第3節 -イベリスの箱庭 ~光の王妃~-
* 1-3-1 *
“とあるデータベース”参照による情報開示
閲覧者:アンジェリカ・インファンタ・カリステファス
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【リナリアの怪異】
北大西洋に浮かぶ孤島であるリナリア島を中心として、周辺海域で巻き起こる不可思議な怪奇現象の総称。西暦2035年に事件解決へ至るまで世界七不思議のひとつに数えられていた。
リナリア島にかつて存在したといわれるリナリア公国の滅亡から千年。その長きに渡る歴史において、島の周囲を航行する船舶、艦船、航空機の遭難事故が多発したことによって世界的に注目を集めた怪奇事件であり、バミューダトライアングルの遭難事故と同列に語られることも多々ある。
近代に入り、遭難事故多発の影響から同島は国際条約によって立入禁止特別指定区域とされ、事件解決の2035年5月まで条約は継続された。
しかし、接近・立入禁止の条約制定後も、女性の霊が出るなどという噂を聞きつけた民間人が興味本位で付近を航行するなどという事例が後を絶たず、島へ近付いた者が例外なく怪奇現象を目撃したり遭難事故を起こすといった状況は継続して発生していたようである。
興味本位で近付く者の他には、現代科学の力を以って怪奇現象が起きる原因の解明に乗り出そうとした人物や組織も数多くいたが、そのいずれもが原因を突き止めるまでには至っていない。
但し、そのように長きに渡り怪奇現象による遭難などの事故が多数起きていたにも関わらず、同現象を起因とする死傷者数が千年に渡って〈無し〉という要素は特筆すべきことであり、そのことがかえってこの島の怪異というものを際立てる要素の一つとなっていた。
世界七不思議の怪異と呼ばれ恐れられていたにも関わらず、島へ近付く者が後を絶たなかった理由でもある。
リナリアの怪異に転機が訪れたのは2034年のことであった。
怪異が発生する限り、航空機や船舶の航行ルートとして島周辺及び上空を横断出来ず、敢えて迂回するしかない状況が継続することで、周辺諸国に多大な不利益がもたらされていることを問題視した国際連盟は大規模な調査艦隊派遣計画を策定。
同年5月に計画に基づいた大規模調査艦隊が実際に同島へ派遣されるが、同島へ辿り着く前に謎のシステムトラブルに見舞われ、航行制御不能となった艦艇同士が海上衝突事故を起こしたことで計画そのものが中止となった。
国連の介入によってすら解決出来なかった事件の特殊性を鑑み、以後は世界特殊事象研究機構が怪異解決の為に立ち上がることとなる。
そうしてリナリア島の怪異は2035年5月に世界特殊事象研究機構の調査チームによる調査を経て無事解決の日の目を見た。
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【国際連盟特別調査部隊によるリナリアの怪異調査事件】
●Open
西暦2034年5月に実施された国際連盟特別調査部隊によるリナリアの怪異大規模調査にまつわる事件の総称。
過去、千年に渡り未解決となっていた島の怪奇現象については、島周辺を航空機や船舶の輸送ルートとして指定できないことで経済的損失や不利益を被り続ける周辺諸国が特に問題視していた。
周辺諸国だけではなく、事態を重く見ていた世界各国からの陳情や要望を受けた国際連盟統括総局は、西暦2034年3月に同島の怪異調査計画を立案。以後、4月に議会承認を経て計画実施を決定する。
調査計画の実施にあたっては、主に同島周辺を輸送ルートとして取り込みたいと希望した各国の正規軍を一時的に国際連盟軍とすることで部隊編成を行った。
艦隊指揮は国際連盟特別軍の大佐であった〈ハワード・ウェイクフィールド〉氏が担当した。
国連の大々的な喧伝の元、2034年5月に鳴り物入りで実施された〈リナリア島の怪異調査計画〉であったが、結局のところは同島付近の海上にて、調査に参加した艦船同士の衝突事故を発生させたことで計画自体が中止へと追い込まれてしまう。
事件発生時には、海上に突然立ち込めた霧などが目撃されているが、その発生原因については今尚も不明とされている。
●Secret
艦船衝突事故発生時、調査艦隊は同島への接近に伴い慣性航行から減速し、予め指定された座標にて停船する予定であった。
しかし、慣性航行途中に海上に突如として立ち込めた霧により艦橋からの有視界を塞がれた上、全艦艇のレーダー等を含む電子機器が異常を示して機能不全に陥り、機関自体も緊急停止してしまうという甚大なトラブルに見舞われる。
完全にコントロールを失った艦は海に浮かぶ巨大な鉄の塊となり、潮流に流される形で徐々に接近した上で最終的に衝突に至った。
この事故についての詳細は、国際連盟より参加した各員に対して厳しい緘口令が敷かれていた事実が後に確認されている。
公示されていない情報として挙げられるのが、事故当時に海上へ立ち込めた霧の中で長い髪をした1人の少女の姿がはっきりと目撃された点についてであった。
長い髪の少女、怪異で語られる亡霊を目撃したという情報に対してなぜ頑なに緘口令が敷かれたのかについては当時調査に参加した隊員の誰にも明かされず、統括総局局長も一切情報を開示することはなかった。
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【イベリス・ガルシア・イグレシアス】
出身:リナリア公国
誕生日:No Data
身長:165cm
西暦2035年に解決された〈リナリアの怪異〉事件を起こしていた存在。
およそ千年前に滅びを迎えたリナリア公国七貴族における王家を担った一家、ガルシア家の一人娘であり、公国王権再編に伴い新国王の妃となるはずであった人物。
プラチナホワイトの長い髪にミスティーグレーの色の中にいくつもの色の輝きを持つ瞳、アースアイを持つ美しい少女の容姿をしている。
西暦1035年の公国崩壊時、王家が住居として使用していた〈星の城〉において死亡したとされる。
彼女は容姿の美しさ、清廉さと高潔さを兼ね備えた王家の人物でありながら、立場などを鼻にかけることは一切なく、国民が声を掛ければ垣根無しに明るい笑顔で応えたという。
同じ国家に住む同じ人間として、国民の1人1人を慈しみ大切に想っていた。貴族である自分達の生活が、そうした人々に支えられているからこそ成り立っていると幼くして理解し、感謝の念を常に抱き続けていた証でもある。
その在り方に誰もが魅せられ、憧憬を抱き、多くの国民からリナリア公国を幸福へ導く象徴として〈国家の希望〉〈国の光〉と呼ばれていたという記録が残っている。
また、彼女が新国王妃になることを知っていた人物達からは〈光の王妃〉とも呼ばれていたという。
尚、彼女の婚約者は同国貴族のサンタクルス家の子息、レナト・サンタクルス・ヒメノで、国家政治機能再編に伴い次期国王として戴冠するはずであった人物である。
領土拡大戦争レクイエムの影響で公国が滅亡し、自らも敵国に放たれた炎によって焼死するという悲惨な最期を迎えた後、魂のみを現世界に顕現させて復活を果たすという奇跡を起こす。
死後に獲得した異能を用いてリナリア島を守護してきた存在であり、リナリアの怪異と呼ばれる事件全ては彼女の行いが原因である。
彼女が死後に獲得した超常的な力、確認されている異能については下記の通りである。
1.光の祝福
光に関わるありとあらゆる事象を思い通りに操る力を所持しているとみられる。
これまでに確認された、彼女の力による現象や行いは下記の通りである。
●分身体投影
自身と全く同一の個体を全く別の場所に投影する。
投影された個体を自分自身の意思で操作する事が可能で物に触れたり会話をしたり、本体と全く同じように行動させることが出来る。
投影した個体から見える景色は本体の左目で視認している。
計測確認された能力による制限は以下の通りである。
1.投影する起点となる場所は自身が一度でも直接訪れた事のある場所に限定される。
2.投影した個体の活動範囲は本体の位置から約半径200メートルが限界である。
3.本体と投影体の距離が離れるほど左目の瞳の色がスペクトル順に変化する。本体と投影体共通で同様の変化が起きる。大まかに分類すると下記のような変化を辿る。
※近距離 ← 紫-青-緑-黄緑-黄色-橙-赤 → 遠距離
4.投影した個体を操作している際はそちらに注意を向ける必要がある為、本体での行動にある程度の行動制限がかかる。(能力使用時は集中力を使うような複雑な作業は出来ないとみられる。)
5.光を使用した投影の為、光源が存在しない場所へ投影体を出すことは出来ない。
6.投影体も下記に挙げるような能力を使用する事は出来るが、本体と比較してかなり小規模な能力の行使しかできない。
7.能力使用時は本体の左目で見える景色は投影体の目から見える景色になる為、現在地の状況は左目で視認する事が出来なくなる。
その他、確認されている異能は下記の通りである。
【透明化(可視無効化・認識阻害)】
【虚像構築(蜃気楼の発生と維持)】
【電子機器への干渉】
【念写(ソートグラフィー)】
【光線収束(1MW級レーザー砲と同等の出力を出すことが可能とみられる)】
各項目詳細については別途データベースFile code:PL-G03-XXを参照のこと。
2.■■■■■■■
ERROR: Data corruption
Related words: No Data
※確認出来る情報の断片として、リナリア島という自身に強い縁を持つ土地に身を置いた際に、扱う異能の出力を大幅に増幅することが出来るというものがある。
〈土地の加護を得たことによる能力向上〉と記録される現象は、他のリナリア公国出身者が扱う異能においても同様の原理が見られ、大規模な能力を行使する際の状態を指して〈インペリアリス〉と呼称されている。
土地の加護による影響がない状況でも〈インペリアリス〉による出力向上、能力解放は可能ではあるが、能力使用時間に大幅な制限が課され、それは時間にしておよそ15分程度が限界とされる。
イベリスの能力値検証に用いた参考データはミクロネシア連邦で起きた〈聖母の奇跡〉事件であり、当時彼女が用いた強大な力の行使継続時間が15分であったことに由来する。
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