ひぎゃああああああああああああああああああ
有希は寒がりだ。
いつも一緒に学校に行く時、ダルマのように着ぶくれた姿でやってきては『寒い寒い』と連呼している。
「人間も冬眠すべきだよ」
何度聞かされたかわからないその言葉を『はいはい』と適当に返事しながら受け流す。
彼女は言う。
「冬は嫌い」
その言葉は真剣に言っているようだった。
「とは言っても、日本の冬は寒くなるよ」
「ならば私は移動する。ハワイ!ハワイに住む!」
常夏の場所と言えばハワイとグアムしか知らなさそうな頭の残念な彼女の両肩を叩く。
「うんうん、わかるわかる。その時は私もついていくから」
彼女の顔がパァっと明るくなり、うんうんと頷くのを確認した後で、私は彼女のマフラーの隙間から冷たくなった手を突っ込んだ。
「ひぎゃああああああああああああああああああ!」
通学路に響く彼女の悲鳴を聞きながら、
「常夏の場所に行ったらこんな楽しいことできなくなるなあ」
と、阿呆なことを考えて空を見上げた。
そこには、突き抜けるような青空が広がっていた。
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