今日も明日も明後日も
「私、加奈のこと好きよ」
この言葉を今日も彼女に伝える。
多分、明日も明後日も言うだろう。
この学校の中でも、外でも彼女がいれば言うだろう。
だって、彼女が好きだから。
この言葉を言う度に彼女は笑顔で頷く。
そして『私もよ』と言ってくれる。
そうやって自分の中の『好き』を伝える度に、私の心の中は黒くべったりとした物で塗られる。
だって、彼女の『好き』と私の『好き』は根本が違うから。
友人としての愛情が、彼女の捉えている『好き』。
恋を前提とした愛情が、私の『好き』。
それが、表面に出てしまうこの瞬間が、とても憎い。
だけど、それを伝えないとそれ以上の何かに押しつぶされそうになる自分がいる。
そして、素直に愛情を伝えるのが怖い自分がいる。
私がフラれるのはいい。
けれど、私が好きになった彼女が誰かにレッテルを貼られたらどうしよう、なんて考えてしまう。
私の今いる世界……『学校』という名の深海の檻のような場所には自由なんてない。
普通が世界を支配して、それから逸脱した人は、何かに圧殺されてしまう。
だから、そうならない為に私は檻の中に入って、普通を装って彼女の傍にいる。
深海の圧力に殺されそうになりながら、それでも、彼女の体温に触れていたいから。
この檻を壊せば、いつか自由になれるんだろうと思うけど、それに対して囁く内なる自分がいる。
「深海魚が地上にいけると思うなよ。気圧の変化で、お前は死ぬだけだ。お前が生きるのは深海しかない」
そんな声を振り切るように、彼女に『好き』と伝える。
今日も、明日も明後日も。
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