第60話
「どういうことだ?」
私は目の前にいる管理番を問い詰めたかった
横には陛下が座っている。その前で醜態を晒すわけにはいかないので堪える。
しかし、陛下はそうではなかったようだ。押しころした声だが、思ってもいなかったことを言われて感情が隠しきれないようだ。
陛下からのお言葉に管理番は震えている。おそらく恐怖を感じているのだろう。無理もない。
ここは私が間に入るしかないようだ。
「管理番。姫様がお金がない。学校に通えない、外に出れない。そうおっしゃったのですね?」
「はい。間違いございません。私から申し上げたのです。品格維持費があるのでは?それで少しは融通がきくのではないかと、しかし、もらってないとおっしゃってました。あるとは聞いたことがないと… 事実なのでしょうか?」
管理番は失礼を承知で聞いたのだろう。姫様のことをよほど心配しているようだ。
陛下を横目で見ると無表情になっている。この顔を管理番が見ずに済んで良かった。見たら恐怖で喋れなくなるだろう。
しかしおかしな話しだ。陛下も同じ思いだろう。
「陛下? いかがなさいます?」
「とりあえず、金庫番と侍女長を呼べ。管理番、そなたはカーテンの後ろに控えておくように」
それだけを言うとムッツリと黙ってしまわれた。
「お召しによりうががいました。陛下」
「良く来た金庫番。そなたに聞きたい事がある。」
金庫番はより一層頭を下げることで返事としていた。
「離れの姫の事だ。」
「はい。何なりと」
「姫の品格維持費はどうなっている?」
「品格維持費ですか?定期的に使用されていますが?何か?」
「何に使われている?」
「主に衣装と宝飾品だったかと…帳簿を確認しないとはっきりしませんが…」
「申請は誰からだ?」
「?離れの侍女の方が申請書を持って来られます。」
「そうか、使用されているのは間違いないのだな?」
「はい」
「わかった。その場に控えておれ」
「はっ」
金庫番は横に動き控えている。
そうしている間に侍女長が呼ばれる。
「お呼びでしょうか?陛下」
「よく来た。姫の事で聞きたいことがある」
侍女長は静かにスカートの裾をつまみ礼をする。優雅な礼だ。
「姫は健やかかな?」
「はい。キッチンが、できてからご自分で料理をなさり楽しそうに過ごされています」
「そうか…で、姫は宝飾品や衣装を好むようだが、どのようなものを買っているんだ?」
「ご自身に相応しいものをお使いです。」
「誰が選んでいる?」
「…」
「そなたか?」
「いえ…」
侍女長からの返事がなかなかない。さっさと言ってしまえば良いのに…
イライラする。
そうしている間に宰相が付け加える。
「姫様が買ったものを持ってきてください。ありますよね?姫様が買われたものなのですから…」
侍女長が返事をしない。
「なぜ答えない?私を軽んじているのか?」
私は足を組む。普段は高圧的に見えるから足を組むようなことはしないが今日は例外になるようだ。
「誰ぞに持ってこさせろ。その際には姫も連れてくるように」
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