テントウ虫、空に溶けて
「ねえ、南美ちゃん。鳥や昆虫は人間と違って、認識出来る色が多いんだって、知ってた?」
「そういえば、理科のハゲ山センセがそんなこと言ってたね」
「崎山先生、ね」
「はいはい。それで、虫がどうしたの?」
「いや、虫や昆虫はどんな世界を見てるのかな、って思ってね」
「もしかしたら私達の微細な変化も、虫や鳥達は気付いているかもしれないってこと?ないない、それはないよ」
「わかんないよ?」
「じゃあ、どうやって証明するのよ」
「……そうねえ、そうだ。南美ちゃん」
「何よ」
「……好き」
「ふぁっ!?」
その瞬間だった。南美の顔の回りをテントウ虫が一匹、くるりと一周して、空に昇り、やがて春の陽射しの中でゆるやかに浮かぶ雲の白色の中に溶けていった。
「……何か感知されたみたいよ、南美ちゃん」
「うっ……うるさいうるさい!からかわないでよ!」
「からかう?じゃ、本気って言おうか?」
「うっ……つっ……」
喉からあがってこないセリフを待ちながら、南美は、口をパクパクとさせた。
空に溶けた筈のテントウ虫が、その口目掛けて飛んで来るのは、また少し後のお話。
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