β 加速

「ふんぬぅ......』

突如として男の両足が膨張した。それに伴いズボンがビリビリに破ける。膨らんだ足で地面を蹴り、こちらへと向かってきた。

「なるほどなるほど。お前はそういう力を持っているのだな?ワレも真似してやろうぞ」

そして『僕』はそういうと、男と同じように足を膨らませたのだった。

「なっ!?!?』

驚愕の色に、顔を染めながらも突進してくる男に対し、鏡のように全く同じスピードで『僕』も駆ける。ぶつかった瞬間に、とてつもないほどの威力が辺りに分散し、風を巻き起こす。

「あぁ?お前もこの《attack & break》と同じ能力か?』

「んん?力に名前をつけているのか?そうかそうか《attack & break》というのか。後でワレも名前をつけよう」

足と足を交差させながら尚も会話は続く。

「名前が無いってことはよ、それだけ新しいんだろ?だったら俺の敵じゃあねぇな!!』

「若さとは良いものだぞ?年寄りが!」

足に力を入れ押し返された。しかし『僕』はそれに抗うのではなく水が流れるように、スルリと受け流し、男の体勢が崩れたところへ全力の膝蹴りをぶちかました。

「ぐ、ぐはぁっっ!!!なんつぅパワーだよ......痛ぇ......痛ぇよ......』

「予想通り弱かったな。あまり不味くならないうちにいただくとしよう!!」

『ひぃっ!や、やめてください。お、俺が悪かったですぅ~......』

「ん~......こういうときにぴったりな言葉を最近読んだんだよ。教えてやろうぞ。『だが、断る』!!!」

右手をかざし、振り下ろすと男は消えていた。なにも残さずに。

「終わった。どう?お腹いっぱいになった?」

『うむ!満足満足。大満足よ!!で、時にあいつ、名乗っていたな。ワレも名前がほしいぞ?こっちとしてもお前の名を知らんしな』

「あ、確かに。互いに名乗りあってなかったね。僕は椎名一樹、よろしくね」

『ふむふむ。なるほどなるほど。じゃあワレの名は?』

「ん~。教えること全部覚えていくから《the wisdom》とかどうかな?知恵ってそのまんまだけど......」

『さっきのあいつもエイゴなるものだったしな。よいぞ!スバらしくよい!!』

「よし、じゃあ決まりだね。よろしくウィズ!」

『くふふ、早速略称か。こちらこそよろしくな一樹!』

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