ノーカウントのキスの条件

『あれは、女の子同士だし、小さい頃の話だからノーカウントだよ』


 どちらがそう言ったのかは覚えていないが、幼稚園の頃に友達である文(ふみ)とした初めてのキスは、そうやってあやふやなままになって、心の中で、飽和した砂糖のようになっていた。

 私達を困らせる、厄介で、でも、確かに甘い思い出。


 セーラー服を着始めてもう、2年になる。

 そんな年齢になっても、私達の中であの思い出は未だに、溶けきっていない。



 未だに文は私にキスをする前に「ノーカウントだから」と言ってくる。

 はいはい、なんて言いながら私達は軽く唇を合わせて、じゃれあう。



 そのカウントが進まないことを、裏で祈りながら。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る