第63話

「今、長期休暇中でな。明けたら転入出来るように手配しよう」


「ありがとうございます。楽しみです。何か必要なものがありますか?」


転入となれば、制服、教科書、かばん、靴、は最低限。体育とかあるかな?あれば運動着とかもいるかな?国元に連絡すれば送ってくれるよね?


「必要なもの?」


陛下が不思議そうな顔をする




「転入するなら制服やかばん、靴なんかは必要ですよね?教科書とかも…」


確認するように尋ねると宰相が口を開く。


「必要な物はこちらで用意しますよ?」


「そんな… 自分で使うものです。こちらで用意します。国元に連絡すれば送ってもらえると思うので…」


「姫…」


陛下が何かを言いたそうにしている。私はそれが何かわからない。


「陛下?」


小首を傾け陛下を見る。陛下から話してもらはないと分からない




「姫。いつもそのような服を?」


「あ、これですか?申し訳ありません。見苦しくて…」


急かされて来たので何時もの普段着だ。




「いや、そうではないのだが…少し小さいようだが…」 


「成長期なのでしょうか?私は窮屈ではないのですが…新しいものを送ってもらった方が良さそうですね。夏向けの物を頼んでおきます。」


「国元にお願いするのか?」


「ええ?他にお願いするところもないので…」


何だろう?陛下と宰相の様子がおかしい…変な空気…


私、おかしなことを言ってないよね?




「こちらに来てから服はいつも送ってもらってたのかな?」


「お恥ずかしい話ですが、私はあまり背が伸びなくて、服やドレスを買い足す必要がありませんでした。使わないものを送ってもらうわけにもいかないので、特に追加はせずにすんでいます。」


「そうか… 不自由をさせていたようだ、気が付かなくて済まなかった、姫。」


「陛下、そんな事を仰らないでくださいませ、不自由な事は何もありませんわ。離れを一つ頂いて自由にさせて頂いてますし、侍女たちもいるので身の回りも特に困った事はありませんでした。」


「そうか…」


陛下は私に穏やかな表情を見せてくれる。




そして侍女長を見て態度が180度変わってしまった。


侍女長がいた事を忘れていた私はその変貌に驚いて息を呑む。


何なの、この変化、やっぱり何かあったの?




「さて、言いたいことがあるなら聞こうか?」


「陛下…」


「姫の品格維持費を使い込んだのはそなたか?」




品格維持費?あったの?


管理番の言っていたことは正しかったんだ…


王宮に務めていると視点が違うのね…管理番信じなくてごめんなさい…


でも陛下、9歳の子供の前で断罪は良くないと思います… 言えないけど…




つらつらと考えていると侍女長は唇を噛み締め、礼をとったままだ。




あの姿勢をキープできるなんて…


罪の内容はともかく淑女教育がバッチリなのは間違いないらしい。陛下はどうする気だろう?


て、いうか一人じゃ無理だよね?金庫番の協力がないと横領なんてできないと思うけど。




こう見ていると、学校はこの話の前ふりかぁ〜、買い物や洋服の事を


聞いて反応を見たわけね。それで買ってもらう気がないから、『横領確定』という事か…


できたら事前に教えていて欲しかったなぁ〜

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