第14話 「草原物語」の思い出

 今はもう販売していないのだが、かつてサントリーから「ほぼ牛乳に近い味の乳飲料」が売られていた。「草原物語」という名前で、サイズは短めの缶コーヒーと同じくらい、白地に牧場とウシのイラストがあしらわれており「ミルク」「乳飲料」という表記がドドンと目立つパッケージをしていた。


 味はキッチリと冷やして飲むとほぼ「牛乳」に近い。原材料などいろんな都合で牛乳ではなく「乳製品」となっているが、ほぼ「牛乳」と言っても差し支えのない味で、特に牛乳にこだわりがない人が飲んだら「おっ、缶入りの牛乳なんてあるんだ!」と思ってしまうかもしれない、そういう味であった。ちなみにキッチリ冷やさないとあんまりおいしくないのはご愛嬌。


 缶入りなので、たまにだが自動販売機でも見かけることがあった。おれが記憶している限りでは2013年ぐらいまでは存在していたはずで、通販の購入履歴にも2013年という日時の記載がある。


 自動販売機は、青字にボスのオッサンロゴがあしらわれたサントリーの自販機のほか、昔の旅館などに置いてある3~4本しか商品が入らない細型の自販機なんかによく入っていたのを記憶している。都内でも2007年ぐらいまではカプセルホテルや銭湯などで見かける機会があった。


 その「草原物語」をもうちょっと掘り下げてみよう。パッケージ裏面には、以下のように記載されている。


 種類別名称:乳飲料

 無脂乳固形分:8.3% 乳脂肪分:3.5%

 原材料名:生乳(50%以上)、乳化剤、クエン酸鉄ナトリウム、ビタミンE、ビタミンD

 製造者:北海道日高乳業株式会社

 販売者:サントリーフーズ株式会社


 冷やすことは可能だが、コールド専用で、ホットでの販売はできませんとの注意書きがある。恐らくだが温めると缶の内部で牛乳が膨張してしまうからではなかろうか。やったことはないが、どうしてもホットで飲みたい場合は一度缶からカップへ注いでレンチン等すればよい。保存は常温でも可能なのが素晴らしい。


 無脂乳固形分と乳脂肪分は、ふつうの紙パックの牛乳と比較してみるとわかるが、あまり大差がない。つまり味はほぼ牛乳と言って良いくらい、牛乳のそれに肉薄している。普段から牛乳にこだわりがある人には向かないが、それでも常温保存できる「牛乳っぽい」飲料としては、高い価値のある商品だった。


 具体的な味としては、普通の牛乳よりも若干の「甘さ」が感じられる。もともと良い生乳を使っているので、さもありなんといったところだろうか。たまに乳脂肪分が固まっているような部分があるが、これはよく振れば問題なかったりする。


 そんなこんなで、缶飲料としての「牛乳に近い味の乳飲料」はこの「草原物語」以外にもいくつか別なメーカで出していたりもしたが、結局現時点で販売しているものは無いらしい。ただ上位互換として、缶ではなく、紙パックの常温保存可能な牛乳のひとつとして、タカナシミルクの「北海道3.6牛乳ロングライフ」というラインナップがあり、こちらは生乳100%の正真正銘の牛乳である。


 添加物を一切加えずに常温保存を実現しており、無脂乳固形分:8.5%以上、乳脂肪分:3.6%以上と正真正銘の牛乳となっている。実はこちら「草原物語」と同じく「北海道日高乳業株式会社」の製造だったりする。常温保存可能な牛乳自体は他のメーカでもいくつかあるが、味的に一番近いのはこれと言っていいかもしれない。


 ふだん牛乳はあまり飲まないおれだが、この「草原物語」はなんとなく好きで、個人的に買って飲んだりしていた思い出がある。キンキンに冷えたやつを風呂上がりに飲むというルーティンが最高だった。また飲めれば飲みたいが、作っていない以上難しいだろう。ビール並みに冷えた缶牛乳を敢えて味わいながら飲む、このレアリティ高めな感じが良かったのだが。

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