第29話 みかんの缶詰
果物の缶詰というと、入院している人へのお見舞いだとか、パーティーメニューで何かを大量に作るときだとか、備蓄だとか、普段の生活であまり登場するものではないのだが、それゆえのレアリティというか、珍しさがあったりするというのは、なんとなく判って頂けるのではないか・・・と思ってやまない。
おれは果物全般好きだが、フレッシュ・加工品問わず、特にこの「みかんの缶詰」が好きで、なにもない日でも、缶入りみかんをボウルに開けてそのままスプーンで食べるというのをやったりする。他の果物ではあまりないのだが、みかんは「一度に大量に食べたい」という気持ちにたまになったりする・・・というのが、理由のひとつである。
シロップ漬けした缶入り果物はみかんの他にもパイナップル、白桃、黄桃、洋梨、さくらんぼなどあるが、個人的に一番馴染みがあるのは、やはりみかんだ。幼少の頃など、風邪をひいて食欲がない時に、手軽な栄養補給手段として、丸のみかんとともによく食べた記憶がある。
みかんの缶詰は、薄皮がすっかり取り除かれて、あとはおいしく果肉を食べるだけの状態になった「むき身」がギュウギュウに入っており、これがもう、そもそも非日常じみている。通常、外皮をむいて食べるぶんには薄皮までは剥がないことが多いが、缶入りのそれは最初から剥がれているので、食べやすさや味も全く異なってくる。
薄皮がついているのもまあうまいことはうまいが、ついていない方がダイレクトに果肉を味わうことができてうまいし、何より機能的である。そういう意味では、おれは缶入りのみかんのほうが、フレッシュなみかんよりも好きだったりする。シロップが甘いから嫌いだという意見もなくはないが、白桃などと比べると果肉に酸味があるぶん、そこまでシロップの甘さも気にならないような気がする。
品物は変わるが「ガツン、とみかん」という、みかんのアイスキャンディーにみかん果肉が入ったやつがあるが、あれも非日常感が高くてなかなかうまい。みかんに薄皮がついてないと嫌だという言説も聞いたことがないし、みかん好きなおれの息子(3さい)もまれに薄皮を残したりするので、おそらくみかんをもっともダイナミックに味わえるのは、薄皮なしの果肉だけ、いわゆる「むき身」の状態なんだろうと思う。
おれの缶詰みかんアレンジレシピ(この表現あんまり好きではない)を以下に記す。
<材料>
缶詰みかん(大140g)・・・1缶
炭酸水・・・500ml
レモン果汁・・・少々
<作り方>
1 材料をシロップごと全部混ぜ、お好みでレモン汁も混ぜる。
2 飲んだり食べたりする。
レシピにはもともと名前がないのだが、ここに掲載するにあたり「缶みかんの炭酸割り」と名付けた。材料とボウルさえあれば誰でもできるし、確実にうまいので、パーティーメニューなどでも重宝する。乱暴に言えばフルーツポンチのみかん超特化版、といった趣だ。いろんな柑橘系のエッセンスを加えてもうまいし、大人向けであればレモンの代わりにライムなどでも良い感じになる。どうだろうか。
ちなみに、みかんの薄皮は重曹と一緒に煮込むと剥がれやすくなるらしく、いちど試したことはあるのだが、作っている最中からもう「むき身」を食べたくてしょうがなくなってしまったので、おれのようなせっかち野郎にはやはり缶みかんがピッタリなようである。
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