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MDCCLXVI - File code:GESW797979 TYPE:Classified

【合成薬物グレイ】

 グラン・エトルアリアス共和国 特別兵装 第379-2番

 製作者:技術開発顧問 アビガイル・ウルカヌ・サラマドラス


 新型環境モデル改善農業薬品〈コード:GEGP379〉-セルフェイス財団への譲渡により〈CGP637-GG〉へと改称-生成過程の失敗により偶発的に組成された試験薬品。

 本薬品の作用として、人間に投与することで覚せい剤、麻薬より遥かに優れた高揚感、多幸感、全能感を得ることができ、肉体的疲労の不感状態を得ることが出来る。

 使用後の副作用として、嘔吐、呼吸器障害、筋肉痙攣、急速な全身神経破壊、幻覚、幻聴、播種性血管内凝固症候群などが表れ、放置すれば確実に死に至る。

 副作用の発生後から死亡までの時間は短く、副作用症状発症後の治療方法も存在しない。

 尚、最も特徴的な副作用のひとつとして、色に対する感覚の全てが喪失し、モノクロでしかものが見えなくなる後天色覚異常 1色型色覚〈全色盲〉を発症することが挙げられ、その特徴から本薬品の名称は〈グレイ〉と命名された。


 簡易仕様1:中枢神経刺激による精神の安定、向上作用

 簡易仕様2:全身神経破壊、播種性血管内凝固症候群を伴う致死作用

 使用方法:静脈注射、或いは粉末吸引

 代謝:肝臓

 化学式:非開示とする

 生成コード:MDCCLXVIデータベース上の各項目を参照のこと


 講評:

 GEGP379開発途中における偶発的組成の産物である本薬品は、人間に投与することで既存の危険薬物を遥かに凌駕するベネフィットを生み出すことが確認された。同時に、既存薬物では未確認のリスクも確認されている。


 ミクロネシア連邦においての試験運用の結果を受け、作用と副作用について双方を一方的にメリットとデメリットとして考えずに運用方法の検討を行った結果、戦争時における兵器としての運用を念頭に、敵基地への散布によって深刻な人的被害をもたらすことが可能であると判定された。


 ただし、当該方法での運用に際しては精神系に対する好作用の調整が望まれる。

 中枢神経刺激による全能感と高揚感などを、味方を敵と誤認するような妄想、幻覚、幻聴の効果付与という調整を加えた上で兵器の一種として運用することを検討すべきである。


 本運用に際しては昆虫型ドローンに搭載した運用が推奨される。

 対象への注射により直接投与が可能な蜂型ドローン〈メリッサ〉での運用を想定する。


〈グレイ評価試験〉

 試験ステータス:実施完了

 承認日:西暦2031年4月

 承認者:総統 アンジェリカ・インファンタ・カリステファス

 評価:A 精神作用の調整を加えた上で化学兵器としての兵器運用を検討

 実験地:ミクロネシア連邦 ポーンペイ州

 実験日:西暦2034年1月から2036年10月まで

 最終データ更新:西暦2036年11月


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