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晃と別れたその日のうちに、桔花は行動に移した。まずは、繁夏が戻ってくるまでに、自分が知っている情報を整理する。これによって、新たな謎が浮かんでくるかもしれないし、呪いを解く鍵が見つかるかもしれない。『かも』ばかりなのが辛いところだが、ここが踏ん張りどきだ。桔花は自分を奮い立たせた。
最初に始めたのは、担任である蘭子に聞いた話をまとめることだった。彼女が教えてくれたものがメジャーで、1番手が加えられていない気がしたからだ。しかし、何分、入学式の時にしてもらった話だ。記憶が曖昧で、詳しくは思い出せない。もう一度聞きに行ったとて、あの頃とまるっきり同じには語ってもらえないだろう。仕方がない。確実に覚えている部分だけを書き出してみよう。
近くに置いてあったノートの山に手を伸ばす。空白のページが多いのは、ダントツで地理だ。プリント学習が多く、滅多に使わないから。回収するようなこともないし、メモくらい、いいだろう。それに、担当の
地理のノートの後ろを開き、思いついた言葉や文章をつらつらと書いていく。
〈蘭ちゃん先生の話〉
・関わってはいけない女は、
この学園に通っていた女子生徒の霊
・関わらなければ害は無い
・存在そのものを無視する
鮮明に覚えていたのは、この3つだけ。
当時は疑問にも思わなかったことに、今の桔花なら気づけるかもしれない。他の話と比べて、明らかにおかしな点、矛盾点を探すんだ。元から派生したもの、尾びれのついたものも、大事な情報。見聞きした全てと照らし合わせていく方針で進めることした。
次ページには、自分が実際にあの女を目にした時のことを書いた。
〈私が見た、関わってはいけない女〉
・顔が見えないほどに長い髪。ボサボサ。
・
手が止まる。それしか印象にない。見えていたのは髪の毛だけだったし。混乱していて、制服まで確認する気力が無かった。でも、知里の対応はただの客に対するものじゃなかった。関わらなきゃいいだけ、とかなんとか言っていた覚えがある。だけど、あれが本当に関わってはいけない女だったのか、決定的な証拠はない。別の人間の変装だったかもしれない。せめて、制服さえ見ていれば。古い形のものならば、関わってはいけない女だと断言できたのに。
……今更だ。
桔花は次の重要証言をまとめるべく、ノートをめくった。
〈晃の話〉
・関わってはいけない女は生きている
これについては、未だに半信半疑だった。晃には悪いが、生きている人間説が通ってはまずい。蘭子の語っていたことと矛盾するからだ。
女子生徒の霊だからこそ、安心できていた部分もあったし、事実だとしたら学園の信頼が地に落ちる。大抵の人間は、霊やら呪いやらを軽んじる傾向にある。怖い怖いと言いながらも、まあ、そんなものは嘘でしょうと、どこか冷めた目で見ているのだ。
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