第45話 死にたい私は思い出す
陰口なんてなおさら、私の中学時代を思い出しちゃうし。
……今の私には無理だ。周りを気にして無視していると思う。
「だからさ、昔のあたしはそんなかっこよくて強い
「私、
「知ってる。
「私、天才じゃないんだよ」
「知ってる。みんなは苦労を知らないで『不動の女王』とか言ってたけど、あたしはちゃんと
「私、わたし……」
あぁ、ダメだ。こんな優しい言葉をかけられて、我慢できるわけがない。
「そんな私でも……
「もちろん! だってあたしたち――友達なんだよ」
それから、どれくらいの時間が経っただろう。私たちは共にトイレを出て廊下を歩いていた。あの状況に誰も入ってこなかったのは奇跡と呼んでもいいだろう。一生分の奇跡を使った気がする。
「それにしても、トイレに誰も入ってこなくてよかったね」
「うん。そうなっていたら私、恥ずかしくて死んじゃっていたかも」
「あはは、確かに泣き顔は見られたくないよね~」
いつもの明るい笑顔を向けられる。その笑顔を見るだけで心が温かくなる。
「そういえば
「一応今日の夕方から行くことになってる。私バイトするの初めてだから、今日はどんなことするのか教わるだけらしいよ」
「へぇ、それじゃあ頑張ってね。あたしも部活終わったら寄ってくよ」
教室に着いて荷物を持ち上げる。順位表が張り終わってから時間も経っているので教室には誰もいなかった。
「さっきは本当にありがとう。部活頑張ってね」
「うん! 役に立てなら何よりだよ!」
教室で
そんな私の思考を邪魔するようにカバンが振動する。どうやらスマホにメッセージが届いたようだ。
足を止めてカバンからスマホを取り出す。そこに表示されてある内容を見て、私は家とは反対の方向に走り出していた。
『お母さん:話があるので、学校が終われば病院に来てください』
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