第13話 まさに世紀末だぜヒャッハー!
アリスが固まり、いつも以上に顔が白くなった。
「それにレオニダス軍て三〇〇人で一〇〇万の軍勢と四日間戦った人達だよ」
「え、ええ……」
「一〇〇万じゃ足りないよー」
アリスがその場にへたりこんだ。
まあここ潰そうと思ったら米軍でも連れてこないと無理っぽいし、特にイヨリを倒すにはグリーンベレーやデルタフォースでも足りないだろう、ほらアリス、いつまでも腰抜かしてないで早く行くぞ。
「おや、大丈夫ですかいお客人」
俺がアリスとヒデオに手を貸して立たせようとすると、分かれ道の左側から門の中にいた筋肉ダルマ達よりも一層巨大で迫力のある男が数人の門下生を連れて近づいてくる。
ちなみに右側の廊下がイヨリの部屋がある屋敷への渡り廊下へ続いている。
「ただいまみんな、わたしこれからみんなと部屋で勉強するね」
「へい、わかりやした」
返事をするのはこの道場で指導員を務める門下生の一人で、手も足も首も太く、分厚い胸板は弾丸も受け止めそうな印象すら受ける。
顔はうしろの門下生達もそうだが某世紀末救世主伝説マンガの脇役達にそっくりでモヒカンヘアーが似合いそうだ。
身長は実際にはそこまでは無いだろうが三メートルはありそうな印象を受ける。
そんなトゲ付きショルダーと鎖を持たせたくなるような男が俺に目を止めると急に上機嫌になり身をかがめてくる。
「おっ、これはヤマトの若旦那、お嬢との祝言の日取りはもう決まりやしたか?」
「もう、マサ君たらわたし達まだそんなんじゃないよー!」
恥ずかしそうに頬を染めながら左手を頬に添えてイヨリの右手がマサの胸板を叩く。
すると冗談みたいな爆音が轟きマサの巨体がブッ飛んだ。
マサは目を血走らせ歯を食いしばり全身の筋肉に力をいれてなんとか床に触れる足の指を突き立てるが勢いは止まらずヒノキの床に轍(わだち)を作りながら廊下の奥の壁に激突……する寸前で止まり、そして体力を尽かせながらも晴れやかな顔でぽつりと言った。
「お嬢……御立派です……」
ゴボリとマサの口から血が溢れ、それと一緒に鼻と耳からも赤い雫が滴り落ちる。
「あにきぃいいいい!!」
「マサフミ指導員!!」
引き連れていた門下生が一斉に駆け寄り倒れるマサの体を抱きとめる。
「お、お前ら……」
「喋らねえでくだせえ兄貴!」
「くそう、血が、血が止まらねえよー!!」
「あんたがいなくなったら俺らはどうすればいいんすか!?」
涙を流しながらマサの体を支える門下生達に、だがマサは柔和な笑みを湛えて告げる。
「馬鹿言ってんじゃねえよ、ここにはお嬢がいるじゃねえか、あのお方さえいればここは大丈夫だ、古跡(こせき)家にお嬢がいるんじゃねえ、お嬢が古跡(こせき)そのものなんだからよ……」
「じゃあみんな、早くわたしの部屋行こ」
「お前らいつまで突っ立ってんだよ」
「あれ無視していいの!?」
「明らかに致命傷なんだぜ!!」
「えー、あんなのよくある日常の一コマじゃない、それより勉強勉強」
絶句する二人の気持ちは分かるがイヨリは先に行ってしまったので二人の手を握って俺もイヨリの後を追う。
背後からは門下生達の悲しみの叫びが聞こえるが大丈夫、なにせマサのあの姿を見る回数はこれで三ケタ突入だからな。
だけど驚くのはまだ早い、ようやくイヨリの部屋の前に辿り着き襖(ふすま)を開けるとそこには怪しい置物と怪しい飾りと怪しい本に彩られた怪しい和室が広がっている。
俺が知る現役女子高生の部屋は残念ながらこんなもんである。
「じゃあみんなこのハンムラビ法典座布団に座って、あっ、棚に置いてあるオーパーツコレクションには触らないでね、あと本棚の世界の古代文明本は好きに読んでいいよ、今みんなで使えるイースター島テーブル出すから、見て見てこのテーブル、足がモアイの形してるんだよ」
嬉しそうにはしゃぎながら自慢の古代遺跡グッズを自慢する幼馴染の姿がそこにはあった。
アリスが俺の肩に手を置き、冷めた目で言ってくる。
「アンタの幼馴染趣味悪いわね」
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