第48話 令和時代の常備菜
常備菜と言えば「ふだんから用意してある作りおきの副菜」という意味だが、おれ的には令和時代の常備菜というのは「常温で備蓄できる主菜」になるのでは、と考えていたりする。
ここ数年、コロナ禍はもとより、異常天候などによる流通の遅延や移動の制限などで、思うように買い出しに行けなくなるケースが多くなってきている。そこにきて冷凍食品などがかなりレベルアップしてきており、ふだんの食卓に乗せるための買い物ができないとなっても、割となんとかなるような時代になりつつある。
1〜2週間くらい買い出しに行けなかったとしても、主食・汁もの・主菜・副菜が準備可能というふうになれば、いざ災害などが発生してもそれほど困らない、という状況にすることができ、なかなか頼もしい感じになる。3.11のときも痛感したが、災害食など限定的な食事が続くと、心身ともに疲れやすく、リフレッシュできる機会が作れなくなっていくので、やはり食事にバリエーションを作っておくのが重要だろう、という気持ちだ。
震災を経験して以降、ローリングストック(循環備蓄)という「普段食べている備蓄可能な食品(レトルト、冷凍、インスタントなど)を一定のサイクルで普段から消費するとともに、再備蓄していく」やり方を続けているおれの家族なので、いざ何かあっても「とりあえず食えるものはある」という状況に自然となっており、その点における不安がないというのは、割と良いなと思っている。無理をして備蓄用の食料を買い込んで食べるというかたちではなく、あくまで普通に普段から食べているものなので、生活に難なく組み込めるというのも白眉だ。飲料水だけがずっと課題だったが、今はウォーターサーバがあるので、少なくとも当座の困難は回避できる。
で、だ。コメの炊飯をカセットガスと土鍋でやるとか、冷凍パンとか、主食についてはまぁなんとかなる。汁ものも味噌汁であれば大丈夫。副菜も缶詰とか、いろいろ手段はある。
そうなると問題はやはり「主菜」になる。
1〜2週間何も調達できない状態なので、主菜をつくるための生鮮食品が途中で無くなってしまい、備蓄ではさすがにどうにもならない。毎日サラダがないと死ぬとか、そういうレベルで生鮮食品を求めているわけではないが、無いとなるとなぜか食べたくなるであろうことは容易く予測できる。
じゃあどうするのかというと、もう「主菜」も「常備してある」状態にしてしまうのがよいということになる。これは某プロ野球チームを有するショッピングサイトで「おかず 常温保存」などで検索すれば、そのものズバリなものが割とポンポン出てくる。
そのうちのひとつを試しに買ってみる。真空パックでピッチピチに包装された各種おかずが入っており、ものによるが本当に常温で3〜6ヶ月は大丈夫ですと書いてある。なんなら袋の上部に陳列用の穴なんかもあったりして、おおこいつはマジで常温大丈夫っぽいな、よしよし、という感じだ。
災害を想定してか、パッケージの裏面には「湯煎での調理方法」が先に書いてあり、その下に「電子レンジでの調理方法」という順序になっている。こういったところもまた、備蓄を想定しているのがわかり、信頼度がアップする。
規定の時間、湯煎したものを開封し、皿に盛り付ける。温かいので、できたての主菜という感じがすごくあるし、複数個開封すればボリュームもそれなりに稼げる。色々と食べてみたが、タンドリーチキンや鶏もも炭火焼き、ラフテーなどに野菜を足すことで、わりと「主菜」としてふだんのそれとクオリティ的に大差なく仕上げることができる、というのがわかった。全体的に味が濃い目なので、付け合せになる野菜があるとちょうどいいのだ。
流石に刺し身やサラダといったものは備蓄の対象として想定されていないと思われるが、サラダであれば夏には生野菜を、冬にはカット野菜をローリングストックすることで、ブロッコリーやいんげん、根菜などをサラダとして融通することが可能だろうと思う。刺し身もこんにゃくで代用するとか、色々やってやれないことはない。生鮮品として野菜の確保が気持ち容易であるというのは、田舎で農業をやっている家の特権と言えるだろう。
結論的には「令和時代の常備菜、ぜんぜんアリ」という感じなので、予算をつくってローリングストックをしてみてもいいかもしれないと思っている。備えよ常に。震災は忘れた頃にやってくる。
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