれないようにしているつもりだったのだろうが、怪我を負った人々の救助訓練や実践をしている自分達機構の人間にとって、僅かな動きの変化でも当人がどういう状況にあるのかを察知する程度のことは出来る。

 気付かれないようにしていることが伝わってきたからこそ敢えて指摘もしなかったし、今に至るまでは能力を行使してまで治癒するほどのものでもないのだろうと思っていたのだが…… 先のロザリアの言葉を聞く限りではどうやら事情が異なるらしい。


 とっさに口を突いて出たルーカスの疑問にロザリアが答える。

「保険ですわ」

「保険?」

「はい。わたくしはこの子を生み出す時、ある一つの決め事をしていました。その決め事とは“自らの意思の支配下に置かないこと”。要は自我をもたせるということでした」

 それを聞いてルーカスは言葉を言いかけたが、すぐに呑み込んだ。だが、内心で何を考えているのか分かるロザリア相手ではそうした行動に意味はない。

“求められた答えを的確に伝える”。ロザリアはルーカスが言わんとした質問を汲み取り、その答えを述べた。

「“強大な力を持つ人形に自我を持たせる”ということの危険性について、考えが及ばない貴方ではないでしょう? 常人には持ち得ぬ力を持つこの子が、万が一にでもわたくしの思わぬ形で暴走などしようものなら――」

「自らの怪我を自らで治癒する力を持たせることが危険だと、あんたはそう考えたってわけか」

「はい。それに、如何なる在り方であっても突き詰めて、わたくし共は信仰の道を歩む者。苦しむ人々を救う術は持つべきでありましょうが、そのことで自らの救済を為すことは道理を違えていると、そう考えます」

「あくまで“与えよ”か。なんというか…… ね。俺には分からん世界の話だ」

 ルーカスは聖典における有名な句を頭に浮かべながら言った。

「知恵を求めて得る人は幸いである。貴方にはそちらの言葉の方がふさわしいでしょう。わたくしは何を求めたわけでもありませんが、そうするべきであると考えたからこその作為」

「何にしても理由と事情は分かった。であれば、それも踏まえた上で次に取るべき道を選ぶことが重要だ」


 そのように2人が会話をする中、アシスタシアにはロザリアの言うことが嘘であることが分かっていた。

『ロザリア様が私を作られた理由。私に自我を持たせ、自らの目で世界を学ばせ、自らの意思によって道を選ばせようとしている理由。それは偏に、貴女様の……』

 それ以上、深く考えることはしない。国連の長であるマリアが、ミュンスターで初めて自分を目にした時の視線を思い出す。

 自分という存在の中に、何か特別な興味を見出したというような彼女の視線は、今でも脳裏に焼き付いて離れることはない。それを時折、思い返しては真意を図りたいという衝動に駆られてしまうほどに。

 しかし、自分はともかくとして彼ならばきっと―― アシスタシアは視線をルーカスに向ける。

“何を求めたわけでもない”という、ロザリアの言葉に嘘があることを見抜いただろう。いや、見抜いたはずだ。

 だからこそ、それ以上の言及を意図的に避けたのだろうから。


 アシスタシアは物思いに耽る中でふと、唐突にルーカスの呼び掛ける声に気付いた。

「どう思う?」

「はい? あの、申し訳ありません。どのようなお話でしょうか?」

 珍しいものを見た、というような視線を送りながらではあるが、ルーカスは改めて言う。

「これから俺達がどういう行動を取るべきか、について。何か意見があればと思ってな」

 問われたアシスタシアは一考を巡らせた。その最中にルーカスは続ける。

「先の頭上から襲ってきた強烈な揺れ。あれは間違いなく玉座の間からだ。であるなら、誰かとアンジェリカによる戦いは既に始まっていると考えるべきで、その相手はイベリスと玲那斗だって考えるのが自然だろう。助太刀の為にも急ぐべきだってのが俺の意見で、様子を窺いながら慎重に行動をするべきだってのがロザリアの意見だ」

 つまり、2つに割れた意見のどちらを尊重するか。彼はそう問いたいのだろう。

 アシスタシアは先ほど自分達を襲った揺れを思い返した。

 超巨大城塞であるアンヘリック・イーリオンそのものを激しく揺らすほどの衝撃。となれば、そんな衝撃を起こせる人物という視点から考えてもアンジェリカ以外に答えとして相応しい人物は存在しないだろうし、彼の言う通り衝撃の震源が玉座の間という話も的確な答えだろう。

 何せ、アンヘリック・イーリオンは核兵器の直撃にも耐えられるという話だ。それを内部から激しく揺らすことが出来る存在など他にいるわけがないし、今彼女がそれ以外の場所にいるはずがないのだから。

 一考した上でアシスタシアは自身の答えを伝える。

「様子を見るべきかと存じます」

 この答えにルーカスは“だろうな”という表情を浮かべた。

 主従という関係である以上、従者である自分はロザリアの意見を尊重するだろうと思われたに違いない。だが、事実とは得てして想像とは異なるものである。

 そのように思われたのなら心外だ、というようにアシスタシアは言った。

「ですが、この意見はロザリア様の意思を尊重してというものではありません。偏に、私自身の直感と考えに基づく意見です。そこはどうかご承知おきくださいますよう」

 言葉を聞いたルーカスが唖然とした表情を見せる。敢えて否定の為に名前を呼ばれたロザリアは、それでいて理解を示すように、またなぜか少しだけ嬉し気な表情を見せて頷いた。

 アシスタシアは続ける。

「私が思うに、アンジェリカの目的とはただひとつ。自身の理想実現の為の障害となるクリスティー様とアザミ様を葬ること。私達は今や彼女にとって、視界に捉えておくべき対象でもないはずです」

「随分と自分達を過小評価するんだな。俺にとっては、2人の力はイベリス達を助ける為には絶対不可欠なものだと思うんだが」

 仲間想いの彼の口から出る言葉に偽りなど無い。だが、現実というものを直視する必要がある。

「先ほどの話でご承知おきの通り、今の私では十全に力を発揮できるとは言い難く、もしかすると誰かの足を引っ張る結果にしかならないかもしれません。それはロザリア様とて同じこと。見受けるに、インペリアリスと呼ばれる力を解放なさった今のロザリア様には、アンジェリカに正面から対抗するだけの余力などもはや残されてはいません」

「まるで人を無能であるかのように言って……」

「違いますか? 今の状況、現実を俯瞰してみれば正しい判断かと」

 少しだけ不機嫌そうなロザリアを窘めるようにアシスタシアは言い、彼女は膨れたまま押し黙ってしまった。

 一体どちらが主人なのかわからなくなる光景だが、これも2人の絆が強いからこそ成し得る会話というものなのだろう。

 それを裏付けるように、機嫌を傾けた主人を気に留めることもなく、アシスタシアはルーカスへ言った。

「率直に申し上げます。今、急いで玉座の間に私達が向かい到着したとしても、入口より中へ足を踏み入れた途端にアンジェリカの手によって瞬殺されてしまうでしょう。それは考え得る中でも最悪の結末。テミスの1柱に打ち勝った意義すらも失ってしまいます」

 アシスタシアの意見を聞き届けたルーカスは右手を顎に押し当て、直前までの自分の意見を再考した。

「アンの妹。シルフィー、か」

 狂気に塗れたアンジェリカの忠臣。狂信者。彼女の姿を思い浮かべながらルーカスは言う。

「奴のアンジェリカに対する信仰心というべき感情は本物だった。となれば、逆もまた然り。自身が寵愛していた部下を殺されたとアンジェリカが知覚していないはずもないし、となれば向けられる憎悪もこれまでの比ではないだろうな。言われた通り、瞬殺されるだろうという意見も外れではないだろう。いや、むしろ正確に過ぎるかもしれない」

 声を潜めてそう言ったルーカスはアシスタシアとロザリアに視線を送って言う。

「分かった。無理に急いで突撃するような真似は止そう。慎重に足を運ぶことを前提に、どういう行動を取るかを決めたい」

 彼の決断に頷きながらアシスタシアが言う。

「アメルハウザー准尉。貴方の持つヘルメスで、ブライアン大尉の今の所在は掴めますか?」

「合流しようってか?」

「いいえ。エウロスとボレアースをそれぞれ抜けた先の回廊が直線で玉座の間に繋がっている以上、途中での合流は不可能です」

「そりゃそうだ。申し合わせをして踏み込むという線も無しか。なら、どうする?」

「彼らが玉座の間へ至るタイミングを計りたいのです。こちらも無闇に突入するわけには参りませんが、彼らとあまり時間差をつけて突入することも避けたいという考えがあります」

「要はアンジェリカに不意打ちを食らわせたいってことだな。うまくいくかどうか――」

 ルーカスは喋りながらも、言われるがままにヘルメスの立体マップを起動し、ジョシュアとアルビジアの所在を調べていた。

 だが、そうして掴んだ情報を目にするなり焦った様子で言う。

「アルビジアの所在は掴めるが、隊長の反応が無い?」

 すると、すかさずロザリアが言う。

「ヘルメスを破壊された。その可能性が強いと見受けます」

「あ、あぁ…… そうだな。壊されたら反応が無いのは当然だ。あっちは少し急いでるらしい。さっきの揺れがそうさせたのか、俺達より先行している。しかし、くそ。アルビジアに発信をかけようにもうまくいかない。城塞内に妨害電波の類などはないはずなのに。さっきので外部通信機能がいかれちまったのか?」

 ルーカスはシルフィーとの交戦時、地面に落とした衝撃で通信機能に障害が起きたのではないかと疑った。

 焦燥感を募らせるルーカスにアシスタシアは言う。

「連絡を取り合うことが困難であれば、ヴァルヴェルデ様の所在を追いかけながら玉座の間へ突入するタイミングを計るのはどうでしょうか」

「そうするしかないだろうな」

 その時、2人の会話に対してロザリアが小声で言った。

「となると…… アルビジアだけではなく、もう一方のフロリアンとの連絡も取れないということですわね」

「そういうことになる。だが、あっちは神様とお姫様の護衛があるんだろ? 正直なところ、岐路で分かれたメンバーの中では一番心配とは縁遠い組み合わせだと思うぜ? 考慮の外に置いて良いと思うくらいにな」

 あっけらかんと言い放ったルーカスに対し、神妙な面持ちを崩そうとはせずにロザリアは言う。

「いいえ、わたくしとしてはマリーの動きが最も気になるのです。ともすれば、アンジェリカよりも余程に。先に、アシスタシアの言った通り、アンジェリカの最終的な目標はマリーとアザミ様を葬ることにあるのでしょう。あの2人を亡き者にすることで、アンジェリカの理想成就は確約されたも同然なのですから。わたくしたちの存在はその過程において、障害にすらなり得ないものとして認識されているに違いありません」

「テミスを対峙させるだけで対処できると考えたくらいに、か」

 ルーカスの呟きにロザリアは頷いて続ける。

「動向には常に気を配る必要がありましょう。ルーカス。フロリアンの所在は掴めますか?」

「ノトスだ。真偽の大聖堂。そこにずっと留まっているらしい」

 答えを聞いたロザリアは考え込むように視線を落として言う。

「考えることが同じというだけか、他に何か……」

 何かを見落としているような気がしてならない。そう言いたげな彼女にルーカスは言った。

「あまり考え込み過ぎるのも良くない。身動きが取れなくなるからな。それに、向こうにはフロリアンがいるんだ。姫さんが怪しい動きをしようもんなら、何とかしてくれるだろう。局長様も、俺達の言うことは聞かなくてもフロリアンの言うことなら一考するだろうしな」

 その言葉を聞き、ロザリアはミュンスターの地においてフロリアンと行動を共にした時のことを思い出した。

 自身の目的の為に彼を彼女に惹き合わせた本人が思うことでも無いのだろうが、確かに彼が彼女の傍にいるなら大丈夫だろうと―― 不思議とそういう気持ちにさせる力が彼にはある。

 信じるしかない。そう心を決めると、ロザリアは幾分か表情を和らげて言った。

「確かに、そうかもしれませんわね」

「だろう?」

 自信満々に答えたルーカスを見やり、ロザリアは微笑みを湛えて言う。

「貴方がたはやはり……」

「何だ?」

「いえ、強い信頼関係があって何よりだと。そう思ったまでのことです」

「随分とまた、上からものを言ってくれる」

 やれやれといった風に両手を挙げ、冗談めかしてルーカスは言うが、ロザリアは小さく首を振って言った。

「違います。わたくしはただ羨ましいのです。貴方がたの関係性が。わたくしにとって、心から通じ合える存在とは今目の前にいる彼女。アシスタシアだけですから」

 少し寂しげでもある彼女の表情を見るに、偽りの無い心からの本音なのだろう。総大司教である彼女がこのような言葉を言うなど、少し前までなら考えも及ばなかったことだ。

 そんな風に、俯き気味に言ったロザリアの肩に手を置いてルーカスは言う。

「何言ってんだよ。お前、もしかして自分がその頭数に入ってないって思ってないか?」

「え?」

 きょとんとした表情で短く言ったロザリアに対し、ルーカスは再びしようがないといった雰囲気を醸し出しながら言った。

「心から本音を語り合える間柄なら、それはもう既に強い信頼関係があるって言っても良いだろう? 少し前は違ったのかもしれないが、その、何だ。今の俺にとっては、あんたもアシスタシアさんも仲間なんだからな」 

 そう言ってルーカスはマークתの面々に見せるのと同じ笑顔をロザリアとアシスタシアに見せたのである。


 彼の言葉を聞いたロザリアは、心の中に何かが満たされていくのを感じた。

 千年にも及ぶ孤独によって、空っぽになっていた心の中に温かなものが注がれていくような……

 仲間。アシスタシアと共に、彼にそう言ってもらえたことは大いなる喜びであった。

 ただ、願わくば―― アシスタシアと対等ではなく、彼女よりも少し特別であってほしいと思わずにはいられない。

 しかし、今は私情に想いを馳せている場合ではない。そうした本音だけは心に仕舞い込み、ロザリアは言う。

「その言葉は有難く頂戴致します。では、行動方針を話し合うのもこの辺りに留め、そろそろ動きましょう。アルビジアが先行しているなら、わたくし達も少し玉座の間との距離を詰めておく必要があります」

「飛び込むタイミングは運任せな面が強い。アンジェリカがこちらの動きを認識していないとも考えづらいしな」

「その点に限って言えば、有利はこちらにあるかと。そもそも歯牙にかける必要性すら見出せないわたくし達の動きを、あの子がしっかり把握していない可能性も大いにあります」

「私も同意します。その1点に関してだけは、こちらに理があります。ただし、そのような虚を突いた奇襲は当然にして1度限り。そこで失敗することがあれば――」

 アシスタシアの言葉を引き取ってロザリアは言った。

「屍の山が3つ、築かれるだけとなる可能性もあり得る」

「不吉なことを言う。ただ、それくらいの覚悟を持たなければ目の前で対峙することすら許されない相手であることには違いないか。僅かなミス、油断は全て死に繋がると」

 焦燥と不安から額に浮き上がる汗を拭いつつ、真剣な表情でルーカスは続ける。

「あとは、イベリスと玲那斗が無事でいてくれることを心底から願うだけだ」

 その言葉には、仲間の安否を思う優しさが満ちていた。ルーカスの言葉にロザリアとアシスタシアが頷く。


 そうして一行は玉座の間へと至る白亜の回廊の先へ視線を送り、アルビジアの動向を観測しながら再び足を進めるのであった。



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